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オムライス

オムライスは大好きだ。

しかし、何年か前まではそれほどではなかった。たまに行っていた喫茶店で、大好物のエビフライランチがなかった時にオムライスを頼んでいたくらい。
子どもの頃に、頻繁にオムライスが食卓にあがらなかったのもあると思う。

しかし、以前お付き合いしていた人が作ってくれた時から、意識するようになった。普通のオムライスだったが、連れ子さんと三人で食べた効果もあるのだろう、すごく美味しかった。
それ以来、
「姐御、オムライスおねげえします」
と懇願するようになった。

しかし、トロトロ、フワフワオムライスは好きではない。作ってもらっても、お店でも、美味しいものに一度も当たったことがない。
見た目はすごく良いのだが、まるで、なにかを濁しているような、ごまかしているようなイメージの味だ。

そんな私はハンバーガーも大好きだ。

屋烏之愛という四字熟語がある。
相手を愛しすぎて、その人の家にとまるカラスまでも愛しい、という意味。
その逆のことが起こり、憎すぎて、その人が好きな酒も嫌いで、住んでいる地元も嫌いで、酒好きばっかりの地元も嫌いになった。
地元にいたくなくなった。

そんな私は、久しぶりの出張がとても心地よかったことで、社長に許可をもらって、自分で行きたい県の仕事探してきて、出張という名のグルメ旅行に出かけるようになった。

そして出掛けた茨城のつくば。
ここでたまたま見つけた店の、タワーハンバーガーに興味を持ち、食べてみた。それまではマックかモスしか食べなかったし、それほど好きというわけではなかった。

値段は2000円前後。
「ハンバーガーに2000円。。。」
と二の足を踏んだが、意を決して注文。
食べてみると、払う価値がある、と思った。大満足。
これがハンバーガー沼の始まりであった。

この次に行った、調べて、美味しいハンバーガーがここにある、と白羽の矢を立てた店が、私の中では日本一のハンバーガーを食べられる店、
『特製飯屋 Highway』
である。外国人のお客さんも多いので、英語の勉強も視野に入れていた。

店主はクォーターで、スコットランドでシェフもしてた日本人。

美味しいものの語彙力に乏しいので、表現はしません。
見た目は普通サイズのハンバーガー。ハンバーガーをひとくち食べた時、私の人生の方向が少し変わったと言っても過言ではない。普段のハンバーガーは、パティの集まりであって、個別に味がわかる。それを美味しいと思っていた。
しかしこれは、『ハンバーガー』という名の、ちゃんと一つの食べ物だった。個別に味を感じなかった。全部が一つだった。たとえるなら、洋食の生命線、ソースだろうか。色々な材料を使って、一つの味になる。

ハンバーガーだけでなく、ポテトも絶品。こんなポテトは食べたことがない。とてもジャンクフードとは言えない、上品な味。
そして、ここのガーリックライスも日本一好きだ。
ハンバーガーセット、コーラ、ガーリックライスが私の定番。

以降、すっかりハマってしまい、100km位の距離なら苦も無く毎週末食べに行っていた。
コーラなんて、一年に一回飲むかどうかだったが、毎週飲むようになってしまった。ハンバーガーセットにはコーラが一番合う。

この店で、本を読みながらハンバーガーを食べる。
食べ終わったら、メニューをまた見て、しかし決まった通りにガーリックライスを注文する。
待ちながら本を読む。
それを食べながら、また本を読む。

一週間で一番幸せな時間でした。
つくばに住もうかと考えていました。地元にしがらみがなければ、今からでも引っ越すだろう。

通い出して一年後。
私はこの店でいつものように読書をしながらハンバーガーを食べていた。
すると、マスターとバイトさんの声が耳に入る。

「まかないはオムライスで良い?」

とのこと。この店のメニューにオムライスはない。
私は心の中で思いっきり二人の方を振り向きましたが、
「いやいや、たかがオムライス。それに、マスターの料理は一流だけど、このオシャレぶりなら、フワトロオムライスだろ?興味はないね」
と思いながらも、料理の様子を横目でチラチラ。

バイトさんが私の隣に座り、マスターがまかないを持ってくる。
チラリと見ると、フワトロではない?でも、クラシックでもない?
近くで見たい。気になる。。。

しかし、たかがオムライスである。
今までのお店で、これは、と唸るようなオムライスは食べたことがない。この時の私にとって、オムライスとは、いわば食べる環境が最高のスパイスなのだ。

ガーリックライスの牙城を崩すか否か。今の現場は遠いから、週一しか来れない。どうするどうする。。。
まるでタイムリミットを定められたかのように、フル回転で頭をはたらかせ、私は口を開いた。

「マスター、僕もそれと同じものを」

実際、こんな上品な言い方はしていない。
「美味しくなかったらどうしよう」と疑心暗鬼になりながらも注文してしまった。
「たかがオムライスだ。他の店と変わりはないだろう。」
こう思っていた。
マスターは快諾してくれた。

料理している後姿を肴に本を読む。
数分が過ぎ、マスターがこちらに向かってくる。目の前に置かれた。。。

チラ見したものは間違いではなかった。
表面はフワトロ、たぶん裏はクラシック。「そうきたか」と思った。

感触を確かめるようにスプーンを入れ、すくい、口に入れる。

「初めてお店で絶品のオムライスにあたった。」

と思った。

味わうと、卵の中にチーズが入っているのがわかる。このチーズが良いはたらきをしている。
大満足である。
マスターすげえ。

その後、1か月経たずに関東を引き払うことになり、一ヶ月くらいは、週に3回くらい行っていた。そのたびにコーラを飲むので、地元に帰った時は歯が少し痛かった。

地元に帰ったらHighwayロスになり、考えに考えた末に結論を出した。

「オムライスを作る!」

なぜオムライスか。簡単だ。それが一番再現できそうだったから。
ハンバーガーは無理やろ。
それまで、オムライスは人生で10回も作ったことがなかった。
しかし、作り始めると昼のお弁当、夜ご飯、ほぼオムライスになった。
練習しはじめると一色になる。

学生の時に好きだったキムチチャーハンも、再現しようとして、お昼弁当はずっとキムチチャーハンだった。
結局これは、料理工程の順番間違いで成功した。

3月ころに始まったオムライス練習は、9月現在、しっかりと再現できるようになった。と、思っている。
ただし、たまご部分だけ。チキンライスはいつも手抜き。チャーハンにしてみたり、ケチャップを焼き肉のたれにしてみたり、楽しんでいる。

ちなみに、作り方(たまご部分のみ)
●フライパンの底の直径が20㎝くらいの場合の作り方
材料:たまご3個、チーズ
1、フライパンにバター
2、超弱火で、バターを溶かす。
3、といた卵3個をフライパンに入れ、その上にチーズを投入
4、超弱火のまま、蓋をして数分。
5、表面が半熟になったら完成。
たまごが3個なのは、筋トレを意識してだが、フライパンにある程度の厚さで広がらないと、半熟の中にチーズがトロリ、とはならないから。

弁当にケチャップを持っていく場合は、お椀にサランラップを2枚張って、真ん中にケチャップを出して、サランラップを絞って、ゴムでしばる。テルテル坊主の逆みたいな形。
使うときに爪楊枝でケチャップ部分に穴をあけ、絞り出せます。

ちなみに現在は熊本にいて、ここでも美味しいものを謳歌している。
熊本は、美味しいお店が多すぎる。


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