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【事例紹介】退院後の"介護医療院"という選択肢

ご質問: 
「ゴルフ好きで元気だった80代の父が、腰の圧迫骨折で救急病院に入院し安静を保って治療している間にどんどん体力が落ちてしまいました。今ではベッドに寝たきりで、食事も口からは摂れず経管栄養に。入院して3か月が過ぎたため、主治医からは「胃ろうを作って特別養護老人ホームへ入ってはどうか」と言われましたが、なんとかもう一度、少しでも口から食べれるようにさせてやりたい。特養以外に退院後に頼れる医療機関はないものでしょうか。」

高齢者の場合、もとはお元気であっても数か月ベッドでの生活をしている間にどんどんと体力が落ちてしまうということはよくあることです。

しかし、満足なリハビリもしてもらえないまま特別養護老人ホームへと言われてもご家族としては釈然としないのもよくわかります。

もしかしたら救急病院ということで十分なケアがしてもらえないなか誤嚥性肺炎などの心配もあって経管栄養になってしまっているのかもしれません。詳しいご病状を確認しなければ一概には言えないものの、口から食べるトレーニングも試みることができるといいですね。

今回は救急病院での治療が終わったのち、転院できる可能性がある病院として「介護医療院」をご紹介します。

介護医療院というのは、救急病院のように治療に特化したものではないかわりに医学的管理を行いながらもケアをしっかりとしてくれる療養ができる病院のことで介護保険サービスに位置付けられた病院のことです。

これまで「療養病床」とか「介護力強化病院」と呼ばれていた医療機関が、介護保険制度のもとこうした名称で呼ばれるようになりました。

ケアの中身は医療機関ごとに異なりますが、専門のリハビリスタッフを常駐させ、身体のリハビリや嚥下のリハビリに力を入れているところも多くあります。

また急性期(救急病院時)にはベッドで寝かされきりだった高齢者を、日中はパジャマから着替えて車いすや椅子に座れるようにし、少しでも日常生活に近づけるよう生活リズムを整えてくれるような取り組みをしている病院もあります。

いずれも急性期の治療が終わった患者さんを受け入れており、数か月以上の単位で入院させてくれますので、高齢者にふさわしいゆっくりとした療養環境で生活リハビリができる可能性が高いといえます。特別養護老人ホームというのはあくまでも自宅に代わる「生活の場」。リハビリテーションを専門にやってくれるところではないので、ついこの間までお元気だったというのであれば尚更、一度介護医療院で回復の可能性にチャレンジしてから入所を考えてもよろしいのかと思います。

また別の方法として胃ろうを作る目的で、もう一度別の一般病院に転院されることも検討できるのではないかと感じました。

というのはご相談をお聞きしていて、急激に体力が落ちた状況についてご家族として今の医療機関に少なからず疑問や不安をお持ちでおられることを感じたからです。

入院中に主治医や医療機関に向かっての苦情は言いにくいものだと思いますが、たまたま現在入院している病院がご相談者様(子どもさん)宅からは遠方のようですので、例えば「もっと見舞いに行きやすい場所に転院させたい」といった理由にして転院先を角が立たないように探すという方法もあるのではないかと思いました。

こうした場合、転院先への入院理由が何かなければいけませんので、胃ろうを作る手術を現在の医療機関で行わず、転院先で検討するというようにすればよいわけです。

口腔ケアに力を入れているような医療機関であれば「口から食べれるようになってほしい」といったご家族の希望に対して、本当に経口摂取が不可能なのかどうかもう一度テストしてくれますし、先々の転院先としての介護医療院などを一緒に探してくれる医療相談員もいるはずです。不信感を持たざるを得なかった現在の入院そのものを仕切りなおすという考え方も、ひとつあるのではないかなと感じた次第です。

高齢者の場合、ちょっとした病気やケガが引き金となって寝たきりになってしまう例は決して少なくはありません。そして一度寝たきりになってしまうと、若い人のように回復することはとても難しいものなのです。

しかしそのような現実であっても、出来ることを色々試してみた結果ダメだったということならばご本人もご家族も納得がいくのではないかと思います。

良い医療やケア、リハビリに出会えて少しでも回復できることがあったならば大変喜ばしいわけですので、救急病院のあとの介護医療院という選択肢を是非検討なさってみてください。

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