<MBTI>S型N型とK‐POPについて

 MBTI記事に関するコメントでK−POP について関するものがあったので、記事という形で執筆してみることにする。

 筆者の性格診断考察において、音楽にはあまり言及したことがない。音楽というアクティビティは他に比べるとあまりS型N型の偏りは少ない傾向にある。そのため、音楽は考察対象外としていた。

 N型のコンテンツの方が普遍性があるため、人種や国籍の壁を超えて広まりやすいという趣旨のことを述べたことがあるが、音楽のように体験的なアクティビティの場合はそうでもないことが多い。音とリズムという体感的な要素が加わるため、S型のコンテンツであっても環境の垣根を超えやすいのだ。一度垣根を超えてしまうとS型のコンテンツは強い。圧倒的にS型の方が人数が多いし、N型と比べて人を選ばないからである。

 実のところ、大ヒットするものはS型のコンテンツか、ある程度S型に好まれるコンテンツが多い。S型は当たると大きいと言える。まさに大衆音楽ということだろう。N型の場合は年齢や性別は無化するかもしれないが、基本的にマニアックなので、人口の一部にしか刺さらないのである。

 一方、S型のコンテンツは競争が激しい上に飽きられやすいので、タレントのように不安定になりがちだ。落ちぶれアイドルなんかはまさにその例かもしれない。今回はこうした概論を元にKPOPのSN軸について考えていきたいと思う。

S型のコンテンツ

 結論から言ってしまうと、世間で流行っているK-POPはS型の要素が強い。これはしばしば比較対象に挙げられる日本のアイドル、特に乃木坂46と非常に対称的である。

 K-POPの歴史について語ると長いのだが、第一世代のKPOPはあまり日本で知られておらず、無視して構わない。第2世代のKPOPはKARAや少女時代である。第三世代のKPOPはTWICEであり、第4世代のKPOPは最近次々と日本に上陸しているLE SSERAFIMとかNewJeansとかである。

 これらの韓国アイドルは基本的にS型であろう。視覚的なかっこよさやダンスの身体性などに重きを置いているからだ。こうした性質は大衆的な人気につながっているだけではなく、世界展開する上でも有利だった。音楽は体感的であるため、S型であっても普遍的になりうるのである。

 例えば世界展開に成功したS型のコンテンツの例として、ピコ太郎が挙げられる。ピコ太郎のPPAPに深い背景やナラティブは存在せず、純粋に感覚的な面白さである。そこが外国人には受けたのだろう。

 KPOPも似たような性質を持つ。例えば歌詞に注目すれば明らかだ。例えばKep1erのWADADAなんかはわかりやすいと思う。


 KPOPの歌詞は大体こんな感じである。そこに深いコンテクストは存在せず、純粋にリズムと五感を重視している。PPAPにかなり近い性質を持つことが分かるのではないかと思う。

 韓国は人口の関係で市場規模が小さく、早期から外国を意識する必要があった。これが韓国アイドルと日本(特に秋元系が取り上げられる)の違いだ。秋元系アイドルは日本という巨大市場が存在するので、海外展開を意識する必要がなく、内向きのハイコンテクストなコンテンツを進化させた。一方、韓国アイドルは文脈を共有しない外国の人間にも伝わりやすいように、S型に刺さるような進化を遂げていったと言えるだろう。

 韓国アイドルは日本よりもパフォーマンス性重視だし、身長も高い。こうした性質もS型に刺さる上では重要かもしれない。

 なお、筆者のイチオシはLE SSERAFIMのチェウォンである。韓国ではIIVEのウォニョンが人気らしいが、筆者はあんまりわからない。

もう一つのコリア

 さて、ではN型に刺さるようなKPOPは存在するだろうか。結論から言うと存在する。それはもう一つのコリアに誕生したNK‐POPである!!

 NKPOPのヒット作(?)であるコンギョの歌詞を見てみよう。


赤旗掲げて進撃だ
隊を先頭に突撃だ
一心の千万隊伍を率いて進む
その姿は先軍の旗幟だ
攻撃 攻撃 攻撃 前へ
将軍様の革命方式は
白頭山の稲妻のように攻撃
正日峰の雷のように攻撃
攻撃 攻撃 攻撃戦だ

 NKPOPの歌詞は大体こんな感じなのだが、SKPOPに比べると随分と「文章感」が出るのではないだろうか。

 一つ一つの言葉も背景がある。例えばこの歌で語られている攻撃戦とは実は戦争のことではない。経済運営を攻撃戦のように行おうという政治的スローガンである。北朝鮮当局は三代世襲を目前に「強盛大国」という指針を打ち出していた。北朝鮮は既に軍事的・思想的には大国であるが、経済に関してはまだ不十分である。したがって親愛なる指導者・金正日同志とその後継者の元に団結し、経済建設戦争を遂行していこうという確固たる決意を示した歌なのである。白頭山は北朝鮮の霊峰であると同時に、日帝へのパルチザン抗争のさなかに金正日が生まれたことになっている聖地である。正日峰はその一つの峰であり、金正日に因んで名付けられた。北朝鮮はこうした「故事」に基づいて金日成とその子孫を「白頭山の血統」として神格化していったのだ。

 コンギョは日本のネットでカルト的な人気を誇るのだが、筆者の経験上、こういったコンテンツを面白がるのはINTPばかりである。S型が北朝鮮ネタを面白がっているのを見たことは殆ど無い。共産圏の例に漏れず、北朝鮮もまたNT型の国なのだ。何かにつけて表現が仰々しいのは共産圏の常であり、NT型の思考回路に刺さるのだろう。S型にとっては北朝鮮は非常にダサい国、さらに言えば世界で一番ダサい国かもしれない。白頭の血統の人々は残念ながら視覚的にかっこいい人達とは言えないので、更にこれは際立ってる。NKPOPの異様な雰囲気はN型にとっては病みつきになるのだが、S型にとってはおかしな連中としか思えないだろう。

 というわけでこんな等式が完成する。

SK‐POP:S型
NK‐POP:N型

 なんと、S型N型とは南北のことをを表していたのかもしれない。NKPOPのNはN型のNであり、SKPOPのSはS型のSだったのだ!!!

 最近はNKPOPも進化しているようで、こんな「ヒット曲」も出ている。金正恩のキャラソンとしては最高傑作である。

https://www.youtube.com/watch?v=mSDoBcitzvc

 少しリズムはポップになっているため、より感覚的に刺さる歌になっている。それでもやはり面白がるのはN型ばっかりなのではないかと思う。曲のサビのコーラスが入る部分の歌詞が「金正恩」なのは何度聞いても面白い。よく見ると中央には白頭血統を除き北朝鮮で最も有名な人物である、北のアナウンサーことリ・チュンヒ氏が映っている。

南北朝鮮とS型N型

 より突っ込んだ考察として、S型N型と朝鮮半島に関する意識を考えてみたいと思う。かなり独自考察なのだが、一応放流しておこう。

 S型は現実的な人々であり、外国に関する評価は一人当たりGDPにダイレクトに反応する印象である。S型が憧れる外国は全て西側先進国だ。特に日本の一人当たりGDPが欧米より低かった時代に顕著だった。S型のニューヨークやパリへの憧れは尋常ではない。一方、N型はそういった定式には当てはまらない。昭和の左翼は中国を崇拝していたものがいるが、途上国に薫陶するのはN型でなければありえないだろう。同様にN型が興味を持つ国はロシアとかイスラム世界とかS型にとってアウトローな文化圏が珍しくない。西側先進国に批判的な反米知識人はやっぱりN型が多いだろう。S型にとってはロシアやブータンよりはアメリカやフランスの方が魅力的に見えるはずだ。

 S型の見解がかなり変わったのが韓国である。センシティブな話題だが1950年代の韓国に関するイメージは非常に悪かった。古い世代のS型は何の根拠もなく韓国を見下していた人が多い。しかし、2010年代に韓国は日本に追いついて先進国になったため、若い世代を中心にむしろ韓国信仰が生まれていた。一方、2010年代といえばネトウヨ全盛期であり、N型の中には若者であっても韓国をかなり敵視しているものがいた。現代はむしろS型の方が韓国に好意的で、N型の方がやや敵対的ではないかと思われる。

 一方、北朝鮮はというと、面白がるのはN型ばかりである。S型にとっては北朝鮮は危ない国以上の意味は持たない。正直、S型の前で北朝鮮ネタをすると引かれてしまう可能性が高いだろう。筆者の友人はINTPばかりなので、SKPOPは一曲もわからないが、NKPOPなら歌えるという人が多い。

 S型にとっての韓国は美容と音楽の国であり、かなり「イケている」国である。一方、北朝鮮はただただ危険で危ない国だ。一方、N型にとっての北朝鮮は奇妙な音楽と政治体制を保つおもしろ国家であり、韓国はネトウヨが叩いている国家である。かなり誇張して描くとこうなるだろう。実際はN型の多くはS型と同じ価値観を持っているのだが、差異をあえて強調するとこんな感じだろう。朝鮮半島のSN軸とは南北のことだったのである。南北でここまで差が開いてしまった地域は珍しいのではないか。もはや両国は全く別の国であり、話も通じないのではないかと思われる。

 中学校の思い出を思い出してみると、クラスの一軍女子は軒並み韓国アイドルに夢中であった。一方、当時仲良くしていたINTJの友達はネトウヨに被れていて、「韓国って汚いよな」といったことを筆者に語ってきた。当時の筆者からみた韓国は反共ジジイ李承晩の統治する修羅の国であり、事あるごとに大統領が逮捕されるやばい国という印象であった。

 筆者がTWICEを知ったのはツウィが台湾国旗を振って中国のネチズンによって総たたきにされた2015年の事件がきっかけである。TWICEにはモモとかサナのような日本人メンバーもいたのだが、筆者にとっては日本人が韓国に行ってアイドルグループに入るのは非常に奇妙に思えた。当時の韓国のイメージと言えば朴槿恵の告げ口外交や李明博の天皇謝罪事件だったからである。

 学生時代は結構政治的に際どい話をしたこともあるのだが、やはり韓国は冷戦体制の同盟国で云々という話が多く、あとはコンギョを熱唱するばかりであった。SKPOPは一度も話題にならなかったと思う。流石に偏っているとは思うが・・・

まとめ

 今回は音楽をテーマにS型とN型の相違について考えてみた。音楽は比較的MBTI考察との関連性が見いだせない分野なのだが、大衆音楽の歌詞に注目すると若干の方向性を見ることができる。NKPOPはお国柄からして極端にN型に偏っており、北朝鮮の異様な情勢も相まってS型の興味を遠ざけている。一方、SKPOPはかなりS型に対するアピール力が強く、世界中で大人気である。日本の若者の韓国崇拝もS型が中心なのではないかと思う。更に言うと、S型にとってはMBTIネタも韓国の文化という認識らしい。

 大衆文化や流行というものは基本的にS型の歓心を買えるかが命であり、一度成功すれば膨大な収益を生むことになる。一方、S型は競争相手が多い上にマニアックなファンがつきにくいため、かなり不安定かつ勝者総取り方式であることも事実である。太く短いS型と細く長いN型という対比が可能かもしれない。これは芸能人にも観測されることだ。

 余談だが、筆者はS型のセンスが最も優れている曲はモーニング娘。のザ・ピースではないかと考えている。

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