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ピアノ初級曲「子犬のマーチ」(ビー・マーチ、みつばちマーチ)の作曲者はアメリカの養蜂家

ミドミドミソソ~♪で有名な、鍵盤初級曲「子犬のマーチ」は、別名ビー・マーチ。ビーはbee(英語)で蜜蜂のこと。

日本では作曲者不明の外国曲といわれることが多いようですが、実は、アメリカの養蜂家が作曲したものです。

冗談みたいですが本当です。



養蜂家C. C. Miller(1831~1920)

英語のWikipediaに、アメリカの養蜂家C. C. Millerがビー・マーチを作曲したと書いてあります。楽譜も載っています(↓)。もともとは、ミドミドミソソ♪のハ長調ではなくて、シソシソシレレ♪のト長調だったようですね。

C. C. Millerさんの略歴を要約しますと:

 Charles C. Millerは1831年にペンシルベニア州で生まれた。10歳で父親をなくし、苦学して医師になった。しかし病的な不安症で続けられず、音楽教師に転職してパブリックスクールの校長になった。1861年に偶然のきっかけで養蜂を開始。順調に事業拡大し、最終的にイリノイ州に落ち着いて北アメリカ最大のコムハニー(巣蜜)生産者となった。『Fifty Years Among the Bees』(蜜蜂に囲まれた50年間)、『A Thousand Answers to Beekeeping Questions』(養蜂に関する1000のQ&A)などの養蜂関連著書がある。
 彼は作曲家でもあり、蜜蜂をテーマにさまざまな楽曲を作った。その中の一つがオルガン曲「The Bee March」である。

Wikipediaより

作曲時期

上記Wikipediaに引用されている楽譜は、1892年出版の『Moline Organ Instructor』(S. Brainard's Sons Co. )に掲載されたものですが、1878年出版の『Improved Method for the Reed Organ』(Friedrich Bros.)にも「The Bee March」が載っていました。なので、少なくとも1878年までには作曲されていたようです。

ちなみに、Reed Organ=足踏み式オルガン(↓)。懐かしい!昔は小学校に必ずありました。今はさすがにないのでしょうか。


日本への紹介

明治23年(1890年)出版の『撰曲唱歌集』第2集に載っていた「The Bee March」の楽譜が、国立国会図書館デジタルコレクションから私が見つけられた中では最古でした。

保護期間満了なので画像を載せます。こちらもト長調

四竈訥治 撰曲『撰曲唱歌集』第1,2集,共愛書屋,明22,23. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/855523 (参照 2024-11-17)

もしこれが初出であれば、この歌集を作った四竈訥治 さんが、「The Bee March」を最初に日本に紹介された方ということになります。

四竈訥治さん(1853~1928)は仙台藩出身。音楽取調掛(後の東京音楽学校)で教師の訓練を受けた当時のエリートで、マンドリンを日本に紹介したことでも有名です。

その後、明治の終わりごろには、「ビー・マーチ」は、小学校や幼稚園の教員検定試験に出題される必修曲になっていたようです。

そんな「ビー・マーチ」が、いつから「子犬のマーチ」になったのか、はっきりしたことは分かりませんが、おそらく戦後、どこかの時点で新しい名前が付けられたのかなと思います。


The Bee Marchの原風景

YouTubeをbee marchで検索すると、養蜂場の巣箱に、ゾロゾロと蜜蜂の大群が入っていく映像がたくさん出てきます。なかなか壮観(↓)。この様子を見てあんな可愛らしい行進曲を作ったと思うと、養蜂家C. C. Millerさんの、溢れんばかりの蜜蜂への愛情が伝わってくるような気がしました。


まとめ

日本で「子犬のマーチ」(ビー・マーチ、みつばちマーチ)として知られる外国曲は、19世紀生まれのアメリカ人養蜂家、C. C. Millerさんが1870年ごろ作曲したものだった。日本には、明治半ば、音楽取調掛出身の四竈訥治さんにより紹介されたと思われる。