インターリニアー聖書について

 聖書学習者にとってギリシア語もヘブライ語も慣れるのにはハードルが高い。新約聖書も旧約聖書も紙のインターリニアー聖書がかつてあり(現在は品切れ)、十数年ほど前まではこれを手元に置いて読み比べていくのが定石であった。今も説教などの準備に原語を確かめるために用いている方もいると想像されるが、現在は便利なことにインターリニアー聖書アプリというものがあるので、その使い方について少し具体的に踏み込んで紹介してみたい。


 インターリニアー聖書とは、本文の下に語形分析の詳細、意味、ローマ字の音訳、単語の原形などを載せたもののことである。紙媒体のものであれば見やすいレイアウトを確保するためにB5版サイズの本などになってしまい、福音書や旧約文書の一つひとつが分冊で刊行されており、揃えようとすればかなりの金額と分量になる。インターリニアー聖書が目指すものは現在であればアプリで十分に対応できるであろう。ただ、残念ながらまだ日本語では公開されていないので英語を介してということになる。それでも、ギリシア語やヘブライ語を学び始めた人にとってこれほど大きな助けになるものはないであろう。

 学習者にとってまずハードルとなるのは文字に慣れることである。そして正確に音を取りながら読めるようになることである。そのためには本来であればたくさん聞いて耳を言葉に慣らす必要があり、新約聖書ギリシア語の音読はお勧めがないのだが、旧約聖書ヘブライ語に関しては以前にも紹介した「聖書」というアプリにお勧めのものがあるので追って紹介したい。インターリニアー聖書はさまざまな段階で聖書の原文に触れようと思った際に非常に頼りになるツールなのでぜひ活用したい。語形分析に頼ると力が付かないというコメントを時々見かけたりもするが、それは学習の際に解答を求めてこれを使用するとということであると思う。しかしひたすら原文を読み進めていくということに特化してしまえばこれほど頼りになるツールはなく、辞書引きの手間を圧倒的に省きつつ学習者を支援してくれるものといえよう。

 ヘブライ語聖書を読む際には音読を聴くなどして耳を慣らしつつ、自分の目で確かめながらローマ字音訳を頼りに一通りアルファベットが判別できるところまでもっていくことが求められる。一見手間であるように思われるかもしれないが、聞いて耳で慣れているものを自らの目で一つひとつ確かめながら音を確認していくと、少しずつ文字に慣れていくことができるのでごく入り口の段階にある学習者にはぜひ勧めたい学習法である。

以下のリンクはヘブライ語聖書の音読をしてくれるアプリの詳細です。

それから以下のリンク先のポストから、上記の聖書アプリの該当聖書まで進むことができるので、興味のある方はご確認ください。十字架上でイエスが口にしたとされる詩篇22編の箇所です。


 ギリシア語の場合は文字が読めるようになれば、むしろアクセントに注意をしながら読み進めるのでローマ字の音訳は必要がなくなることと思われるため、設定で音訳の行を減らしてしまうことをお勧めする(ただローマ字の音訳表記はストロングの辞書検索のときには検索をかける際に手掛かりになるので気にならなければ表示していてもよい)。聖書の原文を逐一追っていきながら見慣れない単語に出会った際に意味がすぐに見える場所にあると該当箇所の本文がすっと思い出せて便利である。そして詳しく意味を知りたい場合はストロングの辞書番号をタップすることでその内容を確認することができる。単語が気になったこの段階で「adelp」や「brother」などと上中央の検索を使用すれば意味と音訳にその文字列を含むすべての語をリアルタイムで拾ってくれるので、ヘブライ語とギリシア語の語彙の広がりを確かめることができて非常に便利である。

 まだ筆者は読むというよりは眺めて本文を確認しているという段階だが、それでも聖書の言葉を、特に新約聖書のギリシア語を眺めているとはっとさせられることがある。それは例えば、ペトロの三度目の否みで「近くに立っていた人々」にヒステーミ(立つ)という動詞の分詞の複数形が用いられていることからペトロにとって生死にかかわる切迫した事態の到来を窺わせる箇所であったり、あるいは主人が葡萄園の農夫たちのもとに息子を送る話で「収穫の時が近づいたので」という表現にカイロスという語がつかわれていることの意味であったりする。福音書の著者たちがその語に込めた意味の奥行きを感じながら読み進めることができるのは聖書を原語で読む醍醐味といえよう。

 ごく簡単にインターリニアー聖書の使い方について書きましたが、聖書の原文に興味のある方はぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
 



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