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赤ワインなしでお正月を迎えるなんて。クラフトビールのその先にあるもの?



1. お正月のおせちと飲み物

ふだんの家飲みは、基本350mlの缶ビール1本と、赤ワインが定番だ。
赤ワインの量は、だいたいハーフボトルから1本、、、とその時々で。
もともと、おせち料理は甘くて好きではなかったので、いただくことはなかったのだが、ここ3年ほどは食べている。

なぜなら。
近所のフレンチで、洋風おせちの3段重を頼むようになったから。

洋風おせち3段重

メニューの一部を挙げると、
黒毛和牛ローストビーフや真鯛のエスカベッシュ、岩手鴨とフォワグラ木の実のパテ、サーモンや牡蠣、帆立のスモーク、ズワイガニのテリーヌ、オマール海老のボシェ甲殻類のクリームなどなどなど。
リエットやコーンビーフ、鶏レバーペーストもあるので、今年は前もってバケットも準備した。

当然毎年、まずはビールで乾杯して、赤ワインにいく。
今年も辛口重め、ボルドーやスペインの赤ワインを用意していた。

2025年の最初は、ヤッホーブルーイングの「HAZY IPA2024」スタート!
年明けだけど。
「有頂天エイリアンズ HAZY IPA」と味比べもしたかったのだ。
あれ?
「HAZY IPA2024」、前回飲んだ時は、薄めに感じたジューシー感が、ググッと前にきてる印象。こんなに美味しかった?!
そして、「有頂天エイリアンズ HAZY IPA」を。
おぉ〜、こちらはトロピカルよりはグレープフルーツのような柑橘系の香りとガツンと苦味が前面に。こんなにグレフル感あった?!

クラフトビールの面白いところは、合わせるものやとの時々でガラッと印象が変わるところ。どちらも昨年末に飲んでいるのに、その時の印象とまったく異なっていた。期待という測れないものの影響もあったかもしれない。

続けて「バクの初夢 2025」柚子と花椒のヴィットビア。
ゆずの香りは、「好みなんて聞いてないぜSORRY」を懐かしく思い出せる雰囲気ながら、それよりも少し独特な香りでおもしろい味。
実は昨年の「バクの初夢 2024」は飲んでなくて。ビアスタイルがエクストラペールエールだったことを思うと、こっちの方が好きな味だったろうな〜と。でも、それが発売された一昨年の11月ごろは、まだそこまでピンと来てなかった気もする。とはいえ、それまでの福ビールとか、お正月ビールは、味自体は軽やかなタイプが多い印象なので、まぁまぁまぁ。

そう。
クラフトビールのおもしろくもあり、むずかしいのは、自分の好みのタイプとどう出会うか、そしてどう開発するかだ。

2. 君たちはどうクラフトビールを選ぶか

昨年の夏、奥只見湖から魚沼の里へ遊びに行った。
背の高いひまわりが、どこまで続いているのか想像できないくらい一面に満開で、どのひまわりも同じ方向を向いているのだけど、それは太陽の方向とは違った。あれ?ひまわりって、それでいいんだっけ?

その先に、山と一体になったような真新しい山小屋風の建物があり、そこが猿倉山ビール醸造所だった。
車の運転は夫が担当で、せっかくだから飲めば?の一言に甘え、私は昼間っから贅沢なひとときを。

猿倉山ビール醸造所 テイスティング

かなり迷った。どれか一杯とりあえずいただくか、でも、いろいろ味わえる飲み比べも捨てがたい。それもまた、全種類か2種類かとか、お値段と量も気になる。
しかも飲めるのは私ひとりだし。
結果、それもあって長時間ここにいるわけでもないため、好きなIPAを2種類飲み比べでいただいた。
選んだのは、迷うことなく、インディアペールエールと夏季限定の爽やかさが売りのセッションIPA。
やっぱりインディアペールエールの濃さが好き。

それから、12月。
学生時代の友達とLINEで、クラフトビールの話で盛り上がり、東京駅で5年以上〜ぶりに再会した。
周辺を散歩して、改めて東京駅って、実は降り立ったことがなかったんだなと、都会のどこかキラキラした粒感のある空気を感じて、ただ歩くだけで心が踊る。なんだかとっても懐かしい気持ちになった。

そうして、1件目。
ここは友達おすすめの常陸野ブルーイング丸の内。
クラフトビールはたくさんの種類があるので、まずはテイスティングセットをチョイス。
やっぱり、間違いないペールエールと、だいだいエール、そして期間限定のグレフルラガーの3種類。

常陸野ブルーイング フクロウマークのネストビール

まずは香りから気分が盛り上がる。そして、軽めのものから飲み始めるのが大事ということで、やはりグレフルラガーから。
スッキリした軽やかな飲み心地。そして安心のペールエールと、初体験のだいだいエール。
みかんを加えて造っているというので、まさかこれほどしっかりした苦味があるとは。柑橘系の香りと相まって、次の一杯は、だいだいエールを思う存分味わおうと、普通サイズでたっぷりいただいた。

そう。
先述の通り、クラフトビールは種類が多く、選ぶのが非常にむずかしいのだ。もちろん楽しみでもあるのだが、できれば失敗もしたくない。
ここぞというときに、何を頼むのか。そのためにはこういった飲み比べは、とても嬉しいサービスである。

が。

ある程度飲んでくると、これはこれで、とてももったいないことでもあるのだ。3種類も試せてうれしい反面、結局その中でこれ!っていうのに出会ってしまい、他の2種類がまぁまぁな引き立て役のようなものになってしまうのだ。どうもそれ自体を存分に味わえない。
それでいて、好きな味のものは、圧倒的に飲み足りない。

そこで。
同じく12月に近所で開催されたクラフトビールイベントでは、テイスティングセットは選ばない、と心にグッと決めて参加したのだ。
案の定、あった。
どのテントにも、テイスティングセットの文字。
そしてどこも、初めて出会うブルーイング。そして、テイスティングセットを箱持ちしている人々の誘惑。

でも。
ひっそりと固く決意して参加していたので、自分で最初の一杯を選択した。会いたかったヘイジーIPAがあったので迷うこともなく、それはもう大満足。その後別テントも合わせて3杯いただいたが、最初不安があったり、好みかな、どうかなと思っても、しっかり味わうことが大切だとしみじみ思った。
とはいえその後飲んだのは、そもそもどちらも挑戦的なものだった。
一つはホップの代わりにコーヒー豆をビール用に焙煎したという、珈琲屋さんとコラボしたコーヒーエール。見事なくらい、コーヒーの香りがたっていて、面白いけどビールにする意味があるのか?意外にも、ギネスとかの黒ビール的なコーヒー感とはまたちょっと違うなとか。
もう一つはカカオをふんだんに使用した、デザート的なビールというふれ込みのドルチェ。こちらは苦味もあるけど甘みもあるということで、念のためにハーフサイズにした。
あ〜、カカオ。ココアっぽい。
でもやっぱり、ビールにする意味があるのか?というのが、正直な感想で。
高カカオポリフェノール的な苦味と、ほんのりした甘さで、面白いなあとは思ったけれど。
とはいえ、どちらのブルワリーも挑戦的なビールを選んで持ってきてくれたことに、とても感激した。さすがクラフトビールを造る人々だ。無難に向かってない。
今どこかにあるものを造るのではなく、新しいものに挑戦しては、失敗を重ねていただろうし、新しい味を造るって、想像できないくらい難しいのだと思う。

それを考えたら、自分のチョイスがいい!とか失敗!とか、どうでもよい、低レベルな話であって、失敗でもなんでもない。世に出てきた成功の味しか売ってないんだから。
好みはもちろんあるけれど、それ以上に、それ自体を味わうこと。なぜ、どうして含め、味わってみることが大事だと思った。

3. バレルエイジドエールという種類の「バレルフカミダス」をどう飲むか

お正月の話に戻る。
クラフトビールを楽しんで、いつもなら赤ワインにうつるところで、今年は!念願の「バレルフカミダス」を試してみた。

「バレルフカミダス」は、ウイスキーやワインの製造で使用した木樽でビールを熟成させる“バレルエイジ技法”を採用。

この熟成によって木樽に残るウイスキーなどの香りが移り、奥深い香味が生まれるため、より複雑で奥行きのあるクラフトビールが完成します。木樽の種類・状態・熟成期間・ブレンドの配合で味わいが変わるため、醸造所や製品によって味わいが全く異なるのが特徴です。

ビアスタイルは『バレルエイジドビール』と呼ばれ、海外では一般的。ですが、国内ではまだまだ認知度が低く、醸造しているブルワリーも限られています。

よなよなエール公式サイトより

正直なところ、クラフトビールならではの苦味が好きで、赤ワインも辛口重目が好きなので、「バニラのような優しい香りとまろやかな甘み」というのは、絶対に好みではない。
どんなシーンで飲むのがおすすめかについても、

食後にゆったり味わっていただくのがオススメ。木樽由来のスモーキーな木の香りを堪能できるので、ぜひグラスに注いで楽しんでください。

また、カスタードプリンやクリームブリュレなどのコクのあるスイーツと合わせることで、バレルフカミダスのまろやかな甘みを引き立ててくれますよ!

よなよなエール公式サイトより

とあるので、まったくもって、好みと該当しない。
でもでもでも。
ずっと気になっていたから。
公式サイトに、作り方も書かれてて、それはそれはバレル(木樽)探しから始まるという壮大な旅。
さらに最終的に一人あたり24樽のテイスティングをしてブレンドしていくって、えええ〜と思わず叫び声も出せない驚き。

なので、分かっていたよ。分かっていたけれど。
最初の香りと、一口で、無理無理無理って。3回唱えた。
というのも、苦手な甘い香りに加え、黒砂糖的な甘さが広がるのだ。辛口苦み好みの人間が試すものではなかった。
案の定、夫はグラスに少々で終了。妹も少し飲んでいたけれど、このアルコールの強さでかなぁ、なんだか頭が痛いと脱落。

こ、これを私が一人で飲み干す?!そうならないための今日でもあったのに。このNo.59ともう一つ、No.60もあるのに。

ちょっとかなり、うぉ〜と叫びながら、ちびちび飲んでいく。
甘いものと合うって書いてあったし、目の前の洋風おせちの中には、ラム酒漬けフルーツのバターケーキとガトー ショコラもある。

よし。
まずはバターケーキの方から。
ん?! いいねえ。
聞いていた通り、普段ならこういったケーキもあえて食べる方ではないけれど、あう。なんとなく、どちらもすすむ。
ウイスキーにチョコレートみたいな感じかなと予想していた通り、ビールとはいえ、ウイスキーが好きな方には、クラフトウイスキーみたいな新鮮さがあるのではないかな?
(注:ウイスキーも飲んだことはあるけれど、基本飲まないので、あくまでイメージ)

そうしてスイーツと合わせるうちに、No.60の方も開けてしまった。
夫もほんの少しだけ飲んではいたけれど。
私には、まだこの二つの区別がつくほどの味覚レベルはなかった。
あと1本ずつあるので、また来年試してみてもいいかもしれない。または、近いうちに試す機会があれば、その時はまた、全然違う感想になるかもしれない。
結果、赤ワインにうつる暇はなかった。その頃にはおせちもほぼなくなり、格付けも終盤に入っていた。

「バレルフカミダス」には、期待と無理かもを予想していて、どちらかというと思った通りの結果となった。
けれど、この、好きじゃないかもしれないけど、そのものを知りたい、自分で感じたいという想いで、例年の満足できる赤ワインに移行しなかったのはよかった。
新年早々に新しい冒険ができたのだから。事実として体感できたことに、私はとても満ち足りた気持ちでいっぱいである。

そんなつもりはなかったが、元旦にして、既にひとつ、新しい試みが完了しているのだ。
そんなスタートは、生まれて初めてかもしれない。




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