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フリーランスで私らしく生きていく。


 
働き方が多様化している近年、会社勤めではなく、場所にも時間にも縛られない「フリーランス」に憧れる人は多いのではないでしょうか。今回は、何度も転職を経験し、フリーライターになって今年で18年目の江角悠子さんに、「フリーランスで生きていく」ことについてお話を聞かせてもらいました。


フリーライターの、ある一日

江角さんは、毎朝6時から6時半の間に起床。8時に小学生のお子さんを学校へ送り出し、取材がない日は、自宅から10分ほどの場所に借りている事務所へ向かいます。
 
朝一番の仕事はメルマガの原稿を書くこと。これは、もう生活の一部と言えるほど、習慣となっているそうです。江角さんのメルマガには、書くことについての有益な情報が惜しげなく載っています。そのほか日々の気付きや学びなどが軽やかな文体で語られ、「こういうことが言いたかった」とか「こんなふうに思っていた」など、言葉にできない思いを言語化してくれて「読んだ後、心がすっと軽くなった」とファンも多いのです。

 気が向いたときに書いているというThreads(スレッズ)の文章には、その日に見た夢の話がよく出てきます。常に枕元に「夢ノート」を置いていて、起きて直ぐ忘れないうちに夢の内容を記しているそうです。「夢で見たぼんやりしたイメージを書きだすことは、言語化の練習にもなる」と江角さんは言います。ライターとして長年のキャリアを持っているにもかかわらず、今もなお自身のスキルアップのために努力されていることに驚かされました。
 
事務所にいる9時〜17時頃までは、原稿を書いたり、講座の準備や課題の添削をしたり仕事をします。夜は家で家族とテレビを見るなどのんびり過ごし、10時にはベッドに入るそうです。
 
「フリーランスは健康第一なので、睡眠時間はしっかりとるようにしています」と江角さん。

 

ビーサン、自転車スタイルで事務所に向かう江角さん Instagramより


一から作っていく楽しさ

フリーランスは会社員と違って、毎月決まった収入があるわけではありません。自分で仕事を取ってくるなど動かないと何も始まらない。そのことが精神的にプレッシャーにならないのでしょうか。
 
「やったらやった分、自分に返ってくるのが楽しいです。失敗しても成功しても全部自分の責任、というスタイルが私には合っていたようです。以前勤めていた会社では、こうした方がいいと思って提案しても受け入れてもらえないこともあり、決まったやり方でしか仕事ができませんでした。納得できないままやりたくないことを続ける日々に、『私の人生って何だろう』と思い悩んだ時期もありました。その時と比べると、今はすべて納得したうえで仕事ができるので、毎日心健やかに過ごせています。フリーランスになって、私は初めて仕事の楽しさを感じられるようになりました。今では、週が始まる月曜日の朝が一番わくわくしています!」
 
フリーランスになりたいけど一歩踏み出せずにいる人にとって、江角さんの言葉は希望になりそうです。

また、収入面についてどう思っているか聞いてみたところ、「危機感は常にあります。実は今もあまり良いとは言えない状況なんです(笑)。でも、本気で困って動いていると、必ず次のアイデアが出てくるもの。その結果、仕事の幅が広がることもあるので、切羽詰まることも悪いことではないと思っています。私もそうですが、人は本気で困らないとなかなか動けない。困っているけど動けないという人は、実のところ本気では困っていないのかもしれませんね」
 
「募集の告知文を変えたら問い合わせが増えたとか、アフィリエイトをやってみたけど私には合っていなかったとか、一つひとつ試して自分に合ったやり方を見つけていくことが、まるで実験みたいでおもしろい」と、自分の手で作り上げていく過程をも楽しんでいるようです。


どこでも自由に仕事ができるフリーランス Instagramより


柱をいくつも作れるのが、フリーランスの良さ

江角さんの仕事の割合は、講師業70%、商業ライター20%、その他(私設図書室運営、チャネリングなど)10%、だそうです。

「フリーランスのおもしろいところは、収入の柱をいくつも作れるということだと思います。会社員の場合、もしそこがなくなったら収入を断たれてしまいますが、柱がいくつもあれば、どれかがうまくいかなかったとしても他でカバーできます。たとえば1件1万円の仕事だとしたら、月に10件の依頼があれば10万円になります。このように、それぞれの柱はそんなに大きくなかったとしても、合わせて考えればいいのです」
 
これから、江角さんがどんなふうに柱を大きく、また増やしていくのか、とても楽しみです。

事務所での仕事風景   Instagramより


 

学んだことをお金に変える

江角さんはこれまで、さまざまな講座やセミナーを受講してきたそうです。そこで心がけているのは、受講して終わりではなく、講座費用を払ったからには「払った分は回収する」こと。
「学んだことを活かして、どうやったらお金に変えられるか、いつも必死で考えています。そうしないと1円も入ってこないのがフリーランス。そこが会社員との一番の違いだと思っています。フリーランスになってからは動いた分はお金に変える、という意識を持つようになりました」
 

フリーランスか、会社員か。白黒つけなくてもいい

江角さんは自身がフリーランスになったからといって、会社勤めを否定するのではなくフリーランスを推奨するわけでもなく、「自分に合った働き方をみつければいい」と言います。
 
「私はむしろ、会社勤めをしながら副業をするのが一番いいのではないかと思っています。いきなり会社を辞めてフリーランスでスタートするのはリスクも大きいので、まずはお試しで副業からやってみる。うまくいったらスライドさせるくらいがいいのではないでしょうか。とりあえずやってみることで、仕事も人間関係も芋づる式でつながっていくような気がします」
 
江角さんが主宰するオンラインサロンに、「書くことをしたいけど、フルタイムで働きながらはきつい」という理由から転職活動を始めた方がいたそうです。その方は英語も好きなので、「書くこと」と「英語を使えること」という条件に絞って探したところ、見事希望の仕事ができる会社から内定を頂いたと。
 
その方はフリーランスではなく、「会社の中で自分のやりたいことを叶える」という選択をされました。それもまた、自分のやりたいことを叶える一つの方法ということです。
 

仕事、すなわち、その人の生き方

江角さんのお話の中には、現代を生きる知恵のようなものがたくさん詰まっていると感じました。
 
フリーランスであれ会社員であれ、仕事が楽しいと感じられれば、それがベストです。その形態はどうであってもよく、江角さんにとっては、今の仕事のやり方=フリーランスが合っていたということ。それもまだまだ進化中!
 
今回江角さんにお話を伺って、「どんな仕事をしているか」「どう働くか」は、そのままその人が「どんな人生を歩んでいるか」に直結することが分かりました。もしいま自分の仕事や人生にモヤモヤを感じている方は「自分が本当はどう生きていきたいのか」を一度じっくり考えてみることから始めてみるといいのかもしれません。

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インタビュー記事の裏話を書きました。 
 


Profile


江角悠子さん
京都在住エッセイスト・ライター。「書いて、しあわせになる」をテーマに活動中。同志社女子大学非常勤講師。雑誌『婦人画報』WEB「京都おつけもん探訪記」等で記事を執筆。書籍「亡くなった人と話しませんか」(10万部突破)「星のビブリオ占い」構成担当。京都ライター塾を主宰。「お手紙チャネリング」でインナーチャイルドからのメッセージを届ける。出町柳にある洋館の一室で「私設図書室」を運営。

自主制作ZINE『文章を書いて、生きていきたい』『わたしは、まじめちゃん』オンラインショップで販売中。


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