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音楽家を目指した頃に過ごした街の思い出
かつて、会社を辞めて音楽家を目指していた時期がありました。久しぶりにその頃住んでいた街を訪れ、懐かしい気持ちで歩き回りました。当時の記憶が蘇ったので、記事に書いてみました。
1. 会社を辞め音楽家を目指す決意
音楽家になる!
今から何年前のことでしょうか?
「音楽家になる!」と、退職を決意したのは。
当時の私は、ソフトウェア開発の仕事をしていました。ものづくりに憧れて理系の道に進み、公共事業に携わる企業に就職し、社内で順調にキャリアを積んでいました。しかし、働く中でさまざまな疑問が生まれ、悩みに悩んだ末、ついに退職を決意しました。
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不安とワクワク
キャリア形成には不利な状況。まるで断崖絶壁から飛び降りるような感覚でした。しかし、一度決断した後は、ものすごい開放感に包まれ、体中が喜びで満たされるような期待とワクワクが溢れていました。現実的な不安に押し潰されそうになる一方で、心は「やってやるぜ!」という気持ちでいっぱいでした。
京都に残る
地元は神戸ですが、前職の関係で京都の山科に住んでいました。実家に戻る選択肢もありましたが、自分の可能性を試したいという思いから、一人暮らしを続けることに決めました。
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一人になりたかった
神戸に戻れば昔のバンドメンバーもいるし、実家で暮らせば経済的にも楽になったかもしれません。しかし、誘惑も多く、いろんなチャレンジをしたいと思っている中で、周囲から干渉されるのが嫌でした。さまざまな人間関係のしがらみからも距離を置きたかったのです。周りから求められる日々に心底うんざりしていました。とにかく、一人になりたかったのです。
私の勝手な解釈ですが、仏教で仏様が悟りと開くために王位を捨てて国を出て苦行を始めたというエピソードを聞くと、当時の自分を思い出します。
炊飯器を買いに
会社員時代は夜遅くまで働いていたため、スーパーの営業時間内に帰れず、ほぼ毎日コンビニ弁当で過ごしていました。自炊することもなく、やかんが一つあるだけの台所でした。お金のやりくりよりも、時間短縮と楽さを優先していたのです。退職後、まずは炊飯器を買い、自炊を始めることにしました。それは新しい生活に向けた決意の表れでもありました。
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2. 新生活のスタートと日常の変化
やっと見つけた居場所
やっぱり思い出に残っているのは、当時暮らしていた家です。不安に押しつぶされそうでもあり、希望に燃えていた頃でもありました。初めて「自分の居場所ができた」という実感を持ちながら過ごした場所です。会社員時代は、家に帰って寝るだけの日々だったので、ようやく一人暮らしらしい生活ができるようになりました。ここが、いわば自分の「修行道場」となったのです。立地も良く、居心地の良い空間でした。もし、将来超お金持ちになったら、セカンドハウスとして使いたいくらいです(笑)。
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目に映るものが新鮮
会社を辞めて、炊飯器を買ったり、近所のスーパーを回ったりと、そんな些細な日常がすごく新鮮に感じられました。家の前の銀行のシャッターが開いていることさえ、驚くほど新鮮に映ったものです。
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さて、どうしよう
普通なら、ライブ活動に力を入れるべきところですが、私が自分で作ったバンドは退職前に脱退し、解散させました。理由はいくつかありますが、ランクを上げるには、音楽家として一から鍛え直す必要があると感じたのです。ドラゴンボールで言う「精神と時の部屋」に入るような感覚でしょうか。特に、歌唱力や音楽理論に課題を感じていたので、歌の本を買って勉強を始めました。
3. カラオケ店でのバイトと人との出会い
とりあえず生計を
そんな時に始めたのが、カラオケ店でのバイトでした。失業保険の期間も切れかけており、そろそろ何かしないといけないと考えていた時に、タウンワークでカラオケ店の募集広告が目に留まりました。会社と家の往復ばかりで、住んでいる街についてほとんど知らなかった私は、そのカラオケ店がどんな店なのかも全く知りませんでした。
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今は経営者も変わり、店の名前も違いますが、あの頃のままの雰囲気が残っています。
カラオケ店
音楽の修行のためにフリーターになったので、余計な人間関係を作らないと決めていましたが、実際には多くの出会いがあり、いろいろな人と交流を深めました。当時、個人経営のお店だったこともあり、良くも悪くもルーズな雰囲気で、様々なドラマが生まれました。
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職場の変化で感じた新たな人生観の違い
それまでの会社員生活とは異なり、職場には主婦や学生が多く、仕事に対する考え方がまるで違っていました。最初はその違いに戸惑いました。会社で一緒に働いていた人々に比べると、彼らは楽天的というか、全く別の世界に来たような気分でした。それもすべて新鮮で楽しい体験でした。会社員時代には、音楽を趣味でやっていることさえ言い出せないような雰囲気がありましたから。
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のんびりとした日々
もちろん仕事なので、決して楽なわけではなかったですが、前職の締切に追われた殺伐とした雰囲気に比べると、のんびりとしたものでした。ある学生バイトの子がカウンターで「暇だ〜」と呟いたのが、とても新鮮に感じられました。そんな言葉を聞いたのは久しぶりで、当時、将来の不安ばかりで焦っていた私には、そののんびりした雰囲気がかえってよかったのかもしれません。
久しぶりに訪れて、走馬灯のように様々な思い出が蘇り、感情が込み上げてきました。本当に懐かしいです。
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シャッターの上にスズメが群がっていた光景が思い出されます。
約10年ぶりの再会
先日、当時、勤めていた方と連絡を取り、約10年ぶりに訪れました。
約10年ぶりとは思えないほどお変わりなく元気そうで、当時と変わらない雰囲気で話ができて、とても楽しかったです。
その後、大通りを歩いていると、当時学生でバイトしてた子と偶然すれ違いました。まさかこんなミラクルがあるのかと思いつつ、少し談笑しました。今は地元の居酒屋で店長をしているとか。彼らしいなぁと思いながら、みんなそれぞれ立派に頑張っているんだなと感傷に浸りました。みんな元気にしているかな?
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4. 暗中模索の日々
お金に苦労した街での暮らし
当時は、時間を確保するためにバイト代と会社員時代の貯金を切り崩しながら生活していました。先の見えない不安と、お金のやりくりに悩む毎日でした。
自炊でのやりくり
職場では賄いがあり、それが一食分になるのでとても助かりました。料理なんてしたことがなかった私ですが、職場で厨房に入り、いろいろ教えてもらえたので何とかやっていけました。今思うと、あのタイミングで料理を学べたのはとてもラッキーでしたね。予算が限られていたため、本格的な料理は作れませんでしたが、いつかきちんと料理に挑戦してみたいと思っています。
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安い食材を求めてスーパー巡り
お金をできるだけ使いたくなかったので、業務スーパーや近所のスーパーを巡って、安い食材を探していました。一食あたり150円以内を目標に、張り切って節約生活をしていました。たまにビールコーナーで立ち止まり、買うかどうか悩むこともありました(笑)。マクドナルドの500円セットがたまの贅沢でしたね。
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よく散歩していた日々
会社員時代は締め切りに追われて、他のことを考える余裕もありませんでしたが、時間ができたことで選択肢が広がり、いろいろなことを考えるようになりました。考え疲れた時には、よく散歩に出かけていました。何の変哲もない道かもしれませんが、久しぶりに歩いてみると、当時の感情が蘇り、思わず感情が溢れてきました。あの頃は大変だったけれど、楽しかったなぁ。
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暗中模索の日々
会社やバンドを辞めた理由の一つは、自分を鍛え直したいという思いがあったからです。私の課題は、歌唱力と音楽理論の不足でした。ひょんなことから歌を始めましたが、誰からもうまいとは言われず、自分でもこのままではダメだと感じていました。作詞・作曲に関しても、それまではアップテンポな曲が多かったけど、もっと違う世界観を追求したくなり、そのための時間が必要だと考えていました。プロとしてやっていくためには、死ぬほど練習する覚悟が必要でした。自分を追い込み、暗中模索する毎日でした。
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昔、ここはスタジオで、自分でレコーディングなんかしてたなぁ。
たくさんのインプット
練習もたくさんしたけれど、クラシック音楽や中島みゆきさんの詩の世界など、たくさんの新しいインプットもありました。当時、ゲオでCDが100円ほどで借りられたのは本当に助かりました。
↑この記事の話はその当時の話。
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交通費を浮かすために
河原町に買い物に出かけた時の思い出もたくさんありますが、この看板を見た時、交通費を浮かすために三条から山科まで歩いて帰ったことを思い出しました。今では考えられないことですが、当時はよくそんなことをしていました。本当に、よくやっていたなぁと思います。
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もう潮時かな
今振り返ると、懐かしい日々もありますが、苦しい毎日がずっと続くわけではありませんでした。いくら歌の練習をしても上達の実感が得られず、作曲にしても手応えを感じられないまま、追い込めば追い込むほど空回りしてしまい、気づかないうちに精神的にもボロボロになっていたのだと思います。このまま同じことを続けていてもダメだ、と感じるようになりましたが、お金にも余裕がなく、どうすればいいか途方に暮れていました。
最初は新鮮で楽しかった日々も、何年も続くと、制約の多い生活にも限界を感じ、潮時だと自覚するようになりました。そして、そんな中で新たな転機が訪れたのです。
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この信号で待っている間、いつもいろんなことを考えていたのを思い出します。
5.カラオケ屋退職と人生の転機
ボイトレに行った
貯金を切り崩して生活していたこともあり、今までギターや作曲は独学でやってきて、誰かに教わるという発想がなかったんですが、ここまで追い詰められ、ついにボイトレに行くことにしました。貯金も余裕がなくなってきた頃で、「何とか変わりたい」という強い思いがありました。実際に行ってみると感動し、希望の光が見えた気がしましたね。
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ここで待っているときの希望が見えた気持ちを思い出しました。
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占いに行った
ボイトレに行き始めてから、時間を作ることよりも、ボイトレに通うためのお金を貯めることに方針転換しました。転職しようと思ったものの、何をすればいいか決めかねていた時、人生で初めて占いに行くことにしました。そこで聞かされた言葉にハッとさせられ、「分かる人には分かるんだなぁ」と思った記憶があります。それをきっかけに、もっと専門性の高いスキルを持った人たちと交流を持ちたいという気持ちが強くなりました。
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心理カウンセリングを受けてみた
これも話せば長くなるんですが、気持ちも何もかもが疲れ果てていた時期でした。心理学に興味があったことと、昔の人間関係でうんざりしていた経験から、「ちゃんとした会話がしたい」という気持ちがあり、カウンセリングを受けてみました。そこで素敵な出会いがあり、とても心が落ち着いたことを覚えています。自分の勝手な解釈ですが、仏教の苦行を終えたお釈迦様がスジャータから乳粥の供養を受けたエピソードを聞くと、この時のことが思い出されます。今はもう存在していないようですが、この建物を見た時、当時の気持ちが蘇ってきました。
↑これが今の会話の研究にもつながっています。
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新たなステージへのきっかけ
結局、この後、体調を崩して神戸に戻ることになりました。京都を離れてから今日に至るまで振り返ると、ボイトレや心理カウンセリングに行ったことが、大きな環境の変化の入口だったと思います。
この道はいつか来た道
神戸に戻ってから約10年間、この地を訪れることはありませんでしたが、その間勤めていた職場を辞めたタイミングで、久しぶりに訪れてみました。正直、来ようと思えば電車で1時間ちょいで来られる場所なので、「別に訪れてもなぁ」と思っていましたが、実際に訪れてみると懐かしくて楽しくて、その場にいると当時の感情が蘇り、あの日に戻りたいとは思わないけれど、当時の日々がたまらなく愛おしくなりました。それは、あの頃が充実した良い日々だった証拠かもしれません。こんなにも懐かしい気持ちになるとは思わなかったので、今度は本当にゆっくり過ごしたいです。今後どうなるか分かりませんが、新たな冒険に向けて、素敵な出会いをしていきたいですね。
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