徹底比較!!東大法VS東大経済、文系の覇者はどっちだ?
またまた学歴記事である。一般にビジネスエリートの世界で見かける東大卒の出身学部は経済学部が多く、続いて法学部が多いと思う。この2つが際立って多く、後は理系や文三などがちらほらという感じだろう。東大文一と文二は駒場時代のクラスも同じことが多く、しばしば進路も重なるので、何かと付き合いの多い学部だと思う。今回は東大法学部及び文科一類と、東大経済学部及び文科二類を比較してみたいと思う。
結論から言うと、経済学部のほうがばらつきが少なく、法学部のほうが良くも悪くも尖った人間がいるということである。そしてこの相違は最近は崩れている可能性が高い。
学力
伝統的には文科一類は文系最高峰とされていた。それに次ぐのが文科二類である。両者の合格最低点は数点しか変わらないことが多いが、平均点はもっと開いており、科類ごとに採点基準が違うという噂もあるため、見た目よりも差があったと思う。筆者の時代は成績優秀者のうち7割程は文一志望、2割が文二志望、1割が文三志望といった感じである。(文系は東大一強なので、京大や一橋、その他の大学の志望者はこのゾーンにはほぼ存在しなかった)
文科一類の同級生を見ると、鉄緑会で上位にいた者や、科学五輪のメダルを獲得したものなど、どこかしらの点で目立っていた人間が多かった。高校受験の時にトップレベルだった同級生を考えても、文科一類は理科一類に次いでメジャーな進路だった(高校受験組の場合、理三は少数である)。進学校では伝統的に理系優位の傾向があるが、文科一類に関しては別格扱いである。
ちょっと矛盾しているのだが、法学部は数理的な素養を要さないにもかかわらず、文科一類は数学の偏差値が高い人間が多かった。当時の文科一類の数学の偏差値は京大理学部くらいの水準だったらしい。数オリの予選や大学への数学の優秀者を見ても、東大京大理系に混じって文科一類の志望者だけは上位にランクインしていた記憶がある。筆者の周囲を見ても、文科一類の志望者は理科一類と天秤にかけている人間が多かった。
一方、文科二類はそこまで目立った者は多くなかった。学力上位層という観点では文科一類よりも薄く、文理選択で最初から文系を選んでいるタイプが多かった。ただし、合格が簡単かというと全くそうではなく、文科一類に受かる自信が無いからと行って文科二類に出願していた者は結構な確率で不合格になっていた記憶がある。合格ラインで考えると、そこまで差は大きくない。筆者の時代はまだ文科一類のほうが数学力は高かったと思われるが、近年は逆転しているようだ。
文科一類は昭和型学歴社会の頂点だったこともあって、以前はかなりの難関だったようである。鉄緑会のネーミングにも見られるように、比較対象は理科一類というより理科三類だった。しかし、官僚や法曹の不人気もあって文科一類は凋落傾向にある。筆者の時代の文科一類はまだ文科二類には優位を保っていたが、理科一類には逆転されかかっていた辺りである。現在は文科二類との差は事実上消滅したと考えて良い。理系科目が得意な文科一類の上位層は現在は理科一類に進学していると思われ、理一難化の最大の原因となっている。
出身校
東大法学部はやはり文系最高峰というイメージが強く、以前は理系に負けないだけのブランド力を保っていた。出身校は首都圏の中高一貫校に加え、灘やラ・サールのような西日本の中高一貫校が一大勢力だった。一方、実は地方公立も結構多く、東大法学部卒の有名人を見ていると、むしろメインストリームのようにも思える。彼らは地元では神童扱いで、挫折知らずで東大文一に入ってくる。入ってから目立たないタイプであっても、地元の同級生に聞くと天才扱いだったようである。
一方、東大経済の場合は首都圏の割合が高いのが特徴だ。具体的なデータはないが、6つの科類の中でダントツで首都圏の割合が高いのではないかと思われる。背景には経済学部の主な進路となるエリサラが、地方出身者には馴染みがないからだろう。地方公立の出身者で外資系コンサル等に就職したものはそこまで多くない気がする。海外経験の少なさや、首都圏エリート二世ではないことも影響しているだろうが、単純に馴染みがないからという気もする。
あえて強調するなら、文科一類にありがちな出身高校は灘・東海・久留米大敷設辺りで、文科二類にありがちな出身高校は麻布・海城・攻玉社辺りだろう。開成はどちらも多い。
学生の気質
学生の気質は法学部と経済学部で似ている点も結構多い。どちらも上昇志向が強く、就職偏差値のような世間一般の評価軸で進路を考える傾向が強い。同じ文系でも文学部や教育学部はそこまでガツガツしたタイプは少なく、必ずしも官僚や外資コンサルにこだわってもいないように見える。
東大法学部は色んな意味でおかしな人間が多かった。発達障害系だったり、サイコパスだったり、その他いろんな人がいたが、かなりの頻度で尖った人間を目撃した。もう一つ特徴的なのはプライドが高くエリート意識を持っている人間が多いことだ。人生で挫折経験がないことに加え、そのようなタイプはブランド志向で強気の出願をしがちなことが原因である。
一方、東大経済の場合は遥かに穏当で、学生の均質性は高かったように思える。発達障害系は一人か二人くらいしか見たことがなかった。競争心は法学部と同様に強いタイプが多かったが、こだわりが強い人はあまりいなかったのではないか。東大の学部の中では陽キャが多い学部であり、駒場キャンパスでは闊歩していることが多かった。ただし、陽キャといっても外資系にいるようなハイスペ系であり、近寄りがたいオーラを放っていた。(中学校の一軍にいそうな気の良い陽キャは文学部や農学部に多かった。)もちろん経済学部にも陰キャはいたが、法学部と比べると遥かに穏当であり、わけのわからない者はいなかった。
女子率は法学部が東大の平均よりも高い一方で、経済学部は低い部類だった。やはり女子は数理系に苦手意識を持つのだろうか。偏見かもしれないが、社会人になってからも株価や経済統計系の話題は明らかに男女で関心が分かれる気がしている。
女子の場合、医学部以外の理系がそこまで人気でないこともあって、優秀層は結構な割合で東大文一に進学していることが多かった。彼女らは挫折知らずの秀才であり、才色兼備の完璧人間もいた一方で、発達障害傾向の者も(筆者の周囲だけかもしれないが)存在した。どちらも女性登用云々にあまり関係ない人たちであり、男女不公平を感じる機会は多くなかった。
勉強
東大法学部はハードとも言えるし、楽とも言える。法学部は卒業がメチャクチャ大変とも言われるのだが、筆者はあまり感じたことがなく、むしろやり方次第ではここまでサボれる学部は存在しないのではないか。単位は試験一発勝負なので、普段学校に来なくても試験だけ点数を取れば単位が降ってくる。一方で成績上位を狙って猛勉強している人々もおり、極めて熾烈な競争社会が存在している。法学部の場合は司法試験や国家総合職試験を控えて勉強している者が多く、大学入学後も進学校にいるような感覚である。
一方、経済学部の場合は成績上位を巡って競争社会が形成されているという話は聞いたことがない。法学部よりもインターンや就職活動に目が向いている感覚である。放任主義の学部とはいえ、ゼミ等もあって学生間のつながりは法学部よりはあったようだ。
東大法学部の場合、実際は文系学問全般に興味があり、メンタリティ的には文学部という者もそこそこいたように思える。政治系や文学部の大学院に進んだ者もいる。一方、経済学部は実学志向が強かった。数理的な方向に関しては圧倒的に経済学部のほうが強い。法学部の学生で数理系の技能を持っている者はほとんど存在しなかったように思える。大学受験とは完全に逆転している。
進路
法学部の進路はかなり多様だ。法曹志望が3割、官僚志望が3割、民間志望が3割、その他が1割である。ここはきれいに分かれる。法曹志望は進路変更しない限り大多数が法曹になり、一部が人生を棒に降る。官僚志望のうち、内定するのは半分でもう半分が民間企業に進む。一方で最初からJTCへの就職を狙ったり、少数だが出版社やテレビ局に進んだ者もいた。外資コンサルは優秀だが、これらの進路のどこにも興味がなかった人間が行っていた印象である。
一方、経済学部の場合は経済界を念頭に起き、いわゆる就職人気企業や外資系を目指していることが多かった。経済学部の一番の優秀層は外銀に進んでいた。また、官僚というと法学部のイメージだが、実際は経済学部も多く、結構な数が官僚になっていった。日銀等は官僚系と民間系の志望者がオーバーラップするので、かなりの激戦である。一般にイメージされるインターン等に応募して就活を頑張るタイプの学生が多かった。一部は公認会計士を狙っていたが、法学部における法曹のような花形ではなかった。22歳の段階では公認会計士よりも東大卒の新卒カードのほうが価値が高いということではないかと思う。
経済学部の場合は学生のばらつきが少ないこともあって、就職活動も大体が大手企業に決まっていた。一方、法学部の場合は下の方がかなり就職が悪い。文学部的なメンタリティを持っているものが多いことに加え、地方率や発達障害系の多さも原因かもしれない。中間層下位が日系金融に落ち着くのは共通である。
経済学部は比較的堅実で、ダウンサイドリスクは低い。新卒で入った企業をドロップアウトした者も、だいたいが総合コンサル等に転職していった。大学に馴染めなかった者でも、里帰りして地元の県庁で出世コースに乗っていたりして、むしろ人生トータルでは勝ち組かもしれない。レールを外れてしまった者は圧倒的に法学部が多い。行き先も様々だ。いつの間にか理系エンジニアになっていたり、ベンチャーに拾われたりと、なかなかのカオスである。
民間就職はどちらが強いのかという話だが、中間層に限れば実は法学部のほうが強いのではないかと思う。旧態依然としたJTCは未だに東大法学部信仰が残っていることが多い。法学部の同級生は対して就活もしていないのに、これらの企業に内定していた。信じられない話だが、「滑り止め」で総合商社や外資コンサルに進むものがいるのだ。一方で民間就活に全滅して官庁に進むものもいるので、何かリカバリーはしやすい。
法学部のデメリットは法曹以外の道に進んだ場合に文系総合職としての採用になってしまうことである。最近は民間就職において転職やジョブ型雇用を重視する向きが強まっているが、この場合は圧倒的に経済学部が有利だ。経済学部の同級生の中には公認会計士やアクチュアリーといった難関資格の取得者や、外銀等の金融専門職が結構いたが、法学部の出身者でこれらの進路に進んだものは殆ど知らない。
社会人
いわゆるビジネスエリートに関して言うと、圧倒的に経済学部のほうが見る機会が多い。もともとビジネスマンとして優秀なタイプは経済学部に多く存在するし、転職前提のキャリアをコンサルや金融専門職として構築しているケースが多いからだ。シンクタンクなどにおいても経済学部が圧倒的である。ビズリーチのCMに出てきそうな「いかにもハイキャリア女子」みたいなタイプもだいたい経済学部卒である。
一方、法学部はというと、ビジネスの世界では地味である。転職市場においても東大法学部の出身者はそこまで見かけない。東大法学部は法曹にならない限りは文系総合職としての採用に限られるからだろう。したがって転職先はコンサルやベンチャーに集中している。正直、法学部の転職者は転職前提のキャリア構築というよりは、(口に出さないものの)進路迷走という雰囲気がある。
社会人になってからの予後を見ていると、法学部の方が右往左往するタイプが多い。高学歴難民の輩出数はかなり多いのではないか。法学部卒の予備校講師はよく見かけるが、経済学部卒は今のところ見たことがない。ITエンジニアのように畑違いの業界に行くタイプも法学部のほうが多い気がする。地方の医学部にはだいたい一人は東大法学部卒がいるらしい。経済学部卒が通常の転職の枠に収まっているのに対し、法学部卒はビジネスエリートの枠から外れる者の数が圧倒的に多いのだ。
これと比べると経済学部卒のほうが遥かに堅実で、一般に会社でイメージされる東大卒に近い。金融専門職として順調なキャリアを歩んだり、入社後に社費で留学して出世コースに乗ったりという感じである。もちろん法学部にも出世コースに乗る者は多いが、経済学者に転向したり、働きながら司法試験に合格したりと、個性的なタイプが目立つ。
価値観
法学部と経済学部は被っている面も大きいが、若干の価値観の違いがあると思う。経済学部の場合は拝金主義的なところがあり、外銀や総合商社のような給料の高い進路が花形である。一橋や慶応に似たようなところがある。一橋の平均年収が東大よりも高いという話があるが、東大経済は更に高いのではないか。おそらく医学部を除くと最も平均年収が高い学部と思われる。そのため、価値観はややタワマン文学的である。「都会感」との親和性も高く、あまり地方勤務しているイメージがない。
一方、法学部の場合は経済学部ほど拝金主義的なタイプは多くない。渉外弁護士を目指すタイプくらいだろうか。外資コンサルも「すごい」就職先ではあるが、辞退して官庁に進んだものが多かった。法学部の場合は中心となる価値観はズバリ出世だと思う。官僚が代表格だ。官僚としてそれなりに勤め上げれば、どこかしらの大企業の役員に天下りをすることができる。他にも最高裁判事になったり、政治家に転身したりと出世の幅は広い。給料の高さやキラキラ感というより、肩書のほうが大事ではないかと思う。また、裁判官や総務自治など、地方転勤を前提とする花形もあり、人によっては都会感にはこだわってなさそうだ。法学部の価値観が出世にあるということは、下半分の予後の悪さに影響しているかもしれない。
法学部の職業観は法曹を除くとメンバーシップ雇用を前提としているところがある。一方、理工系は文系就職であっても価値観はジョブ型であることが多い。経済学部は両者の中間であり、両者に片足突っ込んでいる感じだろう。経済学部卒のうち、メンバーシップ型の価値観の場合は法学部と絡むことが多く、ジョブ型の価値観の場合は理系院卒と絡むことが多いようだ。
有名人
有名であることに意味があるかはわからないが、有名人というのはその大学の卒業生で成功した人間を表す指標と考えると、議論の意味は大いにあると思う。
経済学部卒の有名人は大半がビジネスエリートである。したがって、半沢淳一のように大企業の社長になるか、申真衣のように会社を立ち上げて有名になるか、という感じである。ただ、あくまでビジネスの世界の著名人にとどまるため、世間一般での知名度はそこまでである。次いで多いのは官僚関係だろう。国税庁長官の佐川宣寿とか、兵庫県知事の斎藤元彦とかである。茂木敏充のようにコンサルから政治家転身した者もいる。経済学部卒は政官界でかなり強いのだ。当然、経済学者も多数排出しているが、ここに関しては植田和男のように理科一類からの転向者が目立つ。他にはNHKの和久田アナとかが有名だろうか。
一方、東大法学部の場合は進路の多様さを反映してか、圧倒的に有名人の数が多い。国立大学全学部の中で1位かもしれない。まず最高裁長官のように法曹界で有名になる人がいる。官僚での強さを反映して国会議員の輩出数は全大学学部中1位である。挙げるときりがないが、最近だと小林鷹之とか林芳正辺りが有名だろうか。それでいて、ビジネスエリートも結構多かったりする。松本大とか、村上世彰とかが有名である。
もう一つ顕著なのは、レールを外れたタイプの有名人が一定数存在することである。謎のタレント学者になった齋藤孝、謎の司会者になった林修、謎の宗教家になった大川隆法など、東大法学部には謎の方向性で成功するタイプがいるようだ。初代ゴジラの芹沢博士とか仮面ライダーの死神博士とかも東大法学部卒らしく、驚いた(博士役が充てられがちなのだろうか)。YouTuberや作家を見ても明らかに法学部卒のほうが多い。他にも占い師とかオネエとかヤンキー芸人とか、わけのわからない有名人がいたりする。この手のタイプで最も著名なのは三島由紀夫や山田洋次だろうか。おそらく文学部に次いで文化人を排出している学部である。一方、やらかす人間も一定数おり、古くは光クラブ、最近だと井川意高やマスク拒否男のような者もいる。
経済学部で、レールを外れた有名人は伊沢拓司や大島てる辺りに限られるのではないか。その理由を考えてみると、文化人的なタイプがあまり多くないことが挙げられるかもしれない。
まとめ
今回は東大法学部と東大経済学部についての比較を考えた。両者の違いはそこまで以外なものではない。東大法学部は文系最高峰というブランドにあこがれて進学してくるものが多いのに対し、経済学部はより実学志向である。例えるならば、東大と医学部とか、京大と一橋の違いに相当すると思う。法学部はトップエリートに固執し続けるタイプと、全くレールを外れてしまうものに二分され、何かと極端である。経済学部はより堅実で、ばらつきが少ない。
文科一類はかつての輝きを失っており、東大法学部は以前よりも法曹界を目指す専門的な学部という性質が強くなっていくだろう。文科二類との差は消滅した。となると、何も考えていないタイプはむしろ文科二類に進学する可能性が高い。数年前に某進学校で東大文二に進学した生徒が伝説的な答辞を読んだことで話題になったが、あのような尖ったタイプは以前は文科一類(か文科三類)に行っていたはずだ。レールから外れる経済学部卒は今後多くなるのではないかと思う。こうした変化は日本社会が従来型の出世に価値観を置かなくなった証かもしれない。