ウムラウト i-mutation【日曜英語史クイズ1】
クイズ1
言語の音の変化の一つに「ウムラウト i-mutation」があります。次の各ペアの単語と矢印はウムラウトにより音が変化したことを表しているのですが、このうち誤っているものが1つあります。それはどれでしょうか?
ちなみにウムラウト i-mutation とは「5世紀以降生じたとされる、強勢のある語幹母音が次の弱勢のi音にひきつけられる現象」です。例えば複数形 feet と単数形 foot は、次のように音変化しました。
fēt(複数形)← fōt(単数形)-iz(複数形語尾 )
men ← man
length ← long
fill ← full
raise ← rise
X で集まった回答
クイズの答え
答えは 4【raise ← rise】がウムラウト i-mutation ではありませんでした!
men(複数形) ← man(単数形)
length(名詞) ← long(形容詞)
fill(動詞) ← full(形容詞)
【ウムラウト i-mutation ではない】 raise(他動詞) ← rise(自動詞)
次に1から3番の「現在の語形 < 昔の語形」を示します。
men < *mann-iz(複数形語尾)
length < *laŋg-iþo(形容詞から抽象名詞を作る語尾), long < laŋgaþ
fill < full-jan(動詞語尾)
後ろにある/i/, /j/音が、前の母音の舌を引きつけるウムラウトを経たのが現在の語形ということです。
<iに引きつけられる舌位置の図>
i y ← u
↖︎
e ← o
↖︎
æ
↖︎
a
1~3番は以前は語尾に/i/, /j/音があったものの、前の母音を同化させた後に姿を消したとされていて、2つの語の間の見えない結び付きがよく分かります。
しかし4番目のペアはこの関係にありません。音変化どころか、一方から他方が生じたなどの直接の関係性がありません。raise と riseは、例えていえば自分たちの親が兄弟にあたる従兄弟の関係というところが「面白ポイント!」です。
r-A → rise
r-B → rear
r-C → raise
参考:寺澤芳雄『英語語源辞典縮刷版』(1999)