コツイ

ソリチュードこじらせ散文

コツイ

ソリチュードこじらせ散文

最近の記事

再読中、

同じ本を二度三度読むってことがわりによくあります。 好きだからまた読むっていうことももちろんあるけど、 そこまでのお気に入りじゃなくても本棚の永住権を得た小説もいたりして。 このところはとてもとても忙しいです。 自分比で忙しいだけで、これぐらいが世の中のスタンダードなんだけれど、こうなっちゃうとわたしは新しい本が読めなくなります。 新しい物語を読むには、 ①最低でも1日1時間、本を開く暇がコンスタントにあること ②頭の中に余白があること ③心の中に少しでも憂鬱があること

    • 美しいものを探す旅の話

      今年の春、とても美しくて勇気をくれて、人生の指針になるような言葉に出会いました。 それは既に鬼籍に入られた男性が30年前、まだ小学生の息子に宛てて書いた手紙で、最近になってからその手紙を見つけた息子さんがTwitterに載せてくださっています。 その手紙を読んだとき、たしかにわたしはひどく疲れていたのだけれど、たっぷり1時間子供のようにオンオンと泣いてしまいました。 その短い手紙の一節には 「人生を大切にしてください。美しいものを探す旅になると父さんは嬉しいのですが。」

      • 火葬と自分の骨の話

        この前、アメリカ人とお互いの国の火葬事情について話したの。 あちらの国では長らく土葬が主流だったけど、今は火葬を選ぶ人が増えているみたい。 ドラマや映画に出てくるような棺を墓地に埋めるシーンもだんだん過去のものになっていくのかな? アメリカの火葬は日本よりも高温らしくて、骨は残らずみんな灰になっちゃうんだって。 遺体が人であれ動物であれ、火葬業者に棺を預けて後日容器に入った遺灰が返ってくるみたい。 だから日本では火葬場の人が焼き上がった骨をここはどこの骨だのなんだの説明

        • 忘れられない人になりたければ大いに貶し言葉を述べるべし

          今回は三島由紀夫『不道徳教育講座』風に書いてみます。 ✳︎ 巷で時々京都人のいけずが話題になることがあります。 ご存知のように「ピアノお上手どすなぁ」が「下手くそ、うるさいぞ」の意だったり、「ぶぶ漬けでもどうどすか?」が「早く帰れ」の意だったりするわけですが、 こんな表現は本当に危険としか言いようがありません。 聞き手の感覚と知性次第では本心が伝わらないどころか酷い場合には純然たる褒め言葉や歓迎とも受け取られかねないのです。 さて、私の友人にこんな人があります。 もう三

          おばあちゃんのみそしるの話

          料理の地域差の話をすると、だいたいお雑煮自慢になるよね。 そういえば最近ツイッターではお醤油自慢もあったな。九州のは甘くて、南に行くほど甘いとか。 でも、全然みんなみそしるの自慢はしないの。 米みそ、麦みそ、豆みそ 昆布だし、鰹だし、煮干し、合わせだし、ほ⚪︎だし 地域によって作ってるみそも、だしの文化も違うのに。 当然具にもレパートリーがあって、組み合わせはお雑煮の比じゃないのに。 でもさ、なんか家のみそしるについて話すのって小っ恥ずかしいんだよね。 ともだちにあな

          おばあちゃんのみそしるの話

          死んだ作家は信頼できるって話

          少し前に『苦役列車』を読んだの。 この作品が芥川賞を受賞したときわたしはまだ10代だったわけだけど、受賞会見での発言を朝のワイドショーで見て「やっぱり風俗はこういうおじさんが行くもんなんだなー」と思ったことが強く記憶に残ってて。 失礼ながらそれ以後風俗という場所を思い浮かべるときには何度も「(おそらく)典型的な風俗客の容貌」として作者の顔が頭の中で再生されたわりに、西村賢太という名前はほとんど忘れてたと思う。 でもあるときネットニュースで作者の訃報を見て、久しぶりにその

          死んだ作家は信頼できるって話