“外国人スタッフを人材不足の穴埋めにしない” 介護施設「安住野」が外国人スタッフを大切にする理由
安住野では、現在6人の外国人スタッフが活躍しています。
2019年頃から、試行錯誤を繰り返しながらも継続的に外国人人材を受け入れる中で、弊社の代表にも気持ちの変化がありました。
今回は介護施設「安住野」が外国人スタッフを大切にする理由について、安住野代表の山野に聞きました!
はじめに、外国人人材を雇用しようと思ったきっかけを教えてください。
最初は、新たな採用方法のひとつといった感覚でした。実際に、技能実習生の受け入れにはひとりにつき高額な費用がかかり、私たちのような小さな施設での雇用は簡単ではありません。
そんな中、2019年1月に技能実習生を受け入れるための視察として、インドネシアへ行く機会をいただきました。日本で働きたい方と現地で直接お会いすることでこれまでの私の技能実習生への認識は大きく変わりました。彼女たちの就労意欲の高さや勤勉さを肌で感じ、「もしかすると外国人人材を迎え入れることで、いろいろなチャンスが増えるかもしれない」と受け入れを前向きに考えるきっかけになりました。
その後、安住野はベトナム人スタッフのアンさんが仲間入りしました。アンさんとはどのように出会ったのですか?
アンが安住野にきてくれたのは2020年、コロナ禍の最中でした。これまで人材に関して相談をしていた業者さんからつないでもらったご縁です。
というのも、コロナ前の日本は、インバウンドの盛り上がりによって観光関係やホテルマンなど、外国人人材の働き先がとても多かったのですが、コロナの影響で状況は一気に変わり、日本に留学をしていた外国人の行き場がなくなっている状態。アンも、通訳やホテルへの就職を希望して勉強していたのですが、同じようにコロナによって就職先がなくなってしまったところでした。安住野に来てからは、慣れない業務を懸命にこなしてくれて本当に感謝しています。
アンさんの採用をきっかけに、数年かけて外国人スタッフの数を増やしていった安住野。海外スタッフと働いてみて受け入れ方針に変化はありましたか。
アンをはじめ、異国の地へやってきて懸命に働く外国人スタッフの姿を見て、関わり方、考え方はガラッと変わりました。はじめは採用方法のひとつとして考えていた外国人人材の雇用ですが、今は「外国人スタッフを人材不足の穴埋めにしない」と決めています。
現在、日本の労働力は年々低下し、外国人人材に頼らざるを得ない状況になっています。ただ、外国人スタッフを単純な労働力としての雇用するのではなく、日本で多くの挑戦ができるような環境を作り、日本人と同じようにチャンスの機会を持ってもらいたいと思っています。
そのため安住野では、外部の研修や学びの場に外国人スタッフも参加してもらっています。今もちょうど、茨城県のビジネスプラン研修という新規事業を作る研修会にアンが参加しています。そういうところに仕事として身を置くことが、彼女たちのスキルアップにつながればと思っています。
また、小規模介護事業所として、どのような形を取れば外国人材とマッチングができるかを考えた結果、配偶者ビザや家族滞在ビザ・留学生の方と一緒に働けるような会社になりました。現在、自社雇用の外国人材は在留資格技・人・国ビザ1人、配偶者ビザ3人、家族滞在ビザ1人、留学生が1人となっています。
安住野は、登録支援機関にもなっていますが、どのようなことをするのですか?
登録支援機関は外国人人材の住居確保や生活に必要な契約支援、公的手続き等への同行や日本語学習の機会の提供等、特定技能の人たちの受け入れにあたって、受け入れ会社と特定技能実習生の人たちの間に入りながら日常生活を中心にサポートする立ち位置です。海外からの人材をどうやれば採用できるかというところを試行錯誤してきた中で、アンの勤続年数が実績として認められ、登録支援機関の申請に至りました。
今年より登録支援機関の許可を頂いたので私たちはこのような登録支援機関を目指しています。
登録支援機関は各都道府県に沢山あり、例えば越県して、茨城県の登録支援機関が栃木県にある事業所の特定技能の方の支援をすることもできます。ただ、私たちは、特定技能の方たちが困った時にすぐに相談できる相手になりたいと思っています。物理的な距離が遠いとそれはなかなか難しい。異国の地に来て、ひとりで生活を始めれば、困ることも絶対に出てくるので、その時にすぐ助けてあげたい。地域密着型の登録支援機関として、顔が見える場所で信頼関係を持ってサポートできた方がいいと思っています[英山1] 。
現在は、インドネシアからインターン生もきています。今後の採用や外国人材とのマッチングのために行っていることはありますか。
2022年から今年で2年目になる海外からのインターンシップの学生の受入を行っています。昨年は、ベトナムの学生を受け入れましたが、今年はインドネシアからインターンシップの学生を受け入れています。
現在、インターンシップの学生には、「外国人材から日本の中小企業がどうしたら選ばれるのか、そのためにどうしたらいいのか」をテーマにしたレポートを作ってもらっています。
国をまたぐと、文化や宗教観に違いが現れるのは当たり前です。そうなると、私たちの言葉で一生懸命説明しても伝わりづらい。でも、お互いの文化や習慣に寄り添って伝えることによって価値観の共有ができたり、仕事もスムーズに進むと思っています。そういうことが自然とできるような支援体制を整えていきたいです。
最後に、外国人人材とより豊かに働くための今後の目標を教えてください。
すでに安住野で活躍しているスタッフがイキイキと日本で生活できるようサポートすることは当たり前として、日本が外国人人材に選ばれるような取り組みについても考えていきたいと思っています。
日本はすでに賃金の面で選ばれない国になっています。これまで日本に職を求めてやってくることの多かったベトナムやインドネシアの方もオーストラリアなどに行くことが増えているそうです。「日本は安全だよね、安心だよね」という感想は外国人の方からよく聞きますが、今後はそれ以上のものが見つからないと、働き先として選ばれなくなってくると思います。安心安全と共に、外国人人材にとって魅力のある事業所、さらには選ばれる国になれるようなチャレンジをしていきます。
これからの外国人人材の方たちが日本に来て働きたいなって思ってもらえるのかを考えながら、使命感を持って何らかの形にしていきたいと思っています。