「承認欲求との上手な向き合い方」ある園長先生の心に響く名回答を紹介
「承認欲求が強い保育士の対応をどうしていますか?」という問い合わせがありました。
自分のことを認めてほしいという欲求が人一倍強い人に対してどう接していくかという問題かと思いますが、これに対して横浜のある保育園園長先生がとても心優しい回答をしてくださったのでご紹介したいと思います。
以下は、園長先生のより詳しいアンサーの言葉です。皆さまのご参考になれば幸いです。
承認欲求はよく機能すれば人を成長させる源になるもの
承認欲求とは「自分を価値のある存在だと思いたい」「他者から認められたい」という願望のことで、ちょっと難しい話になりますが、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した人の欲求5段階説の中に出てくる言葉です。
彼の法則によれば人間の欲求にはまず「生理的欲求」があり、次に「安全の欲求」「社会的欲求(所属と愛の欲求)」と続き、次に出てくるのが「承認欲求」、最後に「自己実現の欲求」というふうに進んでいきます。
前段の欲求が満たされて初めて次の欲求に移行することから、最上階の自己実現の欲求に至るためには承認欲求がしっかり満たされなければならないことになります。
インターネットなどを検索すると承認欲求のまずさだけが殊更クローズアップされて問題視されがちなんですけれども、確かに度が過ぎると自信がない、周囲からの評価ばかりが気になる、人の話を聞かずに自分の意見ばかり言う、などの性格特性(デメリット)があるわけですけれども、人というのは社会的な動物ですから多かれ少なかれこういう気持ちは誰もが持っているものだと。
その気持ちがあればこそ人は成長するものだと私は理解しています。
保育士さんはいつも子どもの承認欲求を満たしてくれている存在
そしてこれは私の現場感覚なのですが、保育士さんというのは、それこそ発達途中の子どもたちの溢れんばかりの承認欲求に日々応えてくれていますよね。
「先生これ見てー」「先生、聞いて聞いて!」とか、小さなことでも褒められて喜ぶとか、大勢の子どもたち相手に毎日たくさんの承認欲求を満たしてあげている。
だから余計に今度は自分もどこかで認められたい、労ってほしいといった感覚も持たれるんじゃないかなとも思うんですよ。
特に保育士というのは結構大変な仕事でしょ。オムツ交換も手際よくやらなきゃならないし、子どもと一緒に走り回ることもあるだろうし、その一方で制作とか行事準備とか連絡帳書きとかやらなきゃならない仕事が山のようにあるしね。
たまには子どもがケガすることもあるし、保護者からクレームが入ることもある。
いつも笑顔で頑張って、なにかあれば真摯に対応しなきゃいけない仕事だけど、「子ども好きがお給料もらって子どもと遊べていいわね」なんて心ないことを言われたりすることもある。
だから私は保育士の先生方にいつも心からありがとうという気持ちを込めて対応をしているんですよ。子どもや親を代表してね。
そんなことも園長のささやかな役割なんじゃないかと思っています。
自分が認められたことをメモして記憶に残そう
私はうちの園の保育士たちには日記をつけることを勧めていましてね、今日一日自分が褒められた、認められたことを小さくても思い出して記録しておきなさいと言っているんですよ。
そうするとね、保育現場からは「先生ありがとう」といった子どもの声、同僚や保護者からの「助かりました」とか「頼りにしています」などの言葉が日々結構あることに自分で気付きますからね。
対人関係の仕事は大変だけどそれが醍醐味でもありますから。
他者の承認欲求を満たしてあげながら、またその他者によって自分の承認欲求が満たされていることに気付く。
そこから保育士たちが自己実現へのステップに進んでくれることを願っています。
まとめ
今回の園長先生の話、いかがだったでしょうか。
福祉の仕事は保育に限らず人を相手にする時に大変な職業ですが、誰かを支えたり誰かの役に立つことで、そこからまた自分の存在価値を知ることができる素晴らしい職業であることが多いですよね。
ただ単純に物を売り買いするだけでは得られない充実感は、己の承認欲求を十分に満たしてくれる価値のある職業ともいえるのかもしれません。