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#192 肩の求心性・求心位という考え方
私は、柔道整復師、鍼灸師、
メディカルトレーナーとして
たくさんの方に出会い、
施術をさせていただいておりますが
中でも悩みが多い場所、箇所に
肩関節が挙げられます。
肩関節脱臼、五十肩(肩関節周囲炎のこと)、
腱板損傷、上腕二頭筋長頭腱炎、
関節唇損傷、ヒルサックス損傷、
バンカート損傷など
肩関節には多種多様なケガがございます。
近々では、メジャーリーガーの大谷翔平選手が
左肩関節脱臼による関節唇損傷を修復する
内視鏡手術を受けたことが
記憶に新しいかなと思います。
この中で、いわゆる五十肩や腱板損傷などや
原因が分かりにくい肩関節の痛みに関しまして
上記のような状態にならないために、
知っておいたほうが良い考え方に
求心性、求心位というものがございます。
この考え方は、肩関節と股関節に当てはまります。
どちらも関節の種類は
球関節(股関節は臼状関節ともいう)になります。
ここでは肩関節の求心性、求心位について
考えてみたいと思います。
肩関節求心性とは、
肩甲骨のお皿(肩甲骨関節窩)と
上腕骨のボール(上腕骨頭)の位置関係を
指しています。
骨や筋肉が協調して、ボール(上腕骨頭)が
真ん中に位置している状態を求心位といいます。
この状態が保たれていることで腕を上げたり
回したりと比較的自由に動かすことができます。
求心性という位置関係が
不良になってしまいますと、
上腕骨頭と肩甲骨関節窩の位置がずれてしまい、
痛みやひっかかり、動きの制限が
生じやすくなります。
五十肩はこれだけが原因ではありませんが、
肩を動かす筋肉の問題で求心性が不良と
なっている状態ということができます。
求心位を保つことで、肩関節痛の改善や、
関節唇や腱板などの周囲組織の損傷を
予防することができます。
求心位が崩れる原因としましては、
以下のようなものなどが考えられます。
・腱板や関節唇の損傷や拘縮
・肩甲骨周囲筋機能不全などの運動機能の障害
・筋の炎症
・体幹や下肢の機能低下
肩関節の求心位を保つには、
肩甲骨の動きが重要となってきます。
肩関節には、肩甲上腕リズムという
考え方がありまして、
このリズムが乱れてしまいますと
肩関節の求心位を保つのが
難しくなってしまいます。
上肢を挙上する際には、
肩甲骨が上腕骨と無意識に一緒に動いて
求心位を取る肩甲上腕リズムが働いています。
現在の生活習慣で多い、
パソコン作業やスマホの使用などは
肩甲骨の位置異常(巻き肩など)や肩甲骨の動き、機能制限などが助長されやすいため
より注意が必要になってくるかと思います。
肩関節の安定には、回旋筋腱板と呼ばれる
インナーマッスルも重要な役割を果たしています。
回旋筋腱板には、棘上筋、棘下筋、小円筋、
肩甲下筋の4つの筋肉があり、
関節を安定させることで円滑な関節運動を
可能にしています。
肩関節の求心性、求心位を
正常に保っていくためには、
肩甲骨の位置や回旋筋腱板という筋肉を
機能させることがまず大切になります。
ただ、肩甲骨の位置を正しくしていくためには、
身体全体のバランスを
気にしていかなければならなかったり、
回旋筋腱板の筋肉をただ鍛えれば
いいわけでもなかったりします。
肩関節を良くしてためには、肘関節や手関節の
状態も合わせて気に掛ける必要があります。
また、肩甲骨は脊柱との親和性が高いため、
脊柱の状態も気に掛ける必要が出てきます。
脊柱は骨盤や股関節との関係性がありますし、
骨盤や股関節は膝関節や足関節との関係性を
無視するわけにはいきません。
つまるところ肩関節を良くするためには、
身体全体のバランスが大切になります。
まずは、肩関節の求心性、求心位について
頭の片隅に入れておいていただければ
嬉しく思います。
肩甲上腕リズムや回旋筋腱板に関しまして
こちらの投稿も参照していただけると幸いです。