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若者世代の選挙の意義は、投票率による現状維持(選挙に行こう! )【行政とまちづくり】

本日は衆議院議員選挙日ですね。
有権者の皆さん、投票に行きましょう、というのは当然の話として。
日々まちづくりに取り組んでいる立場から、特に若者世代(10〜30代)に向けて、一般論の綺麗事をぶっ壊した上で、なぜ投票に行ってほしいのか、というお話をします。
※あくまで個人的見解ですので、ご容赦ください。
※特定の候補者や政党を支持・否定するものではありません。


選挙に関する大きな勘違い

選挙関連の番組やポスターで、若者に向けた「君の一票が世の中を変える!」みたいなフレーズを見かけたりしますよね。
でも、当の若者世代は、「いやいやそんなことないやろ~」ってなんとなく嘘っぽさを感じて、多くが投票所に足を運ばない。それが現状です。それはなぜか。

私は、その理由に、一般的にTVやインターネットで言われている、選挙に関する大きな勘違いが2つあると思っています。
一つが、「誰に投票するかが大事」ということ。
もう一つが、「今の世の中を変えるために投票する」ということです。

投票所や政治の仕組みから、順を追って説明します。

投票所の仕組み

理由を説明する前に、行ったことない人もいるかもなので、実際の投票所の流れを見てみましょう。選挙事務に従事される方々にはお馴染みの内容です。

まず、住民票のある(=投票権のある選挙区の)住所に葉書が届きます。
それを持って投票所に入ったら、葉書を受付に渡すことで、担当者が名簿の中から探し出し、本人と照合(チェック)します。
そこでチェックが終わったら、次に進み、投票用紙を受け取り、記名台で周りに見えないように、候補者や候補政党の名前を書きます。
最後に、投票用紙を折りたたんで投票箱に入れて終わりです。複数あるときはそれを繰り返すだけです。なんとなく立会人の皆さんに会釈して会場を後にします。

以上の仕組みからわかるように、投票が完了した時点で、その会場に残る情報はたった二つしかありません。
投票箱を開けたらわかる「誰に何票入ったか(投票先)」、そして受付名簿を集計してわかる「誰が投票に来たか(投票率)」
ここでのポイントは、「誰が誰に入れたか本当のところはわからない」ということです。出口調査とかはあるものの、投票用紙には自分の名前書く欄はないですからね。選挙の原則なので当たり前のことですが。

なので、例えば「A候補者は子育て政策にお金をかけると言ってるから投票した」としても、A候補者はあなたが投票したことを知りません。
しかし、一つだけ確実にわかることがあります。それは、誰が投票に来たか、つまり「世代別投票率」です。

出典:日テレニュース

議員(政治家)の役割・仕組み

言うまでもなく、議員(政治家)というのは、国民・市民から選ばれた代表者です。我々のために大切な仕事をして頂いている方々。
その大きな役割は、「国民・市民から集めたみんなのお金(税金)の使い道を決める」こと。地方自治法でも、行政は政治家からOKもらわないと予算使えないよって明記されています(議決事項)。

一方で、お役所(行政)の役割は、「国民・市民の代表たち(議員集団=議会)が決めたみんなのお金(税金)の使い道に従って、具体的にモノ作ったりお金支払ったりの作業を進める」ことです(執行機関)。
結構勘違いされがちなのですが、行政が税金を好き勝手使い道を決めてるわけではありません。なので、例えば議員さんたちの会議(議会)で10億円の野球場を作る!って決まった後に、いやいや行政としては10億円のコンサートホールの方がやりたいからそっちをつくろう!なんてことはできません。

一方で、議員の皆さんも、当選したからといって、自分の好きなことばかりできるわけではありません。なぜなら、自分は国民・市民の代表として選ばれたに過ぎないからです。
だから、選挙時の公約(こんなことにお金を使います!宣言)に書いたことや、投票してくれた有権者の方々の困りごとを解決するために、税金を使おうとします。そうしないと、(例えば)4年後の選挙のときに、選んでもらえなくなるので。人によっては、今までの仕事を全部辞めて、議員一本に絞ってるわけですから、4年後落選したら無職になっちゃいますからね(この議員さんばかりがリスクを背負う仕組みはどうにかならないかと思ってますが・・・)。

しかし実際に、じゃぁ有権者だったら誰の言うことでも聞くのかというと、そうはいきません。あくまで自分に投票してくれた(だろう)人、つまり投票所に足を運ぶ人の言うことを優先しますよね。だって投票に来ない人の言うこと聞いたところで、その人は4年後自分に票を入れないんですから。

出典:いらすとや

世代別投票率と税金の使い道

ここで、先ほどの「世代別投票率」の話になるわけです。
政治家(議員)からすれば、やっぱり4年後に当選したいので、4年後に投票所に来てくれる人が喜ぶことに、お金(税金)を使いたい。
そんなときに、今回の投票率が、50~60代がめちゃめちゃ高くて、10~30代がめちゃめちゃ低かったら、どう思うでしょう。「よし、シニア層に回すお金は削って我慢してもらい、その分若者が楽しめることにお金を使おう!シニア層も理解して4年後自分に投票してくれるよきっと!」って、なるでしょうか。

イメージしづらいと思うので、具体例を挙げます(※過去の事実ではなくあくまで例です)。
行政が団地を作るとします。せっかくなので、住宅だけでなく、真ん中に広場をつくりましょう、ってなったときに、最初は「子どもが走り回れる芝生広場がいいなー」と思ってたとします。
でも、近隣の年配の方々が、「いやいや、うちとっくに子ども巣立ったし、そんなことより自分たちが無料で楽しむゲートボール場がいいわ~」と政治家(議員)にお願いして、議員さんたちが「高齢者の健康増進!」とか大義名分を行政に伝える。
で、結果、子育て世代も住んでる団地なのに、いつの間にか緑あふれる広場が殺風景な無料ゲートボール場になってしまう

出典:UR都市機構

政治を動かす一歩目は、投票先ではなく投票率

上記はあくまで例ですが、実はこんなことはずっと昔から日本中で起きています。
なぜなら、「若者世代が投票所に行かないから」。要は世の中にナメられてるんです。

だから、特に若者世代にとって、大切なのは投票先ではなく投票率なんです。なぜなら、政治を動かすのは投票率だから。

まずは毎回投票所に足を運ぶこと。なんなら誰が立候補してるかなんて知らなくてもいいし、白票で入れてもいいと私は思います。誰もあなたが白票で入れたなんてわからないので。
その上で、慣れてきたら、余裕ができてきたら、選挙公報読んだり、ネットで調べたりして、ちょびっとでも興味を持てそうな人を選んだらいい。でもそれは応用編、第二ステップです。無理してそこまでする必要はないと、私は思います。

ここでのポイントは、白票でも十分意味があるということです(賛否両論あるものの)。
白票だからといって、あなたが投票に行かなかったことには絶対なりません。何度も言ってるように、その白票を誰が入れたかは誰も知りようがないからです。でも20代のあなたが投票所に行って受付するだけで、その地区の20代の投票率は確実にコンマ数%上昇します。
自分は成人してから必ず毎回の投票に行けています。それは、よくわかんないときはとりあえず白票を入れるでもいいや、と教わっているからです。だからノンプレッシャー。

なんで若者が投票所に行きづらいか、その理由の一つが、「政治をきちんと知らないと(投票先を勉強しておかないと)行っちゃいけない気がするから」だと思います。
だから、本当はこういった選挙⇒政治⇒税金の使い道の話を、もっと10代の頃から注力して教えてほしいところですが、、、まぁ「公教育で何を教えるか」を決めるのも基本的には政治家(議員)ですから、もしかすると若者の投票率が本気で上がってほしい、と思ってる人が少ないのかもですね。そうなると若者以外の票で毎回当選している方がちょっと困っちゃいますから。

出典:毎日新聞

世の中は変えなくてもいい

さて、最後に、2つ目の勘違い、「今の世の中を変えるために投票に行く」について、触れたいと思います。

若者世代が投票所に行きづらいもう一つの理由が、「そんなに世の中を変えたいと思ってないから」なんだと思っています。

なんだかんだで、今それなりにいい世の中だと思うんですよ。
自分が子どものころより、たくさん遊べるのあるし。ネットやスマホもあるし、友達と連絡とるのも気楽。ミニ四駆もビーダマンもハイパーヨーヨーも楽しかったですが、今の世の中で小学生時代を過ごしてみたかったですね。
職場環境だって、デスクでおっさんたちが煙草吸いまくって、飲み会の強要やらセクハラが当たり前だった時代に比べたら、真っ当すぎて天国のよう。
多様性が認められる時代になって、例えばアニメ好きで毎週見てます~なんて会話が普通にできる。自分が10代の頃にそんなこと言ってたら、基本迫害対象です。

なぜかって、不況だなんだと言われてますが、基本的に世の中は正しい方向に向かって動いてるからです。政治もそう、行政もそう、技術革新もそう。どの仕事も今の社会課題を解決するために取り組んでいるのですから。

なので、今の若者世代は、なんだかんだでそれなりに恵まれてると思います(個別事例は別として全体的に)。もちろん不満はあるでしょうけど、学生運動があってたような時代に比べて決定的なものではない。
それは、先人たちの、それこそ政治と参政権のおかげでもあるんですが、だから一昔前の世代の人々の感覚で「世の中を変えたいやろ!ね、そうやろ!じゃぁ投票所行こうよ!」と言われてもピンとこないわけです。

出典:Tamiya

世の中を変えないために投票に行く

じゃぁ、それでもなぜ、若者世代に投票に行ってほしいのか。
それは、「今の世の中を変えないため」。さらに言えば、「勝手に悪化させないため」です。

先ほどの広場ゲートボール場化の例に見られるように、世の中はどんどん高齢化率が上がっていってて、どんどんそのために使うお金が増えていっています。
もちろん、福祉に税金を使うのは非常に大切なことなのですが、放っておくと必要以上に偏る可能性は常にあります。なぜなら、投票する人も、政治家(議員)も、今高齢者になってるか、これからなる人ばかりだからです。今から若返って若年世代になるわーなんてベンジャミン・バトン人みたいなはいません。

一つ、個人的な事例を。
私は、関西方面の某TV番組「○○委員会」が好きで、大学生の頃とかよく見てたのですが(今でもたまに)、十数年前にピタっと見なくなるきっかけとなった放送回がありました。
色んな考えや専門性を持つ登壇者の方々が、バッチバチに対立して議論する様子が醍醐味の番組なので、その日もテーマ毎に真逆の意見同士が激論を交わしていたのですが、テーマが外交「これからの日本は戦争すべきか」みたいなお題が出た瞬間、登壇者のほとんどが「すべき!」と答えて、一斉に「若者を行かせればいいんだ!」って言いだしました。
これを見て私はびっくりしました。自分は年齢を理由に戦地に行く気はさらさらなく、若者に全部被らせる気なのを、こんな堂々と言うのかと。
もちろん、彼らはコメンテーターであって、政治家ではないのですが、もしかすると高齢者偏重型の政治ステージでも、同じことが起きうるのかも、、、と僅かながら危機感を覚えたのです。
(※外交や国防論、憲法9条などへ、賛成・反対・意見表明するものではないです念のため)

これは極端な例ですが、やはり人間は我が身が可愛いものなので、必死の選挙を戦って政治家になった方々が、将来の自分が不利になることがわかっていて、どんどん少子高齢化で使える税金の余裕がなくなっていく中、若者や子どもに税金を使おう!高齢者はその分我慢しよう!と言い続けることができるのか。
もしかしたら、徐々に今の世の中から悪い方向に水面下で変わっていっているのかもしれません。若者に見えない場所で。

それを防ぐ、止めるために必要なのが、「若者世代の投票率」なのです。
世の中を変えるためではなく、世の中を変えないため(現状維持)にこそ、若者は投票所に行くべき、私はそう思います。

出典:子ども家庭庁

まとめ

長くなりましたが、これが私が「若者世代こそ投票所に行った方がいい!」と思う理由です。
私自身が、もはや若者世代と言えない年齢になり、本音を言えば若者世代の投票率が上がったところで恩恵は何一つ受けられないのですが、それでも、いつだって、国の、社会の、地方都市のエネルギーは若者世代にあり、未来と可能性はさらにその下の子ども世代にあると思っています。

ぜひ、10代や20代、30代の方々に投票所に足を運んでもらうこと、それもまた大切なまちづくりの一歩目だと思います。

※くれぐれも、特定の候補者や政党、政治思想を支持・否定するものでも、投票に行かない人を批判するものでもありませんので、ご注意下さい



























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