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#154 成長期に要注意な野球肘①

現在、メジャーリーグには大谷翔平選手や
ダルビッシュ有選手など
多くの選手が活躍しており、野球は日本でも人気のスポーツのひとつであります。

お子さんたちが野球をしていく中で、
とても注意しなければならないケガに
野球肘がございます。

野球肘とは、
野球の投球による肘部の障害をいい、
特に肘の内側の痛みを野球肘と
総称しておりますが、
テニスやゴルフなどのスポーツでも発生する肘の痛みを伴う運動障害のことをいいます。

また、小学生や中学生などの
成長期にたくさんボールを
投げすぎることによって起こる
肘の障害をリトルリーガー肘ともいいます。

野球肘は、大人にも起こる
肘の障害でもありますが、
成長期に発生する野球肘は、
肘が伸びにくくなったり、
曲がりにくくなったりと、
日常生活にも支障をきたす
恐れがありますので、
注意が必要になります。

成長期の子供たちの多くは、
痛いところがあっても、
それを親御さん、監督、コーチ、
顧問の先生に伝えてしまうと、
練習を休まないといけない、
試合に出させてもらえない、レギュラー、
スタメンから外されてしまうのではないか、
などの不安を日々抱えており、
野球肘の発見、対応が
遅れてしまったがために、
肘が曲がりにくくなってしまう場合や、
伸びにくくなってしまう
危険性を孕んでおります。

野球肘の原因の原因には以下のようなことが考えられます。

① 練習のしすぎ、オーバーワーク
② 柔軟性の低下
③ 投球フォームの乱れ

野球肘には、以下のような
3つのパターンに分類されます。

①肘の内側が痛くなるパターン
②肘の外側が痛くなるパターン
③肘の後ろ側が痛くなるパターン

今回は①肘の内側が痛くなるパターン
について綴っていきたいと思います。

① 肘の内側が痛くなるパターン
内側型が最も多く、
後期コッキング期から加速期にかけて
肘にかかる強い外反ストレスに対し
前腕回内屈筋群が強く収縮することにより、
前腕回内屈筋群が柔軟性を失い硬くなり、
また、内側上顆や内側側副靭帯により
強い引っ張りのストレスがかかり、
過度な牽引力が肘内側に加わると、
内側上顆骨端離開、内側側副靭帯損傷を
生じる可能性が高くなります。

内側型の症状としましては、
内側上顆部や前腕回内屈筋群の疼痛、腫脹、圧痛、軽度の肘伸展障害、投球動作の時に
痛みなどがみられ、
内側上顆炎、内側上顆裂離骨折、
前腕回内屈筋群・内側側副靭帯損傷や
その引っ張りによる裂離骨折などが
考えられます。
(成長期の場合は、骨端核の肥大、
分節化、骨端線離開)。

初めのうちは、多少痛みがあっても
投げられる状態を繰り返していますと、
やがて肘の内側の組織の損傷が
進行してしまい、最悪の場合、
全く投げることができないところまで
悪化してしまうことがあります。

将来的には、肘関節不安定症(内側側副靭帯損傷時、外反不安定性が著明)や
遅発性尺骨神経麻痺(肘部管症候群を含む)の発生もありうるので、
注意が必要となります。

内側上顆炎の場合は、
日常生活において物を持ち上げたり
力を入れたりする動作で痛みを
強く感じたりします。

内側型の症状では
約3週間の投球禁止期間を取ることにより、症状が軽快することが多いとされています。

ただし、内側上顆骨端離開ではより
長い投球禁止期間が必要になってきます。

野球肘に対する予防対策としましては、
早期発見、早期治療が
大切になってきますが、
まず野球肘とならないためには、
過剰投球にならないように、
チームの監督、コーチ、顧問の先生、
ひいては親御さんを含めた練習量の管理や
投球フォームの見直しなどが
必要になってきます。

球数制限に関しましては、全力投球数は、
小学生では1日50球程度、週200球、
中学生では1日70球程度、週350球、
高校生では1日100球以内、週500球
を超えないことが提案されております。

ただ、この考え方は、
練習・試合での全力投球であるため、
ブルペンなどでの投球練習は
含まれておらず、高校生では、
公式戦に関しては該当しますが、
練習試合に関しては考慮されて
いないようなので、
練習試合も含めて考えておかないと
形骸化しまうおそれがあります。

子供たちは、今この時に
全力を注いでいる気持ちもわかります。

ただ、一人でも多くのお子さんが長く、
そして楽しく野球を続けていくためには、
球数制限、投球フォームの見直し、
積極的な休息、身体のケアなどを
一緒になって考え、話し合っていくこと
こそが最大の予防対策になるのでは
ないかと思います。

野球肘をはじめとした肘のケガや痛みは、
シンプルな肘な問題だけでなく、
肘関節の上下にあります
肩関節、手関節の問題や
股関節を中心とした下半身と上半身の
連動性の破断などが要因となることも
考えられますので、
痛みを痛みだけと思わず、
もっと大きな視点で物事を
捉えていくことが大事になるのでは
ないかと思います。