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執着心が鬱陶しい

ぼくは1つ思いつくと、それ以外のことが手につかなくなる。
脳の大半がそれに持っていかれて、現実が地球の真裏にあるみたいになる。
いまもその途中なんだけど、文字を書いてみる。
ふわっとしている現実の形状を、どんな風に表現するのか、少し気になるから。
科学者がよく言う検証に似ているだろう。

音が離れている。
何千里、何万里と訳のわからない単位で表せるくらいの、とおくのノイズ。
それから、体の方は指先にしか力が入らない。
口に入れた食べ物も、噛み砕いた後には忘れている。
歩いていても、歩いている実感がない。
宇宙を闊歩しているような、淡くて薄い体験。

意識が戻るためにはさ、それを実行しなくてはならないんだ。
手が届きそうで、今すぐには出来ない。
だから、こんなふうに体がむず痒くなる。

もしかしたら、こんなふうに文字をつむぎ続けていれば、忘れることは出来るのかもしれない。
海から水を吸い上げて、また大地に雨を降らせる、無計画で無駄なアクションをまだ試したことはないから分からない。
滝ができたり、嵐を起こしたり、上手い具合に噛み合わないこともあるだろうから、難しいね。


意識が戻ったぼくは、この記号の羅列を見て、どう思うんだろうか。
記憶の欠片を、周辺からかき集めることを始めるのかな。
それとも、欠片ごと捨て去って、思考の渦に閉じ込めてしまうのかな。
どういう意味でも、ここに書いたことは、未来に価値を持つ代物となる。
隣の人のぼそぼそという独り言を、解読して、数年後に返してみたら、面白いことが起きそうでしょ。

心当たりのない文字が、僕のものだってわかる瞬間に、自分が過去に存在したことを実感する。

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