JTCでうまくやれない東大卒の特徴

 先日のコメントでJTCでうまくやれない東大卒の特徴について書いてほしいとリクエストされたので、今回はJTCでうまくやれない東大卒の特徴について考えてみたいと思う。

 結論から言うと、JTCでうまくやれない東大卒の特徴は、他の大学の出身者と大きく変わらないと思う。どこの大学であろうと、向いている人は向いているし、向いていない人は向いていないのだ。筆者はこの問題に関して性格分類の記事に持ち込む事が多い。理想主義的で組織的な行動を好まない人はJTCにはあまり向いていない傾向がある。

 東大卒の特徴としては、プライドが高い・学閥を作らない・愛社精神に乏しいといった点が挙げられる。これらの点は確かにJTCという観点ではマイナスなのだが、サンクコストから来る粘り強さや元々の能力の高さによって相殺されているようである。東大出身者はドライな人が多く、あんまり世話好きや懐の深いタイプは見たことがないのだが、この点も出世を狙うならともかく、なんとか普通にやっていく分には致命傷にはならないだろう。

 更に言うと、JTCにいる東大卒はなんだかんだ優秀である。東大卒は確かに偏った人間もいるかもしれない。しかし、他大学の偏った人間よりはバランスが取れているか、別の要素で穴埋めすることに成功している印象である。コミュ障や発達障害であっても東大卒は最低限の社会常識やコミュニケーション能力があることが多い。東大はASDの楽園と言われるが、楽園を築けるくらいのコミュニケーションは取れるということである。東大卒のオーバースペック問題はは得意分野が生きないという話であって、苦手分野の少なさという点では実は東大卒は優秀なのかもしれない。

 東大生にはJTCで嫌われるような性格の悪さやサイコ性を持っている人間もいる(多い)。しかし、そういったタイプはそもそも就活段階で弾かれるか、早期に専門性の高い部署に異動になり転職してしていることが多い(巧妙な追い出し方と思われる)。JTCに入れている人間の中で比較すると、客観的な問題を抱えている人間は多くないと思う。

 それでは東大卒の多くがJTCで快適に過ごせているのか?というと、答えはNOである。今まで述べたのは客観面の話だが、主観面はまだ別である。会社で普通にやれているように見えても主観的には強烈な不満や劣等感を抱えているというケースもある。JTCでストレスを抱えている人間のタイプは他大学の出身者とそう変わらないのだが、東大卒の場合はそれまでの成功体験が非常に強烈だったことや、他の選択肢も考慮に入れた上での就職であることが多く、その分主観的な満足度は下がってしまうだろう。

 JTCに向いていないタイプの東大卒は客観的には他の大学の出身者よりも順調にキャリアを積んでいるように見えるのだが、主観的には強烈な挫折感を感じていることは珍しくないのだ。このあたりの事情は東大卒の人生を考える会さんの記事も参照してほしい。

 さて、東大卒のJTC適合度は他の大学出身者と大きく変わらないのだが、それだけでは面白くない。せっかくなので、東大卒に特徴的な興味深いパターンを考えてみたい。

 JTC不適応者のうち、東大卒に見られる特有のタイプ、それは・・・









「頭の良すぎる人」である。

  筆者は頭の良い人間に非常に興味があったため、そういった人を観察できるというのは東大に進んだ一つの理由だった。我ながら結構な数の天才(定義は曖昧にしておくが、判定基準は緩い)を見てきたつもりである。具体的なエピソードを書くと特定されかねないので曖昧な記述に留めるが、めちゃくちゃ頭の良い人で、JTCに染まって社畜コースを歩んでいる人は殆どいない。周囲を見ていると、ほとんどがドロップアウトして転職しているか、達観している。

 厳密には頭が良いとJTCに馴染めなくなるというわけではないのだろう。JTCへの不適合を天才的な頭脳パワーで補うのは難しいと行ったほうが本質に近い。ただめちゃくちゃ頭の良い人は発達障害傾向があるか、こだわりが強いか、自分の可能性に自信を持っていることが多いため、JTCへの不適合を起こしてしまうケースも多いのだろう。頭の良すぎる人は学者等のトップエリートとして勝ち切るか、予備校講師等として大手企業にとらわれない生き方を選ぶかの2極化が激しい。JTCはどうにも中途半端なのかもしれない。

 頭の良さといっても色々あるので、一概には言えない。筆者の観察したところによると、処理力が長けているタイプは仕事でもそれなりに優秀である。一方、思考力に長けているタイプや知識力に長けているタイプは結構苦戦している印象だ。これらの能力はJTCの業務では生きないのだと思う。ただ処理力に長けた優秀な人間がJTCに適応できるかというとまた別問題で、優秀なのに短期で離職してベンチャーで働いているという者も珍しくない。謎のルートで学者になって戻ってこなかった者もいるが、これもドロップアウトの一つのパターンだろうか。

 筆者の周囲にも気味が悪いほど頭の良い人物がいた。(筆者のブログ如きは一瞬で矛盾を見抜かれると思う)彼は朝から晩まで「意味不明なインデント修正」ばかりをやらされて離職してしまった。思考力・処理力・知識力がMAXに達している人間であってもJTCに適応するというのは難しいのである。

 また、進路選択によっても性質は変わってくる印象である。JTCという枠からは外れてしまうが、かなり挫折率が高いのは医学部医学科である。医者の仕事には天才的な頭脳は必要ないのだろう。もちろん医者として優秀な人はいるが、それは生来の真面目さや勝負強さが反映されているのであって、天才的な頭脳の結果という感じはしない。もっとも医学部医学科の場合は働き方が多様であるため、最終的にはどうにか生活を安定させている者が多い印象だ。

 理工系の場合は多種多様である。研究者になった者は概ね不満は無さそうだ。ただし研究者自体が茨の道であるため、別の問題がつきまとう。結構多いのはデータサイエンティストなど、大手企業に必ずしもとらわれない専門職である。JTCに就職するのは工学部からメーカーというパターンだ。メーカーは保守的なことが多く、勤務地は地方であることも多いのだが、強い不満を抱えている人はそこまで思ったよりも多くは無さそうだ。ただし、天才的な活躍ができるかというとまた別で、最終的にこじんまりとしてしまうことが多い。

 さて、問題は文系あるいは文系就職である。業界は国家公務員・金融・保険・コンサル等が多いのだが、だいたいパターンは2つである。一つは競争心が強く、トップ集団で無限競争するパターン。彼らはJTCに行くことはないし、抱えている問題もJTCとは全く違うものだ。もう一つはそこまで競争心が弱く普通に就職するか、何らかの挫折を経験したパターン。この場合はJTCに行くことが多いが、例外なく仕事への満足度が低い。筆者のMBTI考察を一緒に構築してくれたギフテッドみたいな友人がいるのだが、いつ会っても仕事への興味や達成感は極端に低そうであり、本当に辛そうだ。もちろん就職できなかった者もいるが、このタイプについて論じると長くなるので今回は省く。

 文系就職の最大のリスクは「仕事がつまらない」という一点である。アクチュアリーやクオンツと言った超高度専門職に「片手間」で合格した者もいるが、本当に仕事がつまらないらしい。普通のJTC総合職の場合はそもそも入社時点でやる気のある者があんまりいなそうである。知人でいつ受けてもテストが一位の人がいたが、色々と挫折を経験して日系大手金融機関に入ることになった。彼は入社時点から既に安定志向で、さっさと早めに結婚して家庭に関心を移してしまった。官僚はそもそも職場環境に問題があるので、ちょっと議論には適さないかもしれない。

 頭が良すぎてJTCに馴染めないタイプの人間は何人か知っている。彼らの共通点は、社会人になって早期に交際相手を見つけ、結婚していることである。自分の将来を見通せてしまい、別の方向へと切り替えたのだろう。「JTCは余生」ということを言い出したのも、きっと頭の良い人なのだと思う。一方、JTCが肌に合い、仕事にやりがいを感じ、出世を夢見ているタイプはそこまで結婚への志向が高くない。今の生活に満足していて、やりたいことがまだまだあるとのことである。

 頭の良すぎる人というのは一つのパターンというだけで、社会人として優秀な人は当然のことながら多い。どちらかというと、頭が桁違いに良い人でも就職先で活躍できるかは五分五分と言った方が適切だろう。しかし、このタイプは東大卒に特有であるため、今回は考察として取り上げた次第である。なお、他の大学にも頭の良すぎるタイプはいるだろうが、色々理由があって今回は取り上げなかった。進路選択のメカニズムが全く違うと思われるからだ。

 頭の良すぎる人の進路は多種多様である。そのまま学者になったり、余りある能力で官僚や外銀などで活躍している人がいる。一方で世俗的な成功に興味がなく、ベンチャーで働いたり予備校講師になった者もいる。JTCの場合は中庸であり、中途半端である。頭の良すぎる人でJTCの仕事を楽しんでいる者は多くないが、仕事だけが人生ではないという割り切りも早い。JTCの良さはとにかく安定していることなので、結婚して家庭に幸福を見出すにはうってつけである。特に都心勤務を確約されているものはリモートワークや育児休暇で子育て環境もバッチリだ。

 頭の良すぎる人たちの生態について語っているといくら文字数があっても足りないのだが、筆者が人生経験を踏まえて頭の良すぎる若者にオススメしたい進路は、ズバリ東京大学理科一類である。ただし、常に医学部再受験・編入のオプションを持っておくことがミソである。東大理一は進路の選択肢が多いし、頭の良すぎる人を退屈させない課題で溢れている。やりたいことが見つかればその方向に進めば良いし、無理だったら即時医学部転身すれば良い。文系と理科三類はあまりオススメできない。前者はいざとなった時の医学部転身が難しいからであり、後者は色々と大変そうだからだ。他の医学部も現役で入ってしまうとモヤモヤ感が残るだろうから、東大理一に行ってから入り直しても遅くはない。

 それではJTCに向いている東大卒はどんな人かという話だが、これはちょっと難しい。どのような人が出世するのかは事前の予測が困難だからだ。しかし、仕事の活躍度や人生の満足度という観点では、「体育会系」「優等生系」「ビジネス志向系」と思われる。東大卒であればJTCに必要な頭脳レベルは例外なく超えているので、頭の善し悪しは関係ない。体育会系は特に説明は不要だろう。優等生系というのは、普通の公立中学校で内申点を取れるタイプである。このタイプは本当に無難だ。ビジネス志向系は金儲けに対する興味が強かったり、見た感じ景気の良さそうなタイプである。ミーハーではあるが、謎の嗅覚により問題を解決していることが多い。この3つのタイプはJTCにおいて充実した会社生活を送っている印象である。

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