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東大リベンジャーズ感想〜ミチタケはどうすれば良かったのか?〜

 先ほど、「東大リベンジャーズ」という漫画を呼んだ。まだ二巻までしか読んでいないのだが、一応の感想を書いてみる。

 東大リベンジャーズは東京リベンジャーズのパロディ作品である。東大を卒業したものの、フリーターになってしまった主人公のミチタケが、再び人生をやり直すためにタイムリープするという話である。

 筆者は一応東大OBなので、ミチタケが経験した行事や葛藤も一通り経験しているつもりである。そのうえで主人公ミチタケの行動のどこが不適切だったのか。どのような行動をすれば良かったのか?を評論してみたいと思う。もしこれを読んでいる東大志望者や東大の新入生がいれば、参考にしてほしい。

1.「開成」を恐れない

 主人公のミチタケが最初に突き当たる壁がいわゆる首都圏の中高一貫校に地方公立出身者がビビってしまうというよくネット上で囁かれる話である。これは間違いではないのだが、過大評価されがちなところがある。

 しばしば開成等の出身者はエリートとか天才のように思っている人もいるのだが、良く考えてみてほしい。開成卒だろうが、地方公立卒だろうが、同じテストで選抜されているのだから、優劣は無いはずである。両者の優劣は東大合格率の違いという形で反映されているのであって、東大に受かってしまった群の中での差は無いと思う。むしろ塾などが無い地方から自分の力で受かってきた地方公立のほうが地頭としては上かもしれない。

 もう一つ、地方公立勢がビビってしまうのが人脈だ。確かに駒場キャンパスでの初期は同じ高校出身者が群れていることが多いので、彼らは地方勢が届かないスペシャルな情報を知っていると勘違いしがちである。しかし、開成等の校風は東大と同様に個人主義的で、別に同じ高校同士でつるんで卒業するわけではない。そういった生徒がいないわけではないが、大体が大学に馴染めなかったタイプだ。むしろ東大の校風を考えると、地方出身者は馴染みやすいと思う。だから開成を恐れる必要はないし、むしろ萎縮してしまう方がまずい。

 地方勢が不利なのは開成に地頭や人脈で劣るからではない。一人暮らしで生活リズムが乱れたり、東京の就活事情に馴染めなかったりするからだ。地方公立の出身者が真に気をつけるべきはこっちである。

2.東大女子に固執しない

 主人公のミチタケにとっての大きなモチベーションとなっているのが初恋の人である、早瀬ユキのハートを射止めることである。そのためにミチタケはサークルに入ったり、色々な工夫をしているのだが、うまく行かない。

 ここを否定すると話の本筋が変わってしまうので、そもそも論になってしまうかもしれないが、東大ライフを楽しむ上であまりオススメしないのは学内の恋愛に固執することだ。筆者の友人にも進学塾で知り合ったとある女子に恋心を抱き、色々頑張っていた者がいたのだが、結局うまく行かなかった。

 恋愛にコスパもクソもないのだが、正直東大女子との恋愛に固執すると、大変だと思う。東大女子は在学中は凄まじい勢いでモテまくるので、学内で優秀層とされるハイスペ系で無い限り、付き合うのは難しい。筆者のサークルにも学内カップルがいたのだが、医進志望でもないのに、駒場の平均点が90点というハイスペ男だった。学内で特に秀でた才能もないミチタケが早瀬と交際にこぎつけるのは大変だし、宝くじを買うようなものである。そのために興味のないサークルに入るのは全くもってオススメできない。

 じゃあどうすれば良いんだという話だが、ぶっちゃけていると東大男子と最も相性が良いのは東大女子ではなく、早慶やその近辺の大学の女子である。筆者もそうだったし、周囲のカップルを見ても、これはほぼ断言できる。上位大学の男女比は偏っているので、学歴的に釣り合うのはこのあたりになるのだ。ただ、ぶっちゃけ大学にこだわるメリットはあまりない。それよりも外の世界に目を向けるほうが先決である。そのためには学内で変なことをするよりも、アプリ等がオススメである。

 ちなみに作中では慶応の男が東大のサークルに入ってきて、早瀬にアプローチしてきたが、あれはまずありえない展開である。東大男子と慶応男子の在学中のからみは無に等しい。仮にあったとしても、慶応の男子が進んで東大生の中に入っていくとは思えない。このタイプのカップルは大概が社会人になってからのカップルである。

3.クラスに無理して馴染まない

 筆者はこの点に早期に気がついて戦略的に立ち回ったのが良かった。筆者は頑張ってクラスに馴染もうとしているし、その中で優位に立とうとしている素振りもある。しかし、これは楽しい東大ライフを楽しむ上であまりオススメしない戦法だ。クラスの間合いは言うならば会社の同期に近く、他所行きの関係だからである。少なくとも、なんとなく集団に馴染むような関係づくりは避けたい。このような人間関係はエネルギーを食う割に意外と長続きせず、その場限りになってしまうからだ。

 じゃあどうすればよいのかと言うと、オススメのやり方は2つある。どちらか一方しかできないわけではなく、両方できればなお良い。1つはクラスの中でも特定の数人と仲良くすることである。陽キャではなく、二軍かオタク層が良い。この系統との交友関係は結構長続きするし、何よりエネルギーを使わない。もう一つの方法はさっさとサークル中心の人間関係を構築することである。こちらの方がはるかにクラスよりも楽だ。ミチタケが一周目で入ったゲルマン民族研究会はまさにそういった居場所になりやすいのだ。

4.怪しい奴とは関わらない

 人生うまくいくためには交友関係を選ぶことも重要である。ただし、東大の良いところは全員が超難関の入試を突破しているため、皆がそれなりに賢く、出自もしっかりしている。これが東大の良いところである。東大の強みは人間が底堅いところにあるのかもしれない。

 しかし、学外に目を広げるとそうもいかない。作中に登場した東大卍会の構成員は東大生どころか学生ですらなく、多浪生の吹き溜まりのような集団である。ミチタケが彼らから有意義な情報を得ることは無いし、彼らにしてもさっさと勉強した方が良いだろう。

 いや、卍会はまだマシだ。最悪の場合、カルト宗教や闇バイトの可能性もある。色々な人と交流するにしても、それは東大内部など、信頼のおけるコミュニティに限ったほうが良く、学外の怪しげな団体には所属しないほうが良い。

5.他大学出身者に敵愾心を抱かない

 作中に登場した万堂という友人は東大卒業後に四菱商事に入ったが、慶応卒のほうが優秀という現実に打ちのめされ、会社を辞めてしまった。東大をでたのに、会社では慶応のほうが優秀という状態が嫌だったようだ。

 しかし、このような考え方は絶対にオススメできない。開成の話と同じで、四菱商事は(多分)かなり高度に選抜された集団であり、どの大学出が優秀ということは無いはずだ。むしろ万堂の東大というステータスは四菱商事というステータスに「進化」したのであり、それから先に東大云々という話を持ち出すのは余計な反感を買うだけである。

 むしろ筆者としては他大学の出身者のほうが付き合いやすいのではないかと思う。集団競技の経験者が多く、人間的にもバランスが取れている。東大卒はプライドが高いし、同じ会社となればなおさらお互いを比較してしまう傾向がある。それに東大卒の集団に入ると、彼らが最も欲しがっている承認欲求が満たせないだろう。

 東大愛は社会ではなく、昔の友達と語れば良い話である。郷土愛とはそういうものだ。

まとめ

 全部を読んだわけではないが、筆者がミチタケの行動に指摘をするなら、この辺りだろうか。大学時代というのは行動の自由度が高いので、戦略次第でいくらでも活路が見いだせるし、落ちこぼれることもある。ミチタケは見た感じよくいる東大生で、極端な発達障害傾向もなさそうだ。したがって、選択をミスらなければ、充実したキャンパスライフを楽しむことができるはずなのだ。

 そのために重要なのは無意味に張り合わず、真に重要なところに資源を集中させることである。東大に在籍していると万能人間が偉いような幻想に陥るが、そのような人間は一握りだし、維持するのは大変だ。それよりも、自分が生きやすいように立ち回ったほうが良い。

 筆者が東大を出て良かったことは何かと考えていると、やはり面白い人間とたくさん知り合えて、卒業後も付き合えるような友人に恵まれたことである。このような間柄の関係は結構崩れないものだ。社会に出てからはそうは行かない。ミチタケも目先の恋愛や承認欲求ではなく、もっと長期的に実りあるものを手に入れてほしいところである。

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