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書籍『ゼロ・ビートの再発見』の問題点

 平島 達司 氏 による音律解説書『ゼロ・ビートの再発見』は、古い書籍ですでに絶版になっていますが、プロアマ問わず音律研究者が良く参照するのを見かけます。しかしさらっと私が読んでみたところどうも、出版年が1983年であるということもあり内容が古く、現在得られる情報から総合して考えるに、音律の歴史について誤解を与えかねないのではないかということで、このような"大学の先生の講義に素人が重箱の隅をつつく"的な文章を書いてみたわけであります。  『ゼロ・ビートの再発見』には二冊あり、

    • モーツァルトの弟子フンメルが記述する平均律

       Thomas McGearyの当時(1756~1839)のドイツ・オーストリアの調律指南を22個調べた論文によれば、モーツァルトの時代にはすでにドイツ・オーストリアにおいて平均律が主流になっており、ミーントーンの記述は音楽家ではないChristian F. G. Thonにより1817年、1/4SCが記述されたぐらいで、ほとんどないに等しい状態でした(キルンベルガー2法がまあまあ広がっていたことも示されます。F. G. Thonも当時実際広まっていたのは平均律と、キルンベル

      • テュルクの記述からみるモーツァルトの時代の音律事情

         ダニエル・ゴットロープ・テュルクのクラヴィーア教本(東川 清一 訳、春秋社)には、平均律の記述があります。それによるとキルンベルガーが純正作曲の技法を発表した1771 ~ 79年頃にはすでに、平均律が主流になっていました。これについての記述は以下のリンクから見られます。 平均律の歴史的位置 坂崎 紀 https://mvsica.sakura.ne.jp/eki/ekiinfo/HPET.pdf (ちなみにウィキペディアによると、テュルクはJ S bachの孫弟子だそう

        • ベートーヴェンの弟子チェルニーが記述する平均律 

           ベートーヴェンの弟子、そしてリストの師として知られるカール・チェルニーが1839年出版の「ピアノ演奏の基礎 op. 500 vol3」の中で平均律を記述していましたので紹介します。下のサイトの下の方のvol3から英語版が見られます。これの書籍のページ番号で126ページ(pdf表記で136ページ)からです。  初めに、オクターヴと完全五度が最も協和度の高い音程であり、これらはどれだけ音程がずれているかがわかりやすいので調律に利用できるとします。調律の指南としては、Aから始め

        • 書籍『ゼロ・ビートの再発見』の問題点

        • モーツァルトの弟子フンメルが記述する平均律

        • テュルクの記述からみるモーツァルトの時代の音律事情

        • ベートーヴェンの弟子チェルニーが記述する平均律 

          キルンベルガーは純正和音のために独自音律を考案したのか? (読書感想文、『純正作曲の技法』)

          純正作曲の技法、東川清一訳、春秋社の読書感想文的な。まだ全部読んでないけど。スーパー個人の感想ですので注意。  キルンベルガー音律はキルンベルガーの純正和音への強い志向を表す音律とよく言われますが、どうもそれはすこし違うのではないかという感じがします。というのも平均律について、以下のような文章があるためです(段落が続いていること、または省略を……で示しておきます。[]は訳者の注です)。  このことから平均律をキルンベルガーが否定していたのは、平均律と純正との乖離がはなはだ

          キルンベルガーは純正和音のために独自音律を考案したのか? (読書感想文、『純正作曲の技法』)

          ベートーヴェンの時代のテンポは現代と比べて1/2だった!? ……はずもなく

           音楽してない人の記事なのでそこのところよろしくです。  whole-beat theoryというものをご存じでしょうか。  最近一部の人が主張しているものなのですが、どういう内容かというと(ここから先用語とか違っていたらごめんなさい、でも言わんとすることはわかると思う)、ベートーヴェンの時代の人はメトロノームの読み方が違っていて、針が行って帰ってくるのを1拍として数えていたため、同じテンポ表記でも昔は1/2倍の速度で演奏していた、というもの。ベートーヴェンのテンポ表記と

          ベートーヴェンの時代のテンポは現代と比べて1/2だった!? ……はずもなく

          バッハの時代の人々の平均律受容の足跡(音律史-自分で調べたことのまとめ-7)

          はじめに 以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。ただ、できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述(ほとんど日本語か、英語に翻訳されたものだが)を参考にするようにしていますので、原典を確認することはできると思います。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確

          バッハの時代の人々の平均律受容の足跡(音律史-自分で調べたことのまとめ-7)

          1890年のイギリス音楽辞典から見る当時の音律事情(音律史-自分で調べたことのまとめ-6)

          はじめに 以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。ただ、できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述(ほとんど日本語か、英語に翻訳されたものだが)を参考にするようにしていますので、原典を確認することはできると思います。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確

          1890年のイギリス音楽辞典から見る当時の音律事情(音律史-自分で調べたことのまとめ-6)

          ヘンデルのものとされる音律について(音律史について自分で調べたことのまとめ-5)

           以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をほとんどそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述を探すようにはしています。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確実に言えて、どこからは推測なのかをはっきりする必要があります。私はもう音律関係のことを漁るのには満

          ヘンデルのものとされる音律について(音律史について自分で調べたことのまとめ-5)

          J. S. bach やその後の時代の平均律受容の可能性について (音律史について自分で調べたことのまとめ-4)

           以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をほとんどそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述を探すようにはしています。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確実に言えて、どこからは推測なのかをはっきりする必要があります。私はもう音律関係のことを漁るのには満

          J. S. bach やその後の時代の平均律受容の可能性について (音律史について自分で調べたことのまとめ-4)

          モーツァルトはミーントーンを使用したのか? (音律史について自分で調べたことのまとめ-3)

           以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をほとんどそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述を探すようにはしています。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確実に言えて、どこからは推測なのかをはっきりする必要があります。私はもう音律関係のことを漁るのには満

          モーツァルトはミーントーンを使用したのか? (音律史について自分で調べたことのまとめ-3)

          ヨーロッパ地域ごとの各音律の需要について(音律史について自分で調べたことのまとめ-2)

          はじめに 以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をほとんどそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。ただ、できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述(ほとんど日本語か、英語に翻訳されたものだが)を参考にするようにしていますので、原典を確認することはできると思います。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこ

          ヨーロッパ地域ごとの各音律の需要について(音律史について自分で調べたことのまとめ-2)

          音律史について自分で調べたことのまとめ(主にbachやmozartによる平均律受容の可能性について)

          はじめに 以下はyoutubeのコミュニティに投稿した複数の文章をそのままコピペしたものです。私は研究者ではありませんし、音楽もしていません。情報元はほとんどネット上の論文です。ただ、できるだけ18世紀、19世紀当時の直接的な記述(ほとんど日本語か、英語に翻訳されたものだが)を参考にするようにしていますので、原典を確認することはできると思います。  言いたいことは、情報元を確認してほしい、ということです。そして、芸術的解釈と、厳密な音楽史の研究は区別して、どこからどこまでが確

          音律史について自分で調べたことのまとめ(主にbachやmozartによる平均律受容の可能性について)