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シンデレラに憧れて〜ある女の子の物語⑤〜

  ある日の夕方のこと。
いつものように、お母さんと晩御飯のお買い物。
その日は、家のすぐ側のスーパーマケットではなくて、商店街の坂を少し上がった所にあるスーパーマーケットへ向かった。

そのスーパーマーケットは、入り口のすぐ右に大きな階段があって、その踊り場にはガチャガチャが並んでいた。
子供にとっては、魔法の箱そのものだ!何が出てくるのかお楽しみ。
期待に胸を膨らませる・・・
だけど、滅多にやらせてはもらえない。

だから、階段でそこで同じように待っている子供たちと遊びながら誰かがガチャガチャをするのを覗き込む。そんなことでも楽しかった。

ルーシーは、その日も、「ここで待っている。」とお母さんに言って階段で遊んでいた。
お母さんが迎えにきても直ぐに気づく様に入口に時々目をやりながら・・・

ひとしきり遊んで、階下に目をやると、お母さんにそっくりな人が通り過ぎていく・・・
でも、ルーシーを呼ばない。

「あっ、気のせいか。」

そう思って階段で遊ぶ。
1人、また1人とお友達は帰っていく。とうとう、ルーシー1人になってしまった。

不安になったルーシーは、お店の中を1周してみることにした。
お母さんがいつも見て回る順路は覚えている。
レジに並んでいる人の顔を覗き込む。いない・・・

「どうしよう。迷子になっちゃったのかな?」

ふと、迷子案内があることに気づいたルーシーは、女性の店員さんのところに駆け寄った。

「お母さんを待っていたけど、ずっと待ってるのに来ないの。」
店員さんは、迷子の呼び出しのアナウンスをしてくれた。

それから、店員さんに手を引かれ、店内をもう1周した。
いない・・・

店員さんも困惑している。

ルーシーは、その時間がとっても長く感じた。
不安で、怖くてどうしようもなかったけど、必死に涙を堪えていた。
店員さんは、ルーシーが不安にならないように笑顔で声をかけてくれた。

2度目の迷子の呼び出しをしてもらい、もう一度店内を1周して入り口のところまで来た時、息を切らしたお母さんが飛び込んできた。

「お兄ちゃんに迎えにいく様に言ったら、近くのスーパーに行っちゃって・・・」
そう言うと、店員さんにお礼を言ってルーシーの手をぐいぐい引っ張りながら帰っていくのだった。

ルーシーは、ホッとするより
「で、なんで私を置いていったの?」
「なんで、お兄ちゃんに迎えにいかせてるの?」
はてな❓で頭がいっぱいのルーシー。

ルーシーは、
「待たせてごめんね。怖かった?寂しかった?」
と言って欲しかったのに・・・

お母さんの胸で泣きたかった、ルーシーの涙は、心の奥深くにしまったままだった。

それからと言うもの、
ルーシーがスーパーマーケットはもちろん、外出先でお母さんから下¥離れることはなかった。

                次回へ続く

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