日本の家具の歴史について
人々の暮らしになくてはならない「家具」ですが、意外と知られていないこれまでの歴史について調べてみたいと思います。
日本の家具は歴史を背景とした住宅の建築様式の変遷とともに、その時代の生活や住居に即したものが誕生しています。
今回は建築様式と家具・建具の変遷を時代ごとに大きく分けた、先史時代と古代と中世までの3つにわけてみていきましょう。
先史時代(縄文時代~弥生・古墳時代)
■縄文時代
この時代の住居は「竪穴式住居」です。
昔、小学生の頃勉強したアレです。
竪穴式住居は地面に穴を掘りその中に複数の柱を建て梁や垂木をつなぎ合わせて骨組みをつくり、その上から萱などの植物を利用して屋根をつくった建物です。
縄文時代で特筆すべき事は定住が開始されたことです。
同じ場所に生まれてから死ぬまで住み続ける人が全てではなかったでしょうが、
これまで洞窟の中に住みながら常に獲物を追って東へ、西へ移動という状況からある1か所に一定期間住み始め生活に便利な住居を改造するようになります。
■弥生・古墳時代
この時代の住居は高床式倉庫と呼ばれるものが代表的です。
こちらも歴史の授業で習ったアレです。
高床式倉庫は竪穴式住居とは違って地上に高くつくるため建物内の湿気や水害、外敵から身を守ることから倉庫としてだけでなく住居としても建てられるようになります。
理に適っていますね。
地面から高く離れた所に住むのが高貴な人という考えにより後の神社建築の形式へと発展していきます。
古代(飛鳥時代・奈良時代~平安時代)
日本の住宅は開放的な木造建築が主流で柱と屋根によって住宅の構造の基本が決められ、住宅の内部は開放的な移動性の戸によって仕切られています。
その原型、もしくは基本形が形作られたのがこの時代です。
早いような、遅いような。
また人々は履物を脱いで床にあがり畳や円座などを置いた部分に座ったり横になって生活をしていたのでしょう。
履物を脱いで床に座る暮らしをしてきた日本ではそれまで家具はあまり使われることがありませんでしたが平安時代の寝殿造りには厨子や箱などの小型の収納具や屏風、御帳台、御簾などの間仕切りが置かれています。
■飛鳥時代・奈良時代
この時代の住居は神社建築が多くみられます。
仏教建築が移入される以前の日本建築のデザインを今日まで伝えているのが住吉大社の住吉造、出雲大社の大社造、伊勢神宮の神明造の3点が代表的な神社建築になります。
まだ直に見たことがないので、一生に一度は見てみたいと思います。
6世紀、大和地方(奈良県)では朝鮮や中国の影響を受け飛鳥文化が花開き下記の3点の建造物が建てられています。
・法隆寺
隋時代の中国の影響を多く受ける法隆寺は現存する世界最古の木造建築です。
法隆寺の建築物群は法起寺と共に1993年に「法隆寺地域の仏教建築物」としてユネスコの世界遺産に登録されています。
小学生の頃の修学旅行で見たのを覚えています。
・奈良東大寺
8世紀は仏教建築の大ブームになり奈良に薬師寺や唐招提寺等の優れた建築が次々に建てられ、中でも東大寺は規模においてもそのピーク時に作られたものでした。
1998年に古都奈良の文化財の一部としてユネスコより世界遺産に登録されています。
・正倉院
正倉院の当時の国内外の美術工芸品をはじめ奈良時代の日本を知るうえで貴重な史料で歴史的な品、古代の薬品なども所蔵される文化財の一大宝庫になります。
■平安時代
平安時代は貴族の時代で荘園制度により安定した権力を握った貴族たちは、広大な敷地に屋敷を構えるようになります。
寝殿造りは貴族の住まいとして高床式住居が発展したもので主人の住まいである「寝殿」を中心に家族の住まいである「対屋(たいのや)」をはじめいくつもの建物を渡殿(わたどの)で繋いでいます。
寝殿造は巨大なワンルームになっており行事や用途に合わせ各種の屏障具(へいじょうぐ)で内部を仕切り家具や調度品を配置しています。
このように部屋を飾ったり整えたりすることやまたその屏障具や収納具などの調度品のことを「しつらえ」と呼びました。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも見れるかもしれません。
寝殿造の調度としつらえにどんなものがあるかみていきましょう。
・屏障具(へいしょうぐ)
室内を仕切ったり寒さを防いだり人の視線を遮るものです。
屏風(びょうぶ)・衝立(ついたて)・障子・几帳(きちょう)・壁代(かべしろ)などがあります。
・収納具
この時代の代表的な収納具をみていきましょう。
□厨子棚(ずしだな)…本来は食物を収めておく棚でしたが日常の室内の収納具としても使用します。
□厨子(ずし)…本来は仏像や経巻等を安置するための両開きの戸棚です。本箱や置戸棚のように用いられ、冊子や巻物を収納します。
□唐櫃(からびつ)…衣類や調度品をしまうための足付きの収納具です。
□長持(ながもち)…衣類や調度品をしまう蓋つきの箱です。
・座臥具
□円座…すげ、井草などの葉を渦巻きのように丸く編んで作った敷物になります。
□脇息(きょうそく)…座ったときに肘を置き姿勢を楽にする道具です。
□庄司(しょうじ)…机のような形をした四脚の腰掛けで上面がすのこになっています。
中世(鎌倉時代~室町時代)
■鎌倉時代
鎌倉時代に入ると遣唐使の派遣が中止されてから途絶えていた中国との交易が再び始まり、宋と元の文化が日本にもたらされます。
その中で大きな影響力を及ぼしたのが禅宗の流入です。
中国との交易が活発になったことで新しい建築様式が伝来し、今までの建築様式を「和様」と新建築様式を「大仏様」「禅宗様」と呼び区別されています。
後の時代ではそれらが入り混じった様式「折衷様」が新しく誕生しています。
・大仏様・・・建築の構造美を前面に打ち出した建築様式です。代表的な建物で東大寺南門があります。
・禅宗様・・・禅宗とともに中国から伝えられた建築様式です。
和様よりも屋根の傾斜が急で軒の反りが大きいのが特徴です。
代表的な建物で国宝功山寺仏殿があります。
・折衷様・・・大仏様の豪快な構造美を取り入れ、さらに唐様の装飾美を加えて折衷した建築様式です。
代表的な建物で観心寺金堂があります。
■室町時代
鎌倉幕府が滅亡すると政治の権力は一旦朝廷に戻ることになりますが、長くは続かずその後再び武家階級の足利氏が政権を握り1333年に京都に幕府を開きます。
室町時代建築においては禅宗の寺院建築や庭園が最盛期を迎えその技術的影響は建築の全域に及びます。
武家階級の住宅では禅宗様の影響色の濃い書院造と呼ばれる洗練された建築様式が生まれ、室町時代以降にさらに高度な発展をみることになります。
・楼閣建築
金閣、銀閣などの楼閣建築では日本の建築で初めて積極的に2階を使用するようになります。
上階から外部を眺めるという点は近世の城郭建築につながる流れです。
・書院造の原型
足利義政によって建てられた慈照寺(銀閣)にある東求堂仁斎は
畳が敷き詰められた4畳半の小座敷で角柱や違い棚、付書院があり書院造の原型とも言われています。
まとめ
その時代において住宅の建築様式が大きく変わり、その時代の生活に即した家具・道具が誕生してきました。
いつの時代も外国の文化が新鮮に映り、既存の文化と融合した新たな物が生み出されてきたのかもしれません。
ですが、いつの時代も、その住宅環境に合う家具選びが大切です。
パンデミックで自宅での時間も増えた現代こそ家具のあり方をもう一度考え直す良いタイミングなのではと個人的に思っています。
何か家具についてのお困りや、要望がありましたらお気軽にご相談ください。
それでは。
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