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ドイツ 残業するのは無能な証拠か?

僕がまだTwitter(現在のX)を利用していた頃、とある欧州在住日本人がTwitterに

欧州では残業するのは無能な証拠

という趣旨の投稿をしていました。

最近、この投稿の内容「残業するのは無能な証拠」について改めて考える機会があったため、ここで僕の見方をまとめてみたいと思います。

まず、この「残業するのは無能な証拠」というのはあまりにも極端な表現なため、僕はこの見解を文字通り受け入れることはできません。

ドイツの場合、雇用契約書には例えば1週間の労働時間が数字で明確に記載されています。また、1日の労働時間はかなりきちんと管理されています。大抵の場合、まだ仕事が終わっていなくても、1日の労働時間が終われば仕事を途中で打ち切りにして定時退勤します。

しかし、特殊な技術を要する職業・比較的職責の重い職位の人の場合は、勤務時間が終わったら即退勤、というわけにもいかず、超勤しなければいけないこともあります。そうは言っても、法律で認められる超勤は2時間までで、それ以上勤務しても勤務時間として計上されません。


さて話は少し変わります。僕が学生の時、僕の学位論文の指導を引き受けてくれた某教授は、口癖のようにこんなことをよく言っていました。

名将は兵を疲れさせず

つまり、良い上司というのは部下を疲れさせない・過度なタスクを部下に依頼しないということです。残業について述べれば、良い上司は部下に残業させない・残業させないように業務を差配するということです。

この「名将は兵を疲れさせず」という言葉から考えると、なるほど場合によっては残業しなければならないことはあっても、自分の部下に残業をさせるような過度なタスクを部下に依頼する上司は無能と言えるだろうと僕は思います。

自分自身の職責を全うするための残業は場合によっては仕方ないとして(例えば心臓外科医が手術が長引いたとしても手術途中で退勤はできない)、上司に依頼されたタスクの量が残業を前提としたものであった場合、それは自分自身の問題ではなく、タスク管理のできない無能な上司が問題だということです。

また、その無能な上司が自分自身でも残業していることをあからさまに部下に見せてしまうこともまた、無能な上司の典型的な仕草のように僕は思います。

残業が前提になっているタスクやプロジェクトは、タスクマネージメントの観点から、すでにプロジェクトとして破綻しています。

以上のような見方から言えるのは「残業するのは無能な証拠」ではなく

部下に残業させる上司は無能

ということだろうと僕は思います。これは、ドイツ(あるいは日本)に限らず世界中どこでも当てはまるでしょう。また、昨今話題になることが多いブラック企業のあり方を考えると、残業する側ではなくさせる側に問題があることは明確に理解できるでしょう。

名将というのは兵の動きや働きをよく理解しており、兵に依頼する労力は最小に、しかし得られる結果は最大になるよう戦略を練ることができる人のことです。戦略を練るためには組織全体を見通し、時には戦略の成功のために大きな決断を下せる知識と経験が必要です。知識と経験は天から降ってくるものではなく、日々の勉強と訓練によって獲得するものです。名将・良い上司というのは、したがって大抵の場合は勤勉で好奇心旺盛であり、また他者の意見や批判に耳を傾け自分自身を常にアップデートする人が多いように僕は思います。