オリンピック日本代表=東大理三、という説
パリ五輪は結構なメダルラッシュに湧いており、東京大会に続いて活躍が期待できそうだ。トップオブトップのアスリートの活躍が見られるのは大変貴重な機会である。筆者はアスリートのような人々を尊敬しており、彼らの頑張りを見ると自分ももっとしっかりしなければと反省するばかりである。
さて、このオリンピックの日本代表であるが、どの程度難しいのだろうか。今回はオリンピックの日本代表を学歴で例えるとどの程度の難易度なのかを考えてみたい。
東大理三並み?
パリ五輪の日本代表の人数は409人とのことだ。北京五輪は121人である。人数は若干増えているが、だいたい毎年こんなものである。この数字を4で割るとだいたい1数十人ということになる。ただし、実際は複数大会の重複なども多いため、毎年100人という評価で問題ないだろう。丁度一年間に輩出される五輪代表の人数は東大理三と同じくらいということになる。
筆者が作成した学歴ランク表によると、東大理三に合格するには日本人の同学年の中で0.03%に入る必要がある。 レベル3は日本人の中の上位30%、レベル2は上位10%であり、レベルが2上がる事に頻度は10倍少なくなるものとする。
レベル7 東大理三
レベル6 阪大医
レベル5 東大
レベル4 一橋 東工大
レベル3 早慶旧帝
レベル2 MARCH
レベル1 日東駒専
レベル0 Fラン大 高卒など
ただし、この推定には重大な問題がある。それは母集団である。日本人のうち、勉強に力をいれる人の割合とスポーツの力をいれる人の割合がどうなっているのかはなんとも言えない。仮に両者に差があったとしても、上位層の母集団の質には差がないという可能性がある。
なお、東大理三の場合は学力上位層がみんな医学部志望ではないため、上位0.01%ではなく、0.03%という評価としている。スポーツの場合も野球や空手などオリンピックとは縁遠い種目に打ち込む人もいるだろうし、プロスポーツの場合は全く勝手が違う。五輪代表に全身全霊を掛けて打ち込むのはアマチュアスポーツであることが多い。となると、上位層の分散度は東大理三とは同列と言えるのではないかと考えている。
体操の場合
趣向を変えて個別競技の難易度を考えてみよう。例えば体操はどうだろうか。筆者の調べたところ、男子高校生のうち体操協会に登録されている選手は1500人である。一学年で体操日本代表となれるのは大体1人だから、500人に1人という計算になるだろう。東大理三の3000人に1人という割合よりは下がるようにも見える。
ただし、東大理三が全ての高校生を含むのに対し、体操の場合はそれなりに高校になっても体操を続けているような人間が母集団である。となると、両者の母集団の質は異なるだろう。もし日本代表=東大理三という説が実証された場合、高校体操選手の母集団の質は標準的な日本人の6倍程度高いという計算になるだろう。小学生全員に体操競技をやらせて上位17%に入る能力の持ち主だけが母集団となり得るわけである。
母集団の質を推計するのは非常に難しく、ほぼほぼ不可能だ。平均的な日本人の6倍のレベルの母集団というと、受験産業で考えると河合全統模試くらいではないかと思われる。体操の競技人口と河合全統模試のどちらがレベルが高いのかは全くわからない。
レベル判定の難しさ
色々考えたが、オリンピック日本代表の難易度は算出が難しい。種目によって大きく難易度が異なる上に、母集団のレベルが全くわからないからだ。
だが、ぼんやりと推計する方法はある。高校生一学年のうち、共通テストを受験する割合は45%という。高校生のうち、運動部に入っている割合は38%とのデータが有る。となると、雑な推計ではあるが、高校生のうち勉強を真面目にやっている割合とスポーツを真面目にやっている割合は同じくらいかもしれないという考察が成り立つ。部活人口の母集団の質はレベル1(Fラン以外の大卒)くらいと言えるのではないか。
となると、オリンピックの日本代表になる難易度と東大理三に入る難易度は結構近いのではないか?という仮説は十分に信頼性があるだろう。オリンピック各種目を平均すると、意外にいい勝負なのではないかと思っている。
メジャースポーツもおそらく似たようなものだ。筆者の推計によると、高校野球部のうちプロ入りできるのは上位0.1%強(レベル6)だが、野球部の母集団のレベルが1ランク高いと考えると、実際はレベル7ではないかと思われる。これまたプロ野球選手の難易度は東大理三と同じか、やや低いくらいである。野球の競技人口は非常に多いので、野球のプロ入りの難易度は標準的なアマチュアスポーツで日本代表になる難易度に近いのではないかと思われる。
「何者か」になる
さて、最近の若者は「何者か」になりたいという。プロ野球選手や五輪日本代表になれば「何者か」になれるかというと、若者の基準では鳴っていると思う。本人の気持ちはまた別だろうが、一般ピープルからするとやはり「何者か」であろう。
スポーツで基準を取ると、上位0.03%すなわち東大理三級の希少度であればスポーツ選手として食っていけるレベルになるという計算である。アマチュアスポーツで考えると、日本代表レベルであれば流石に専業でスポーツに取り組んでも問題ないだろう。上位0.1%の場合は代表候補レベルとして苦しい戦いになるが、実業団に参加したり、競技関係者として生きる道はあるだろう。おそらく、「スポーツ選手」として自らを定義できる割合が上位0.1%、レベル6という水準なのである。
筆者の見解ではあるが、スポーツ選手など特殊な業界で食っていくために必要な希少度がレベル6なのではないかと思う。以前の記事で考察した、専業ブロガーとして生計を立てる難易度と同じくらいだ。きちんと推計した訳では無いが、歌手やピアニストとして生きていけるレベルも同じくらいではないかと思われる。どの分野であっても日本人の上位0.1%に入ればその進路で(なんとか)人生を送ることが可能になるだろう。
「何者か」としてギリギリ食っていく難易度が上位0.1%のレベル6、それなりの「すごい人」として認知されるのが上位0.03%のレベル7である。レベル7まで行ってしまうと日本代表クラスになるから、競技者の中での尊敬は絶大だし、落ちぶれたとしてもメディアが騒いでくれるレベルになるだろう。エリサラに対して劣等感を感じることはまず無いはずだ。レベル7は明確に勝ち組だろう。
レベル5東大卒の劣等
さて、東大に入る難易度は上位0.3%のレベル5であった。「何者か」になるのに必要なのはレベル6であるから、東大に入っても更に一ランク上げなければ特殊な人生を送ることはできないということになる。きちんと推計した訳では無いが、東大卒のうち、研究者など社会的に東大卒に期待されるような分野で食っていける人はレベル6の世界の住民なのではないかと思う。実際は受験学力と研究者としての能力はズレているから、入れ替わりは多数発生するだろう。入れ替わり率を30%とすると、東大卒のうち能力的に研究者として生きていけるのは10%ほどという計算になる。実際に研究者になる人はここまで多くないが、優秀でも官僚等になるものもいるだろうから、あまり違和感はない。
東大生のうち、東大卒が就くと思われているような研究者などに進めるのは30%の優秀層である。残りのレベル5の東大生は野球で例えると甲子園出場はできたが、野球関係で就職するには能力が足りないといったレベルである。他のスポーツで例えると、スポーツの強豪校には進めるが、五輪の代表争いをするにはちょっと足りないくらいだ。大学スポーツでエースになるくらいの水準かもしれない。
さて、この水準の競技者の進路がどうなるかというと、基本は体育会系として一般企業に就職するのが花形だと思う。と、考えると、普通の東大卒がサラリーマンとして就職していくのも結構納得である。東大卒の社会的希少度は、ラガーマンとして学生大会で第一線にいた社員と同じくらいということだ。
東大卒は絶妙に上の見える中途半端なポジションという意見があるが、これは結構妥当である。「何者か」になっていく天才を見ながら、一歩及ばない優秀な一般人としてサラリーマンの社会に進むことになるからだ。ただし、少し上のレベル6は結構大変であり、大企業に進んだ同級生と同じくらいの生活水準を保つのはレベル7くらいは必要である。したがってレベル5は劣等感を感じながらも、すぐ上のレベル6の姿をみて「自分には無理だ」と納得するだけの余裕はある。要するに、レベル5とは凡人代表なのである。
一番悲惨なのは自分をレベル6や7と勘違いしたレベル5である。このゾーンの人間は新卒で大企業に就職するべきなのだが、実力を見誤ってしまうと新卒を逃してワーキングプアになってしまう。こうして悲惨な目に遭った東大卒は枚挙に暇がない。東大生はもし自分が中間層にいると感じたら、「すごい人もいるんだなあ」と感銘を受けつつ、迷わず新卒のうちに一流企業に入る努力をすべきである。
なお、レベル6の方が精神的には辛いかもしれない。「何者か」の道を進めばレベル7に劣等感を感じるし、収入面では一流企業に進んだレベル5に大きく劣ることになる。リスクを取らずに一般企業に進むこともできるが、この場合かなりの後悔があるだろう。どの階層にも苦難はあるのである。
難易度を査定する
以上を考えると、こんな感じになるかもしれない。
レベル9 園遊会に出席できるゾーン(メダリストなど)
レベル8
レベル7 社会的威厳のある地位に就けるゾーン
レベル6 趣味的分野で食っていけるゾーン
レベル5 東大枠・スポーツ枠で新卒で一流企業に進んだほうが良いゾーン
レベル4 (医者・弁護士)
レベル3 (大手企業)
レベル2
レベル1 勉強・スポーツ・その他の趣味などの母集団
レベル0 特に打ち込んでいない人たち
こう見ると、医者弁護士は「何者か」になるにしてもかなり難易度が低いのではないかと思われる。学力上位1%に入るだけで社会的威厳と高収入が約束されるというのは大変な恩恵だ。小学生の夢の中で医者弁護士はかなり実現可能性が高いと言えるだろう。
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