新卒で入社した会社の話15
なんの希望もない、社会人3年目の春を迎えた。
4月という時期が多少ウキウキ感じることができるのは、学生時代の贅沢なのかもしれない。
社会人生活2年を終えて、私の身体は心も体もボロボロ状態だった。
自分の中から、前向きな要素が全て奪われた。人を信じるということがなくなった。今は社内の人間を見たら、みんな地獄へ送りたくなる。
体重も、社会人1年目の春から10kg落ちた。当初与えられていた制服がブカブカになっていた。おまけに手の震えも止まらなくなっていた。座り仕事だからかわからないが、すぐに息が上がり、外出してもずっと歩き続けられなくなった。
ある時、トイレですれ違った営業の女性の社員が言った。
「ファーファちゃん、どしたんこんなにブカブカで」
「なんなんでしょうね苦笑」
このことは親も気づいていたみたいで、すごく心配していた。
自分も気づいていた。「鬱」ってやつなんだろうと。
もう何かのきっかけがあったら、絶対辞めるって言おう。
そんな矢先の5月。
出社すると開口一番、課長の酷(ひど)から声をかけられた。
いや、呼びつけられた。
「昨日の集金分、どうして回収できていないの?」
「え?すみません、なんのことですか?」
「なんのこととかあるかいや!!」
本当に思い出せなかった。昨日自分が営業から頼まれた集金は全て終えた。
「関谷のができてなかったんだよ」
合点が言った。
あぁ、椎村が頼まれていたものか。。そうか、椎村がただ受け取り、処理するのは私って思われてるんか。受け取った人が暗黙の了解でするものなんだけどな。。
椎村は絶対この酷からの説教が聞こえる位置にいた。気づかないふりして仕事をしていた。
この二人、本気で殺してやりたい。もう捕まってもいい。
と同時に、冷静にもなれた。
うん、もう辞めるっていうネタもできたしいいや。
「すみません、処理できてませんでした。すぐにします」
その後、休憩室で関谷が異変に気付いたのか、声をかけてきた。
「ファーファさん、あれ、どしたん?」
別にファーファが原因ではないんだろ?という意味合いで言ってきているのはわかっていた。
だけどもういいの。明るく言った。
「あぁ、あれ、椎村さんがすると思ってたんですけどね、どうやら酷さんには私のミスって思われてたみたいで。あはは。」
「そうか。まぁ気にせずね」
やり取りはたったの3分だったが、多少救われた思いがした。
帰宅後、母親に言った。
「母さん、私もうあの会社いたら体持たんわ。辞める」