中国の創作物における友人や夫婦、恋人同士の呼び方、愛称について
前の記事で長くなったので別記事にした夫婦や恋人同士での特別な呼び方、愛称についての具体的な内容である。友人同士の頃の呼び方も記載している。
同い年であっても、一日でも生まれた日が早い方が年上となる。しかし、例外もあって、同門の弟子の場合は弟子入りした順になるので、年下の師兄や師姐、年上の師弟や師妹という事もある。
男性が年上の場合
男性が年長の場合は女性(妻)は男性(夫)をただ単に「哥(お兄ちゃん)」と呼ぶ。これはジャンル関係なく一番多いのだけれども、女性に実の兄がいて兄を「哥」と呼んでいない場合にのみである。兄がいる場合はただ単に「特別な愛称」で呼ぶことが多い。
また、男性から女性への呼び方は多種多様で、ジャンルによって違う。
ちなみに「哥」と「〇哥」では特別感が違うので注意だ。ただ単に「哥」というのはかなり特別な呼び方になる。
女性から男性へ
●仙侠&武侠、ファンタジーなどの場合
師兄or姓+師兄など
※門派が違っても年上と判断されたら「師兄」と呼ぶことが多い
→男性からこう呼んで欲しいという呼び方
(これで固定される場合もある。「〇哥」はここに入る)
→古風な言い回し(夫君、郎君、相公など)「哥」、特別な愛称
※ちなみにこの古風な言い回しは時代によって違う上に、どれとどれが対応しているのかも違うので、使う場合は丹念に調べてからにして欲しい。
●現代物などの場合
フルネーム呼びなど(フルネーム呼びは失礼ではない)
→名呼びまたは皆が呼ぶ愛称(〇哥など)
→男性からこう呼んで欲しいという呼び方(これで固定される場合が多い。「哥」はここに入る)や特別な愛称
男性から女性へ
●仙侠&武侠、ファンタジーなどの場合
師妹or姓+師妹、姓+姑娘など
→女性がこう呼んで欲しいという呼び方(名呼びが多い)、皆が呼ぶ愛称
→特別な愛称(〇児など)や古風な言い回し(娘子、小君、細君など)
※ちなみにこの古風な言い回しは時代によって違う上に、どれとどれが対応しているのかも違うので、使う場合は丹念に調べてからにして欲しい。
●現代物などの場合
フルネーム呼びなど(フルネーム呼びは失礼ではない)
→諱呼びまたは皆が呼ぶ愛称
→女性からこう呼んで欲しいという呼び方(これで固定される場合が多い。)や特別な愛称
女性が年上の場合
中国の男性向けの創作物では女性の方が年長である、つまり年上ヒロインが多いので、かなり詳しい自信がある。
女性が年長の場合は女性を「姐(お姉ちゃん)」とは呼ばない事が多い。男性が姐と呼ぶのはいてもいなくてもほぼ実の姉だけである。呼ぶとしても「姐姐」と名呼ぶ。それ以外は男性が年上の場合と大体同じではある。
女性から男性へ
●仙侠&武侠、ファンタジーなどの場合
師弟or姓+師弟やフルネーム呼びなど
→男性からこう呼んで欲しいという呼び方(これで固定される場合が多い)
→古風な言い回し(夫君、郎君、相公など)、特別な愛称
※ちなみにこの古風な言い回しは時代によって違う上に、どれとどれが対応しているのかも違うので、使う場合は丹念に調べてからにして欲しい。
●現代物などの場合
フルネーム呼びなど(フルネーム呼びは失礼ではない)
→諱呼びまたは皆が呼ぶ愛称
→男性からこう呼んで欲しいという呼び方(これで固定される場合が多い。)や特別な愛称
男性から女性へ
●仙侠&武侠、ファンタジーなどの場合
師姐or姓+師姐、姐姐、姓+姑娘など
※門派が違っても年上と判断したら「師姐」と呼ぶことが多い
→女性がこう呼んで欲しいという呼び方(名呼びが多い)、皆が呼ぶ愛称
→特別な愛称(〇児など)や妻を呼ぶ古風な言い回し(娘子、小君、細君など)
※ちなみにこの古風な言い回しは時代によって違う上に、どれとどれが対応しているのかも違うので、使う場合は丹念に調べてからにして欲しい。
●現代物などの場合
フルネーム呼びなど(フルネーム呼びは失礼ではない)
→名呼びまたは皆が呼ぶ愛称(〇姐など)
→女性からこう呼んで欲しいという呼び方(これで固定される場合が多い。)や特別な愛称
同性同士の場合
基本的には性別関係なく中国人は、家族や友達、恋人だけでなく、アイドルや俳優、アニメのキャラなどに気軽に愛称を付け、好きな人を愛称で呼ぶのは大好きである。
※ここからは読み飛ばしてもいいです。
あまり女性作家の作品をたくさん見ているわけではないのだけれど、どうも男性作家の方がお互いの呼び方にこだわる傾向にあると思われる。(もちろんこだわりの薄い男性作家もいる。)
何度も書くけれども、私が見ている中国アニメは主に男性向けの俺TUEEアニメである。自然と男性作家原作のものが多いのでこれだけは確実に言える。男性同士は友人を特別な愛称で呼ぶことがよくある。もっと言うとあまり仲良くなくても愛称はつける。特に現代を舞台にした作品の場合は男性同士でニックネームを付けたり、名前以外の呼び方をするのは当たり前である。これが女性作家の特にBL作品になると恋人同士であるにも関わらず、互いの呼び方がとても淡白で、「男同士ならもっと愛称で呼ぶだろう!本当は仲良くないのでは?」と思うくらい男女で感覚の違いがある。もしかしたら多少は地域によって違うのかもしれないけれども、それ以上に男女差を感じる。
なんとなくなんだけれども、中国人女性はよほど深い仲にならない限りあまり気軽に愛称で呼ばれたくなく、中国人男性は気軽に愛称で呼んで欲しい傾向にあるんじゃないかとにらんでいる。それが作中での互いの呼び方に対するこだわりに出ている気がするし、男性作家の作品を読んだ女性が「この男たちデキているのでは?」と勘ぐってしまう男女の認識のすれ違いになっている気がする。
※ここまで読み飛ばしてもいいです。
結論。BL漫画や百合の小説も漫画も中国では女性作家が多いため、とても淡白な呼び方をしていることが多く、男性作家の作品内の友人同士の方が濃い目の呼び方をしていることが多いので、同性の恋人同士がどう呼んでいるのかについては不明。たぶん、男女のカップルとあんまり変わらないんじゃないかと思う。
愛称と呼び方
これは具体例があった方が分かりやすいので、『闘羅大陸』(西洋ファンタジー、原作は唐家三少の小説)のアニメをもとに登場人物の呼び方で解説する。
まず、主人公の唐三の仲間である「七怪」とその呼び方を紹介する。
戴沐白(男)
七怪で一番の年長。呼ばれ方は沐白(男女とも呼んでいる)、老大(ボスという意味。主に男性が呼んでいる)とも。朱竹清は許嫁である。皇子。
オスカー〔奥斯卡〕(男)
七怪で年齢的には二番目。呼ばれ方はオスカー、小奥(主に男性キャラから、寧栄栄と恋人になったあとは栄栄も呼ぶようになる)
唐三(男)
三番目。主人公。唐三から七番目までの5人は年齢は同じで生まれつきの早い方からの順という事になっている。(本来の年齢でない人がいる。主人公は転生しているので精神年齢+29歳である)
呼ばれ方は、唐三、小三(年齢が上の戴沐白やオスカーから)、三哥(年齢が下の4人から)、哥哥(小舞と知り合った6歳頃)、哥(小舞と恋人になってから)、小怪物(特別な呼び方、作中のジジイキャラから※後述)など
馬紅俊(男)
四番目。呼ばれ方は、紅俊、胖子(ふとっちょ、ぽっちゃり、デブという意味。よくある愛称。男性キャラからのみ)。四哥とは呼ばれない。
小舞(女)
五番目。中国語では舞と五は同音。ヒロイン。ちなみに本当の年齢は外見年齢+約10万歳で、人としては外見年齢通りである。呼ばれ方は、小舞、小舞姐(森の仲間から)、妹妹(唐三と6歳+10万歳で知り合った頃)
寧栄栄(女)
六番目。呼ばれ方は栄栄。いい所のお嬢様なので、宗門のお爺様たちから大小姐(お嬢様)と呼ばれることも。
朱竹青(女)
七番目。呼ばれ方は竹青。戴沐白の許嫁。ちなみに年齢差は3歳。
馬紅俊、小舞、寧栄栄、朱竹青の4人はほぼ横並びの呼び方、呼ばれ方をしている。
この例の中の愛称や呼び方についての解説
●三哥(年下4人のから唐三へ)
実年齢では唐三も同い年なのだけれども、皆と出会う前から小舞が唐三の事を哥哥と呼んでいたのと、なんとなく大人びていたのもあって小舞以外の3人からは三哥と呼ばれることが多い。小舞も哥と呼ぶ前は三哥と呼んでいたことがある。名前の唐三と七怪の年齢順での三番目をかけている。
●哥(小舞から唐三へ)
何度も解説した通り年下の女性が年上の男性の恋人や夫に対しての一般的な呼び方である。ちなみに唐三から小舞へは名前の小舞である。
●小怪物(独孤博から唐三へ)
作中のジジイキャラ独孤博が唐三に対する特別な愛称。唐三も独孤博に対しては老怪物と特別な愛称で呼んでいる。独孤博はツンデレ悪役女王様みたいな性格をしたジジイである。途中からデレデレになる。
●小舞姐(森の仲間から小舞へ)
森の仲間と言っても山より大きい巨猿や水龍から小舞への呼び方。〇〇姐は年上の女性に対しては一般的な呼び方。
●哥哥、弟弟、姐姐、妹妹(小さい頃の唐三と小舞の呼び方)
これは実の兄弟姉妹の呼び方であるのだけれども、実の兄弟姉妹のように仲がいい場合にも使われる。性別は問わない。この関係から恋人発展する必要もない。同作者の『神印王座』では主人公はヒロインではない仲のいい年上の女性に姐姐と呼び、女性からは弟弟と呼ばれている。
ちなみに哥や姐といった一文字での呼び方は実の兄や姉に対して少々雑でとても親しみのある呼び方であるけれども、年下の実の弟や妹に対しては弟や妹といった呼び方はほぼしない。
あと、現代では「いとこ」はほぼ兄弟姉妹として考えられているので、実の兄弟姉妹と同じように呼びあう事が多い。
見て分かる通り一番特別感ある愛称で主人公と呼びあっているのがジジイキャラである。主人公はヒロインをとても大切してるし、恋愛の比重が大きくて『恋愛大陸』と揶揄されるくらいの作品なのだけれども、男性キャラから男性キャラへの呼び方の種類が多く、距離感も近い。男性向けの作品ではこのような事はしばしばある。
『闘羅大陸』は西洋ファンタジーであるため呼び方の種類は少ない方である。他の作品、つまり中国を舞台にした作品、特に現代を舞台にしたものではもっと呼び方の種類がある。
本当は武侠小説の『少年歌行』で解説するつもりだったのだけれども、メモを紛失したのと呼び方の種類が多すぎてほとんどの人がついてこられなさそうなのでやめておいた。ちなみに少年歌行のアニメやドラマでは中国人から見ても煩雑過ぎたのか、呼び方の種類が大幅に削減されている。
どのような愛称を付けるのか
人物同士の関係性や性格、その時の流行などがあり、こうとはっきり言えないのだけれども、日本人の感覚からするととても変な愛称を付けることがしばしばある。
日本語での説明で申し訳ないのだけれども、恋人同士の呼び方を例にすると、「ハニー」みたいな甘い愛称から、「バカ」や「アホ」(ニュアンスとしては「おバカさん♥」というノリ)といった罵倒のような愛称、若いのにおじさんっぽいからと「おじさん」などとからかうような愛称、身体的特徴「目が小さい」「耳が大きい」など様々な愛称がある。
日本人の感覚では親しき仲にも礼儀ありなのだけれども、中国人には雑に扱うくらい仲が良いという感覚もあるため、一見すると罵倒の表現であっても愛称になるのだ。もちろん仲の良くない人が呼んだらただの罵倒や悪口になるので注意だ。
前の記事でも書いたけれども、日本では相手をどう呼ぶかはキャラ(性格)による比重が大きいけれども、中国では相手との距離感の比重が大きい。仲が良くなれば仲が良くなった呼び方をするのだ。友達になった、恋人になった、夫婦となったで呼び方を変えるのが普通くらいに思って欲しい。(もちろん変わらない場合もある)
#中国の創作物の中国人名