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魅入られた接尾辞【日曜英語史クイズ13】
クイズ
規則動詞に ed 語尾が付くと、過去形・過去分詞を作ります。さて次にed 語尾の過去分詞を含む語を挙げました。ただし1つは過去分詞ではありません。それはどれでしょうか?
ヒント:各語を3つのパーツに分解して、中央から始めてどう派生していったのかを考えると謎解きを楽しめると思います。
disabled
family-oriented
open-minded
undoubted
X の回答
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クイズの答え
正答は3【open-minded は過去分詞ではなく名詞+ed語尾である】で、正答率は53.8%でした!
では、中央(あるいは語基)から始めて、育った順に①から③の番号で示します。
disabled「能力を奪われた」初出1598年
②dis + ①able + ③ed
②接頭辞(動詞に変える)+①形容詞+③過去分詞語尾family-oriented「家族志向の」 初出1949年(oriented 1925年)
③group + ①orient + ②ed
③名詞 + ①動詞 + ②過去分詞語尾open-minded「心の広い」初出1748年(minded 1503年か)
②open + ①mind + ③ed
②形容詞 + ①名詞 + ③名詞語尾(名詞・複合語を形容詞に変える)undoubted「疑う余地のない」初出1460年頃
③un+ ①doubt +②ed
③接頭辞+ ①動詞 +②過去分詞語尾
普段は一瞥して済ましているような語も、こうやって立ち止まってじっくり観察してみると、別々の育ち方をしていることが分かります。
服の袖に乗った雪の結晶を見るようです。
ed 接尾辞
ed 接尾辞は規則動詞に付いて過去形、過去分詞を作りますが、それだけではありません。talented「才能のある」や open-minded のように名詞・複合語に付いて形容詞を作ることもあります。
現在、複数の機能を担う ed 接尾辞ですが、もとは形態が区別されていました。
古英語期には、名詞・複合語を形容詞に変える接尾辞-ede がありました。動詞の過去形接尾辞も同一の形態でした。一方、過去分詞は-edでした。
これら3種類の異なる接尾辞が、近代英語期が始まる頃には同一の形態-edに収斂しました(中尾俊夫「英語史II」(1972) 811.2、荒木一雄・宇賀治正朋「英語史ⅢA」(1984) 3513.1)。
![](https://assets.st-note.com/img/1738444085-bBnW0fGN7FCe4gJRstaQuSI8.png?width=1200)
このうち、たとえ同じ形態であっても、2「過去形-ed」と3「過去分詞-ed」の2つは明瞭に区別できます。しかし3「過去分詞-ed」が動詞というよりも、むしろ形容詞の領域で使われるようになると、3「動詞を形容詞に変えた-ed」と1「名詞を形容詞に変えた-ed」の違いは不明瞭になるのではないでしょうか。
しかし、違いなど意識しないほうが自然なのだとも言えましょう。なにしろ形容詞は動詞と名詞の間に広がる空なのですから。
あるいは、動詞を形容詞に変える-ed も、名詞を形容詞に変える-ed も、その空に魅入られて同じ姿になってしまったのか、とも夢想します。
見上げると ed 接尾辞に冬の陽が反射しています。