アップルパイと作る喜び
私は家庭で時々料理をするタイプである。一人暮らししていたこともあり、料理することに抵抗がない。
冷蔵庫の中にある食材を見て、メニューを考え料理する人にすごく憧れる。そこまでの芸当は持ち合わせていない。妻はそれが出来てしまう。私はというと、メニューを決め、冷蔵庫を覗き、足りないものを買いに行って初めてスタートラインに立てる。
そんな私は昨年からこの時期になると決まって作るものがある。それはアップルパイだ。
昨年から大量のリンゴが送られてくる。昨年は自宅に15、6個のリンゴが届いた。送り主は弊社の代表である。
今年は社員も増えたため、事務所に届いたものをみんなで分けた。それでも1人あたり7個ぐらいだ。一人暮らしをしている社員にはすごいボリュームだ笑
純粋に皮を剥いて、切って食べたら良いのだが、使い切るためにアップルパイを作ったら家族に好評だった。
そんな話を、事務所内でしたらみんなが興味を持った。
女子社員から
「え?アップルパイ作れるんですか?」
俺は昨年のアップルパイの写真を見せる。
「すごぉーい!!美味しそう!食べたいですっ!」
「えぇ?食べたいの?まぁ、作れるけどぉ…忙しいからなぁ〜」とハスってみたが、内心嫌な気がしない、、、寧ろ嬉しいぃ…!!
スイーツを作って振る舞う人ってこんな気持ちなのかな?と勝手に想像する。
家に帰って、その話を妻にすると、
「そんなの社交辞令でしょ?真に受けて、作って持っていたら『マジで作ってきたよ、コイツ』ってなるわよ」と。
言い過ぎじゃねぇ?作る意欲を削がれる。
確かに"手作り"っていろんな意味合いを持たせる。
昔、バレンタインのチョコは気になる子からという条件はあるが"手作り"は嬉しかった。逆に"手作り"に抵抗を感じることもあるのだ。
おじさんが作ったアップルパイって食べたいか?寧ろイヤじゃないか?
こうなると、自分の性分で完全に客観視が邪魔をする。
作った方がいいのか作らない方がいいのかわからなくなる。めんどくせぇ悩みが芽を出した。
後日、リンゴの話になった。美味しくいただいた、まだ食べてないなどの話題の中で、
「そういえばアップルパイって作ったらマジで食べる?」と質問した。「もちろんいただきますよ!」と即答だった。そもそもこの質問する俺も恥ずかしい。
この言葉を素直に受け止めたらいいのに、妻の
『マジで作ってきたよ、コイツ』が呪文のように俺を苦しめる。
作っていいんだよね?食べるって言ったもんね⁉︎と何度も何度も確認したくなる衝動を抑えようとした。
とりあえず、作ろう。
作ってから渡すかどうか考えよう。
アップルパイ作りは2年目。慣れたものである。
こういう時しか使わないグッズを駆使して、中身を作る。便利なものである。
業務スーパーで買ったパイシートで包み、オーブンレンジ200°で20分焼いたら、出来上がりである。
心なしか昨年よりも要領よく作れた。上達ってやつだ。
取り憑かれたようにアップルパイを作った。
意外とリンゴを消費しきれない。パイシート1枚で2個作れるため、18枚使って結局36個のアップルパイを焼き上げた。笑
家族には好評で美味しく食べてくれた。正直そこはもういい。
俺にとって大事なのは、職場に持っていくか否かだ。
その頃にはせっかく作ったんだから持って行こう。お口に合わなければ、持ち帰ろうという気持ちになっていた。
にしても、これは張り切りすぎではないか?
おじさん頑張って作っちゃったなぁー感が否めない笑
結果、みんな喜んでくれた(ように俺には見えた笑)もちろんいただきますよ!と言っていた女性社員は3、4個食べてくれた。
幸せな気持ちになりましたという言葉をかけてくれた。
内心ホッとしたし、嬉しかった。
仕事以外でこんな気疲れするならアップルパイの話なんて出さなきゃ良かったとも思った。ただ、作って喜んでもらえるなら作り甲斐もあるし、また作ろうと思う。
行きにアップルパイを入れたタッパーが帰りは軽いのは入っている入ってないの問題ではない。重い気持ちが喜びで軽くなったからだ。
来年もアップルパイを作ろうかなぁ