大きくきれいな花を咲かすことだけが人生のよろこびではありません
開くかどうかも分からない
硬く小さなつぼみが
花瓶に残ってしまった
毎日丁寧に水を替える
毎日
花瓶を洗い
茎のヌメリをとり
先端を少し切る
何日たっても
硬いつぼみはびくともしない
それでも毎日
水を替え
花瓶を洗い
茎のヌメリをとり
先端を少し切る
もう
捨ててしまおうかと
思う時もあった
花は咲きそうもないから
そんなつぼみに
毎日時間を使うのは
ムダだから
でもまだ
青々とした葉っぱが
生命力を感じさせる
捨てられずに
また
同じことを繰り返す
半分あきらめながら
今日
つぼみの色が
ふんわりと
白みを帯びていた
少しだけ
つぼみがふくらんだ
私はひとりで笑顔になった
そんな些細なことで
心が躍った
長く丁寧に向き合ってきたことは
私の大切なものになっていく
それがたとえ
捨ててしまおうと
思ったものでも
あきらめながらだったとしても
関係ない
つぼみの変化を
誰にも気付かれなくても
最後に
大きくきれいな花が咲かなかったとしても
そんなことは
どうでもいい
毎日
水を替え
花瓶を洗い
茎のヌメリをとり
先端を切ってきた
私にとっては
そんなことは
どうでもいいこと
硬かったつぼみが
すこし色づいただけで
じゅうぶんだった
じゅうぶん
誇らしかった
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