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S型とN型の問題解決のアプローチの違い

 今回はそこまで重い記事ではない。

 日常生活を送る上で、やはりS型とN型では問題解決のアプローチがずいぶんと違うと感じることが多い。T型とF型の違いはわかりやすく認知もされているが、S型とN型の違いは認知されていないし、二項対立的にも捉えられていない印象を受ける。

 N型は問題解決を志す時に、基本的に寄り道したがる傾向があると思う。問題の原因を考え、対処法を複数用意し、関連知識も調べ、将来役に立ちそうな者もついでに入手し、後から振り返って「あそこはああすればよかったかも」などと反省することが多い。

 一方、S型のアプローチは遥かに直接的だ。S型は問題を解決すると決めたら、それ以外の方法を検討してみることはない。「これをやれば良い」という方法論を少しでも早く手に入れたがるし、一度やり方が確立された後は余計な遠回りは一切しない。そうした行為は全部無駄に見えてしまう。

 筆者は正真正銘のN型なので、S型の割り切りの良さはかなり異質に見える。なんというか、本当に「ダイレクトに役に立つ」ことしか手を付けないのである。関連項目に興味が湧いたりとか、いつかどこかで役に立ちそうなものを保存していくといった行為は全く無駄に思えているらしい。N型の部屋が散らかりやすい原因の1つは「可能性を切る」ことができないことだ。使わない物品でも「どこかで使うかもしれない」ともったいなくなって、捨てられないのだ。一方、S型は割り切りが本当に良い。このあたりは個人差が大きい気もするが、思考回路に概ね対応しているのではないかとも思う。

 あざとい女子の項目でも触れたが、S型のやると決めた時の効率性は本当にすごい。NF型のあざとさがジェンダー的な無節操さに起因しているのに対し、SF型のあざとさは異性を落とすための手段として最適化されている。他の項目に関してもそうだ。知識面に関しても、S型はN型のように広がっていくような好奇心は見られない。しかし、役に立つことに関しては驚くほどの熱心さで知識を吸収する。極端なN型の筆者としては感覚が不思議である。関連知識や発展的な思考実験の話になると彼らは顔をしかめてつまらなそうな顔をするのだが、実用性を帯びる知識になると、途端に凄まじいハイスコアを叩き出すのだ。彼らからするとN型のアプローチは無駄なこだわりで時間と労力を食っているように見えるらしい。

 S型とN型のアプローチのどちらが優位かは条件によって異なる。

 N型のアプローチは目的が不明確で、やり方のバリエーションが多く、長期的なタームで評価され、時間的に余裕がある場合に生きることが多い。例えばN型の色彩が強い教育産業がそうだ。教育は短期的な結果を出すことが不可能で、その指針は曖昧模糊としている。受験であれば結果は明確化されるが、それにしてもノウハウは非常に多義的だ。先生によってそれぞれのオリジナルの教材があり、オリジナルの指導法があり、どれが良いのか悪いのかを定量化して評価するのは難しい。また、教育関係は残業がやたら多い。性質上、そうなるのはやむを得ないのだろう。最近こそ教員の過労が話題になるが、曽祖父母の時代から残業は多かったと聞く。N型の要素が使える業務で稼働時間が短いものは本当に思いつかない。N型のアクティビティは時間集約的なのだ。

 一方、S型のアプローチは目的が明確で、ノウハウのバリエーションが少なく、短期的なタームで評価され、時間効率を求められる場合に生きることが多い。普通の営利企業で求められるのはこちらの方である。営利企業は利益を上げるという明確な目的を持ち、その対価も給料という形で明確化されている。ノウハウもマニュアル化されて、ある程度固まっていることが多い。この場合、S型のほうが強い。裁量権の乏しい環境では即断即決・猪突猛進のS型のほうがストレスを感じにくいだろう。また、稼働時間の短い仕事や単発のバイト系はS型の要素のものに限られると思う。

 大学受験においては内容面ではN型のほうが圧倒的に有利に思えるが、実際はS型もかなり上位にランクインしている。学歴は「役に立つ」のでS型は熱心に頑張るし、受験産業のノウハウがある程度確立しているので、カリキュラムに従って反復練習すれば効率的に目標に到達できるからだ。特にS型は直前期の追い上げがすごかったイメージがある。N型は興味本位で偏った勉強をしていたりして、S型に対して大きな優位は張れない。同じ勉強系でも科学五輪のような場所ではN型が圧倒的多数を占める。ノウハウが存在せず、日頃から興味を持って知識を取り入れている人間が有利だし、学歴と違って趣味的要素が強く「役に立つ」とも言えないからだ。

 前回の記事でも述べたが、自己表現の可能性、あるいはバリエーションの許容度とN型とは露骨に相関があると思う。作家や研究者は代表格だ。先ほど挙げた教育産業も個々人の個性が反映されやすい業界ではないかと思う。一方で画一性が求められる場所では明らかにS型のほうが有利である。会社員の場合は自己表現ができる場面はあまり残されていない。裁量権が少なく、システム化が行われるほど、S型のほうが有利になる。現場の営業職であればそこまでシステム化はされていないかもしれないが、ノルマという明確な目標があり、自己表現という場面でもないため、やはりS型のほうがやや有利ではないかと思う。

 政治家は基本的にN型の領域だ。政治の目標は曖昧模糊としていて、それを定義することが政治の目標である。全体論的な話もN型が好むだろう。野党の場合はこれに加えて政権に就くという可能性が遠い将来の夢に近いという事情がある。したがって野党議員は多くがN型であると思われる。しかし、自民党に関してはそうでもないようだ。S型の政治家は抽象的な理念よりも、「資金を集める」とか「選挙に勝つ」といった目標にかなり強みを発揮しているのではないかと思われる。政策よりも利益誘導や地盤が重視される田舎の選挙区との相性が良さそうだ。見方を変えればS型が政治参加に熱心な国は、政治が腐敗していて「儲かる」産業になっていたり、日常生活に影響が及ぶくらい深刻な問題が発生しているのではないかと思う。

 こうして見ると、特殊なシチュエーションを除いてN型がS型に優位を張れる場面はあまり無いように思える。少なくとも会社員の世界ではあまり見られない。N型の特性が生きる教育産業等は多額の公金が投入されており、市場原理の外にある存在である。学習塾は営利企業かもしれないが、扱うテーマはあくまで市場経済の外から来たものだ。

 ただ、個人事業主の場合は意外とN型が不利ではないような気がしている。両者の差を分けるのは裁量権の有無だろうか。また、個人事業主の収入はサラリーマンとは根本的に性質が違うこともある。サラリーマンが50万の収入を得たら、それはそのまま50万円の自由資金である。しかし、個人事業主の場合は借金を抱えていたり、再投資したり、色々と扱いが異なっている。こうなると、お金というものを抽象的に捉える人間のほうが有利だろう。こうなるとN型にも一定の分がある。S型は金を金と思ってしまうので、以外に大きくジャンプすることは少ないのだ。

 


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