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【強制退園】保育園と親、それぞれの実情を考える。自閉症という重度障害をもつお子さんがいるご家庭へ

今通っている保育園に通わせ続けたいというのは無理な話なのだろうか

Q.自閉症と知的障害を持つ3歳の子供の親です。
物事の理解ができないことや落ち着いて過ごせないことから、通っている保育園からはしょっちゅう「お子さんの対応が難しい」と文句を言われてきました。
それでも3歳児クラスに進級できて喜んでいた矢先、「うちの保育園では対応しきれない」と強制退園させられそうな状況になって途方に暮れています。
園長からは療育の方が合っているといわれましたが、うちの子の他にも発達障害の子供さんは通っているようですし、親としては子供の自立を育てる現在の保育園の取り組みが気に入っており、なんとか利用を続けさせたいのです。

発達の程度も保育園のキャパもそれぞれ。どこが限界なのか考えてみよう

A.発達障害のある子供さんが保育園に通っている例は珍しくありませんが、障害の程度も受け入れる保育園のキャパシティもそれぞれ違いがありますので、ご質問のお子さんに保育園が良いのか療育施設の方が適しているのかは一概には言えません。
ただ、ご質問のように通っている園から退園を強く勧められて、その際、子供さんの困った点を様々に伝えられて心身共に傷つく親御さんが結構おられるという事例は多く見受けられます。
これまで預かってもらえたのに、なぜ今になって突然そのようなことを言われるようになるのでしょうか。
一般的な保育園が子供さんの受け入れに限界を感じるきっかけを一緒に考えてみましょう。

クラス担任が一人になる3歳児からが、実はとても対応が難しくなる保育園の実情

気になる子がいる場合、保育園ではまずなんとかその子をフォローしようと努めます。
3歳児未満の場合は1クラス複数担任ですので、集団生活という場ではありますが、先生同士連携してかなり無理をしながらでも付きっきりの保育をしてくれていることも多いです。

しかし3歳以上になると1クラス一人という職員配置になることが一般的で、そうなるとどうしてもこれまで通りのマンツーマン保育はできなくなります。
保育園の職員配置には障害児を受け入れる際に専任の先生を配置する「加配」をとっているところもありますが、とっていない施設もありますので、それによっても対応できるできないが変わってきます。
発達障害がある場合、受け入れてくれる保育園を探すときにも苦労することがありますが、無事入園できたとしてもそのまま利用継続することができるかどうか試されるのがこの3歳になるときが多く、これが保育園に通いながら直面する第二の難関でもあるわけです。
ご質問のお子さんはちょうどその年齢にあたりますね。例え3歳児クラスが難しいとして進級を見合わせれば、異年齢の子供の中にあっては体格の大きなご相談者のお子さんが何かの際の加害者側になってしまう危険性が高くなる。
保育園がマンツーマンになれなくて限界だと感じるボーダーラインは「自傷他害の危険を保育園の体制では防ぎきれない」という点になるのではないかと思います。

就学前教育に熱心な保育園ほど、発達障害の子供の対応に苦慮することがある

乳幼児の時には子供の発達はまだ個人差が大きく、障害の有無も保育の大きな支障にはなりませんが、成長に従って心身が発達してくる3歳児くらいから保育園は定型児に合わせた様々な学習カリキュラムを開始します。
これを機に障害のある子は周囲から置いてけぼりになってしまうことが頻繁に起こり得ます。
保育園としても勿論そんな環境に子供さんを置きたくはないのですが、ご質問にあるように”子供の自立に力点を置いた保育園”ということですと、小学校就学前教育として様々な取り組み(学習や運動、ルールに沿った生活様式など)を積極的に子供に教え始めているのではないでしょうか。
もっとゆっくりと発達に合わせた環境の方が良い、うちよりも丁寧に繰り返し学習した方が子供さんのためになる、専門的なケアのもとに療養した方が好ましい、そうした判断から園長が「療育の方が合っている」と言われた可能性も考えられます。

今の保育園に通い続けたいという思いは子供さんの気持ち? それとも親の事情?

これまでの園に通い続けたいと思うのは、本当に子供さんの気持ちでしょうか。
「分かってくれる先生がいるから」「嫌がらずに通ってくれているから」などの理由はあるかもしれませんが、一方で出来ないことが多い環境で叱られたり指摘されることが続き、子供も親も辛い気持ちになってはいませんか。「仕事をしているので保育園をやめるわけにはいかない」といった親の事情が第一になってはいませんか。
いちばん大事なことは、今通っている保育園の崇高な理念よりも、その保育内容が自分の子供の発達にあっているかどうか、です。 

子供が本当に安心して過ごすことができる生活環境を目指して

 保育園から退園を迫られたときに多くの親は「うちの子がダメ出しをされた」と感じます。
なんともいえない寂しさや悔しさでやりきれない気持ちになる方も多いことでしょう。しかし保育園を強制退園になり、やむを得ず療育に切り替えた保護者の方に話を伺うと、「初めは保育園を恨みました。でも子どもの成長に沿った対応をしてくれる施設と出会い、そこで色々できることが増えていく子供の姿を見て、変わってよかったと思います」と語ってくれる親御さんがとても多いのも事実なのです。
こうした体験談も参考にしながら、まずは保育園の先生とよく状況を確認しあうことをお勧めします。
ヒトの脳は10歳ぐらいまでの成長がカギともいわれます。
ご相談者の子供さんにとって真に安心して過ごすことができる環境が一日も早く整うことを願っています。


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