総合的なコミュニケーション力
「あなたは、コミュニケーション能力に自信がありますか」と聞かれたら、どう答えますか。「はい、ばっちりです」でしょうか。「いいえ、どちらかといえば苦手で・・・」でしょうか。
大学での講義で学生たちにこの質問を投げかけると大半は後者の「苦手」で、前者の「ばっちりです」は少数です。そこで学生たちに更に質問します。「『ばっちり』の人、何が、ばっちりなのですか?『苦手』の人、何が、苦手なのですか?ちょっと周りの人と話し合ってみてください。」そうすると、喧々囂々、侃侃諤諤、ワイワイガヤガヤ話し始めます。結果、まとまるのは、圧倒的に「話すのが得意」「話すのが苦手」ということになります。「初めての人とは、なかなか話せない」とか「言葉がうまく出てこない」という意見もあります。コミュニケーション能力を話す能力ととらえている人が多いのです。
さて、少し視点を変えてみます。日本経済団体連合会が毎年発表している「新卒採用に関するアンケート」で「選考の際に重視する項目」のトップは16年連続「コミュニケーション能力」です。82.4%の企業が、選考で重視する項目として挙げています。16年もトップ項目なので、就職活動の際には、学生も、サポートする大学もコミュニケーションスキルのアピールが必要だと捉えています。とても重要なことだと思いますが、問題は何をアピールするかです。冒頭の学生のディスカッションからすると「話し上手」をアピールしそうですが、果たしてそれだけでいいのでしょうか。
「コミュニケーション能力」をもっと広く考えてみましょう。「話し上手」というのは、発信スキルに長けているということですが、それだけでは、コミュニケーションは成り立ちません。受信するスキルも円滑なコミュニケーションの必須事項です。「聴き上手」も大切なコミュニケーションスキルということです。また、この人とは話したくないなあと感じさせる人がいます。反対にこの人の話はぜひ聞きたいと思わせる人がいます。そうなると言葉を交わす以前の段階でもコミュニケーションを成立させるポイントがあることになります。この人とはコミュニケーションをとりたいと思わせる「雰囲気」も重要なコミュニケーションスキルだと言えます。「発信」に加え、「受信」と「雰囲気」もコミュニケーションスキルの縦横なキーワードとして挙げられるということです。
学生のインターンシップを受け入れる企業が、近年増加傾向にあります。あるアンケートでは、インターンシップの実施目的として「採用を意識している」という企業が40%を超えています。また、内定者のうち自社のインターンシップを受けたものの比率は75%だという数字もあります。インターンシップは、ワンデイだったり、数日だったり、もっと長期の場合もあります。インターンシップを採用の一手段として考えている企業は、採用時の面接という瞬間の出会いの中でどうコミュニケーションをとるかに加え、ある程度の期間の中で発揮される「話す」「聴く」「雰囲気」という総合的なコミュニケーションスキルも重視しているのだと思います。
総合的なコミュニケーションスキルをより具体的に考えるとどうなるのか、どうすれば身につけられるのかについては、改めて発信します。
では、また!