東大でも文学部は就職無いってホント?

 しばしばネット上で言われることがある。それは東大でも文学部の就職は悪い。企業から相手にされない。という話である。実際のところ、これは真実なのだろうか。確かにJTCでは文学部の出身者は存在感が乏しい。

 筆者の結論から言うと。。。




 全くの嘘とは言わないが、文学部を出ていることが就職で特段不利になるとは思えないというのが見解である。

 日本の文系就職は一部の専門職を除くと総合職採用である。この場合、専攻はおまけレベルでしか見られない。せいぜい話のネタと言う程度だ。文学部の勉強内容が実社会での仕事に繋がらないとしても、総合職採用の場合は何も関係ないと思う。しばしばコンサル等で理系院卒が重宝されるというが、これも理系院卒の専門性を評価しているわけではなく、単純に理系学部の学力が高いからというのが実情だろう。

 そういったわけで、文学部の出身が就活に不利になるということは感覚論としてあまりないのではないかと思う。筆者の周囲を見ても、文学部で積極的に官公庁のインターンに応募していたものは普通に官僚になっていた。会社の人間を見ていても、東大文学部の出身者は普通に見かける。東大文三の偏差値は文一・文二に比べて低いから不利という話もあるが、それなら早慶の立場はなくなるはずだ。

 それでは東大文学部の就職が悪いと言われる理由はなにか。東大文学部に進んでいるタイプはいくつかに分けられる。

①文学部に興味があるタイプ(文科三類以外も多い)
②進振りの点数が低く、文学部の不人気学科に進学したタイプ
③偏差値的な理由で文科三類に進学し、何も考えず文学部に進学したタイプ

 ①はあまり金融やコンサルで見かけることはない。この手のタイプはこだわりが強く、拝金主義や出世に無関心なので、自分の興味が満たされるような就職先、具体的にはアカデミアやメディア系などに進みがちである。ただし、就職活動が思わしくない者も多く、東大卒としては微妙な進路になることもある。人文系の気質というのはビジネスの世界とはすこぶる相性が悪い。もちろん渡辺恒雄のように出世する者もいる。

 ②に関しては意外に就職は悪くない。経済学部の上位層を切り取った感じだと思う。外銀や上位のコンサルティングファームに進んだものはあまり見ないが、この手のタイプは日系企業で好まれる体育会系が多いという事情もあって、真面目に就活した者は就職人気企業に進んでいた。ただし、本当にやる気の無いものもいる。

 ③に関してはそこまで上昇志向が強くないことが多い。文科三類の出身者のうち、ハイスペ志向のものは進振りで経済学部や教養学部に進学することが多い。一部工学部や法学部に進むものもいる。入試段階で志望を下げて文科三類に入学した者は巻き返しとしてこれらの手段を取ることが多いようだ。裏を返すと文学部にそのまま進学するタイプはマイペースで穏やかなタイプが多い。就職先も地方公務員など、ほどほど志向である。

 総じて文学部の学生はあまりハイキャリアに興味がなく、マイペースである。その気になれば外資コンサルにも内定可能だと思うが、そのようなタイプは最初から別の科類に入るか、進振りで経済学部等に行ってしまうので、文学部には当該進路に興味のないタイプが集まりがちである。

 以前の記事で東大法学部の下の方は就職が良くないと述べたが、これは文学部的なメンタリティの者が多いことも影響していると思う。たまたま偏差値が高いから文科一類に行ったが、官僚など上昇志向の進路に興味が持てなかったタイプである。出世志向でもなければ拝金主義でもなく、自分軸で生きている人たちだ。

 というわけで、東大文学部の就職が悪いと言われるのは文学部卒が不利に扱われるというより、単純に上昇志向の学生が少ないのが原因だと思われる。大手企業の社長の排出率は低いが、この段階になって学部で判断されるとは考えにくいので、やはり気質の問題ではないかと思う。

 ただし、別の要因もあるかもしれない。JTCのメインストリームは早慶だが、これらの大学は学部格差が大きく、上位の学部と下位の学部には格付けがあったりする。実際、文科三類や文学部を否定的に評価しているのは私立大学の出身者が多いような気がしている。しばしば東大文三より早稲田政経とか慶応経済の方が難易度が高いという主張を見かけるが、そんなことはない。

 余談だが、東大で最も地味な学部は教育学部である。文科三類の場合はメジャーな進路の一つだが、文学部と違って知人が殆どおらず、どんなタイプが行っているのかも良くわからない。キラキラ系では無さそうだが、ダウナー系という気もしないので、本当に謎である。

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