済州島旅行01.自然と芸術と食を堪能する旅の始まり
今から20年近く前のこと(歳月の流れの速さに、ひぃ~ってなる)、初めての韓国は済州島でした。正確にいうと18年前ですが、ここまで来ると2年の差なんてあってないようなものだと感じます。
22歳の夏(ちなみに心は2歳ほど成長)。
イギリスの大学に通っていたわたしは夏休みで一時帰国し、アルバイトをしてお金を貯めては、今しかできない心躍るような機会はないかと探していました。どうせなら、今まで行ったことのない国へ・・・。
そして見つけたのが、日韓交流プログラムです。
韓国人の旦那くんと出逢ったのもこのときで、その頃の自分は、図らずも大学卒業後に韓国留学するとは思ってもいませんでしたし、まさかのまさか、この人と結婚するとは1ミリたりとも想像していませんでした。一緒に居ると安心感があって楽しい人だなあとは思ったけどね。
ありきたりな表現になりますが、人生ってホント分からないものです。
そんな、わたしにとってはちょっくら特別な済州島。
10年程前に一度出張で来ましたが、会議が行われるホテルにほぼ缶詰め状態。最後の夜に上司から食事のお誘いをいただきましたが、レポートの提出までに時間がないと丁重にお断りをし、中国人の同僚と2人でホテルの鉄板焼きを楽しんだことくらいしか記憶にありません。
そんなこともあり、今回の旅行は行く前からわくわくしかありませんでした。
大快晴(人はこれを猛暑と呼ぶらしい)で迎えてくれた鮮やかな済州島。
この旅では想い出の地も訪れましたが、一番の目的は韓国近代美術の巨匠で国民画家として知られる李仲燮(1916-1956)通りと美術館を訪れることです。
1つの記事に収めるのは流石に無理そうなので、これから数回に渡って、旅行で訪れた観光地と食した料理について綴りたいと思います。第1回目の今回は済州島について――。
自然豊かで長閑な済州島で、芸術に触れながら、現地ならではの食文化を楽しもうじゃないですか。
◇◇◇
済州島
朝鮮半島の南西に位置する済州島は、面積の90%以上が玄武岩や粗面岩などの溶岩類で覆われた火山島です。
独自の美しい景観を形成した、韓国最大の島・済州島。
島の中心にそびえる国内最高峰の漢拏山をはじめ、コムンオルム溶岩洞窟系と城山日出峰は「済州の火山島と溶岩洞窟群」としてユネスコの世界自然遺産に登録されています。
ちなみに、自然以外では済州島特有の海女文化も人類無形文化遺産に登録されました。
そんな済州島の人口は、2024年時点で70万人弱。
漢拏山を中心に楕円形をしている済州島は、大きく分けて北側の済州市と南側の西帰浦市に分かれており、50万人以上が済州市に住んでいます。
今回の旅行では、それぞれの市街地を中心に巡りました。
◇◆◇
◆愛称は「三多島」
済州島は古くから「三多島」の愛称で呼ばれています。
意味はそのまま、多いものが3つある島。
その3つとは、石・風・女性です。
四方を海に囲まれた火山島であることから、石と風が多いのは言わずもがな。女性が多いといわれる所以は、漁に出た男性が荒波にさらわれて帰って来れないことが多かったためといわれています。
なんだか自然の豊かさよりも、厳しさを感じさせる愛称です。
黒っぽい多孔質の玄武岩は島の至る所で見られ、家の塀にもよく用いられています。
玄武岩に囲まれた伝統的な家屋は低いこともあってか、中心部から離れた集落の風景は沖縄に似ているなあという印象を受けました。
◇◇
◆まず思い浮かぶのはみかん
自然豊かな済州島の特産品といえば、みかんです。
済州島は米作には不向きな火山島ですが、様々な努力を重ねて発展したのがみかん農業でした。
現在では済州島の定番土産となったみかんチョコレート。むしろ、初めて済州島を訪れた頃はそれくらいしかありませんでしたが、最近ではみかんをモチーフにしたかわいらしいグッズも数多く販売されています。
◇◇
◆伝統家屋の「チョンナン」と「三無島」
市街地から遠く離れた、みかん畑に面した道を歩いていると、このような入り口を見掛けました。
これは済州島の伝統家屋に使われていたチョンナン(정낭)の名残りで、もともとは3本の木の棒が使われていました。木の棒の置き方により、家の人間が在宅かどうか、不在の場合はいつ戻って来るのかが分かるという優れもの。
アイディアだなあ~と、今回の旅でいちばん感心した済州文化です。
しかし、人がいるかどうかを表示するなんて、「泥棒さん、今がチャンスですよ!」と言っているようなものじゃないかと思ってしまいますが、実は済州島は三多島だけでなく「三無島」という異名も持ち合わせています。
ないものが3つある島。
その3つとは、泥棒・乞食・家の門です。
海に囲まれた荒々しい自然環境で生き延びるには、お互いに助け合うことが欠かせませんでした。そのため、食べ物は分け合い、物は盗まず、泥棒もいないから家を守る門も必要ないという文化が築かれたそうです。
なるほど。
いやぁ、つくづく感心のしっぱなし。
相互扶助の中で互いに信頼し、安心して暮らしていれば、防御の必要なんてないんですよね。
◇◇
◆石で造られたお爺さん、トルハルバン
最後は、済州島の守護神であるトルハルバン(돌하르방)の写真を載せて終わりたいと思います。
済州島に来て、トルハルバンに出逢わずして帰るのは不可能。
そう断言できるほど、空港をはじめ、至る所にこのお爺様はいらっしゃいます。
昔、この石像は地域によって呼び名が異なっていたそうですが、1971年に済州島民俗資料第2号に登録されたのを機に「トルハルバン」に統一されました。
トルハルバンのトル(돌)は「石」、ハルバン(하르방)は「爺さん、翁」という意味で、そのほとんどが玄武岩からできています。
また、トルハルバンは基本的に2体セットで置かれています。見た目は帽子を被り、目鼻立ちがしっかりとした同じ顔をしていますが、よく見ると、お腹に添えた手の位置が左右で異なることが分かります。
トルハルバンの役割は、済州島を守ること。
厄除けとして町や村、建物の入り口に置かれていますが、守護神や宗教的意味合いの他にも、風水上、女性の気が強い済州島ではそのバランスを取るために男性の象徴であるトルハルバンが造られるようになったという説があるそうです。
造られ始めたのは朝鮮時代の18世紀中頃からといわれていますが、起源については諸説あり詳しいことは未だ不明。そのため、この説が事実かどうかは分かりませんが、韓国は古くから風水を基に都市づくりを行ってきましたし、三多島の名称にもつながる、なかなか興味深い説だなと思いました。
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(つづく)
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