トランプ新政権④ 平和主義の大統領ではない
いま中国で最も人気のある金融・財政の評論家の一人、盧麟元氏がトランプ2.0を分析しています。
第四回目のポイントは次のとおりです。
2024年11月30日に配信された動画からの抄訳です。
全四回の最終回となります。
イランへの軍事作戦が予想される
戦争の問題については、深く洞察しておく必要があります。
孫子の兵法を持ち出すまでもなく、戦争が長引けば問題が生じます。
例として、ロシアはウクライナとの戦争を1000日以上続けた結果、経済が破綻しかかっています。
ルーブルが暴落し、利率は21%に達しており、持続可能とは言えない状況です。
米軍が3ヶ月でイラン問題を解決できれば、成功を収める余地があります。
解決というのは、例えば宗教指導者の退陣や死去、新政権の樹立などによって政治的混乱が発生し、交渉が有利に進むという意味です。
しかし、戦争が6ヶ月続けば、米国とイスラエルに深刻な問題をもたらします。12ヶ月以上続けば、眼も当てられない状況となるでしょう。
米国がイランに対して軍事作戦を起こした場合、ロシアはどう対応するでしょうか?
私の個人的な見解では、ロシアは傍観します。
石油価格の観点から言って、イランの混乱はロシアにとって有利ですし、ウクライナ戦争の財政圧力を軽減することができます。
軍事ブロガーがよく言うような、ロシアがイランを支援するという状況は考えにくいです。
トランプは平和主義の大統領だと思われていますが、その見方は誤っていると思います。
なぜなら、戦争が最も儲かるビジネスである以上、トランプがそれを拒むことはあり得ないからです。
北米の一体化構想が実現するか
米国国内については、懐刀のギャバードの動きに注目しましょう。
これは、マスクがどこまで妥協を引き出すかにかかっています。
マスクが相手の妥協を引き出し、トランプ改革に協力する動きが強まれば、ギャバードが相手に王手をかける必要がなくなります。
大きな問題がすばやく片付けば、極端な手段は避けられるでしょう。
たとえば、石油価格の問題です。
石油価格が上昇して、ユーロ、円、ポンドに打撃を与えれば、目的が達成されたと言えます。
もしユーロに深刻な問題が生じ、ポンドや円も危機に陥れば、韓国・台湾も影響を免れません。
石油価格が150ドルに達すれば、これらの国や地域の経済は支えきれなくなり、200ドルに達すれば完全に崩壊するでしょう。
そうなれば、製造業の国内回帰が加速します。
私だけでなく、多くの専門家が同じ見解を持っています。
トランプは就任する前から、すでに手を打ち始めています。
カナダについて言えば、カナダは米国との一体化を望んでいます。
が、米国がそれを望んでいないのです。
メキシコも同様ですが、米国はメキシコの望むような一体化は受け入れないでしょう。
私は米国が「南下政策」をとり、軍事的支配を強める可能性があると考えます。
もしもカナダの工業化が迅速に進み、資源豊富なカナダ、資本力のある米国、低・中コストの製造拠点としてのメキシコが一体となり、工業のエコシステムが築かれれば、2020年に締結された北米貿易協定(USMCA)よりもはるかに優れた結果をもたらします。
現行の協定では、米国が損失を被っています。
新たな構造の下では、米国が損をすることなく、カナダやメキシコも大きな利益を得られます。
このビジョンが実現すれば、ドルを強力に支えるだけでなく、米国の経済成長を力強く後押しするでしょう。
成長率は3%どころか、5%や6%に達する可能性があります。
ただし、債務削減の目標については、実現はほぼ不可能だと考えています。
今日はここまでとします。(全四回、完)
(この記事を第一回から読む)