長谷川 泰洋准教授(名古屋産業大学・現代ビジネス学部)
長谷川泰洋准教授について
大学では何を教えているの?
長谷川先生は大学で生態学概論、森林生態学、生物学、フィールドワークの技法、農山村インターンシップの科目を教えているよ。自分の地域の生き物のことなのに意外と知らないことがたくさんあって、学ぶことがたくさんあることに気づかされるんだ。勿論、身近な自然生物だけではないよ!希少種が生き残る為の条件など、学生にとって初めて聞く内容が盛りだくさんでいつの間にか授業に集中しちゃうって評判だよ。
長谷川先生の専門分野
先生の専門分野は森林生態学、保全生態学、造園学なんだ。先生の研究室では、身近な自然環境を守り、生物の多様性を高める方法を探していて、これにより人々が自然から受ける様々な恵み(生態系サービス)を豊かにすることを目指しているんだよ。特に、先生たちは都市圏(都会に近い場所)の里地里山や神社の森を研究の対象として、これらの場所で自然環境を守りその影響を調べているんだよ。
長谷川先生の主要な研究成果
先生のこれまでの研究成果には次のものがあるよ!
①社寺林の生物多様性の変遷(移り変わり)とその保全について
②森林の生物多様性評価手法に関する研究
③菌従属栄養植物の生育環境の解明
④名古屋都市圏の未記録種の記録(さまざまな市民協働調査も実施)→レッ
ドデータブックを作成中
⑤文化的サービスの需要と生物多様性保全意識の関係性の把握
⑥無播種・無植栽の緑地の生物多様性の実態
小中学生の皆さんには難しい内容だと思うから簡単な説明を加えるね。
①社寺林の生物多様性の変遷とその保全
神社や寺の森の生態系がどのように変わり、それをどうや
って守るかを研究している。
②森林の生物多様性評価手法
森の中にどれだけ多くの種類の生き物がいるかを調べる方法を開発して
いる。
③菌従属栄養植物の生育環境の解明
キノコと一緒に成長する特殊な植物がどのような環境で育つかを研究し
ている。
④未記録種の記録とレッドデータブックの作成
名古屋都市圏で新しく見つかった生物の記録を作り、市民と協力して調
査を行い、それをレッドデータブックにまとめている。
⑤文化的サービスの需要と生物多様性保全意識の関係性の把握
自然とふれ合う、楽しむことがどれだけ重要であるかと、それが自然を
守る意識にどう影響するかを調べている。
⑥無播種・無植栽の緑地の生物多様性の実態
人間の手を加えない自然の緑地がどれだけ多くの生き物を支えているか
を研究している。
長谷川泰洋准教授の現在の研究テーマ・進行中のプロジェクト
長谷川先生の現在の研究テーマ
先生の現在の研究テーマは、社寺林の生物多様性の変化とその保全のことや、文化的サービス(モノ以外の恵み:景観、芸術、ハイキングなどのレクリエーション、教育等)の受益と生物多様性保全意識の関係性の把握、文化的影響の強い植物(絶滅危惧種、保全対象種、レクリエーション価値の高い植物等)の生育環境の解明についてなんだ。どれもこれまでの研究成果と繋がっているね。生き物のことだから日々変化するし、これからも目が離せない分野だということだね。
現在進行中のプロジェクト
先生の現在進行中のプロジェクトは多岐にわたっているんだ。
・社寺林の生物多様性保全に関する研究(その実態と変化の傾向)
・バラ科カマツカ属、ハイノキ科ハイノキ属植物の地域系統及び新種の解明に関する研究
・流域圏(河川や河川の水の流れる先)における生態系サービス(調整サービス(水供給)、文化的サービス(景観)、生物多様性保全(鳥類等)の網羅的評価手法に関する研究
・都市圏(主に名古屋都市圏)の絶滅危惧種の分布及びその要因に関する研究ー新たな都市圏の生物多様性保全理論の構築
・生態系サービスの需要と生物多様性保全の関係性に関する研究(特に文化的サービス、(畏怖(怖がりつつも尊敬すること)、神聖性、レクリエーション等)の需要との関係性に着目)
プライベートな長谷川先生
趣味は森林散策や読書なんだ。本当に研究が好きで、楽しいんだってことが伝わってくるね。
研究に興味を持った学生へのメッセージ
・身近な動植物を覚えると、自然の見え方がどんどん変わり、自然をみることがどんどん面白くなっていきます。まずは、身近な動植物を少し覚えることから始めてみましょう。
・皆さんは身近な動植物について、在来種、外来種の名前をいくつ挙げられるでしょうか。生物多様性保全は、地域ごとに取り組むことが重要な課題です。なるべく多くの生物を覚えましょう。また、地域の生物多様性保全の拠点は、どこで、どの様な仕組みでその保全が行われているか調べてみましょう。
・私たちが知らない間に自然環境は変遷しています。その変化に気づける様に、観察してみましょう。また、身近な自然にも、まだまだ未知のことはたくさんありますので、関心を持ったことを調べてみたり、探求してみましょう。
・2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が国際目標とされています。この実現のために「30by30」(サーティ バイ サーティ:生物多様性条約締結国(194の国と地域)において、2030年までに陸と海のそれぞれ30%以上を保護区とする)などの取組が始められています。生物多様性保全のために、国や自治体、企業、NPO等が取り組んでいることを調べてみましょう。また、それらの活動に対して、どの様に関われるのかを考えてみましょう。
取材者より学生生徒の皆さんへ
2024年現在、何種類の生き物が絶滅しているでしょうか。実は毎年数万種の生き物が絶滅しています。長谷川先生のフィールドワークの授業では、社寺林や山等に行きます。そこで実際に何種類もの絶滅危惧種を生で見ることができます。大学生の皆さんは、絶滅危惧種の観察後、生物の保全にどんどん興味が涌いて授業が楽しくなっているのがわかりました。
生き物たちは繊細で、少し環境が変わるとそこに住めなくなってしまします。地球温暖化防止や食品廃棄の削減、自然観察や自然体験を増やすことは環境保全に繋がり生物多様性保全に繋がります。私は取材の後、昆虫や鳥、植物等取材前には気にかからなかった生き物が気になるようになり、また環境保全について意識が高まりました。今はそこら中にいる生き物たちも、皆さんが大人になる頃には絶滅種、または絶滅危惧種になっているかもしれません。私は取材中すっかり先生の話に夢中になり、やれることはやろうという思いが強くなりました。ここまで読んでくれた皆さんも何ができるのかを考えてみてはいかがでしょうか。