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精神障がいとリカバリー

 リカバリーの概念は米国の当事者によるセルフヘルプ活動を背景・源流に持つ。例えばパトリシア・ディーガンは「障がいに立ち向かい人生の意味を再構築することであり、地域の中で働き、愛し、貢献することである」とした。また香田真希子は、「体験に即した人生の意味づけの過程である」と述べ、それは定義づけが出来ないと結論づけている。ニュージーランドの精神保健委員会は「病気が治ることではなく、それによって失なわれたものがあってもよく生きてゆくことができること」としている。
 我が国では「就労こそが社会復帰である」慣習概念が先行したが、やどかりの里では、①住む場所、➁働く場、➂憩いの場、づくりを進めてきた。それは経済的自立や就労にすべてを求めない考え方である。浦河べてるの家では「降りてゆく生き方」が提唱されている。
 就労、や社会の通常の既成概念に従って立派に生きてゆかなければならないという脅迫が我々を支配するが、感染症拡大の中、精神障がい者が突きつける現実からは、必ずしもそう生きるのではなく、当事者なりに生きる意味を自ら見出し、存在を肯定される社会の中での居場所の確保や、精神障がい者を含めて、誰もが生きいて本当にいいなと思える、人間関係の在り方へのシフトが提案されているのではないだろうか。

参考:「精神障害を生きる」生活書院、駒澤真由美

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