手
繋ぎたかった。
手を繋ぎたいけど、言えなかった。
水族館に行った時、夜桜を見に行った時、
何度も何度も言おうと思ったけど、
どうしても言えなかった。
名前のない、都合の良い関係は
手を繋ぐというのが1番難しい。
手を繋ぐのは大切にしたいから。
手を繋ぎたいと言えなかった私は
きっと心のどこかで一方通行に気づいてたのだろう。
身体は近くにいるのに、心は遠い。
いつか手を繋げると思ってた淡い期待は
ある日を境に散ってしまった。
守ってきたものは何だったのだろう。
どうせ壊れる関係なら、
手を繋ごうって言えば良かった。
今更言ってもしょうがない。
想っても仕方ない人を想っても仕方ない。
仕方ないのは分かってるのに
なんで想い出してしまうんだろう。
あの人を記憶している脳みその一部が
無くなれば良いのに。
早く安眠したい。
切なさで眠れないのは秋のせいにしよう。