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「すいかの名産地」の原曲を私も探してみた

「すいかの名産地」は、もともとアメリカ民謡。昭和の中ごろ日本に伝わり、「メリーさんの羊」なども手掛けた高田三九三さんによる訳詞がついています。

親しみやすい曲ですが、メロディーも歌詞も謎が多く、そのルーツについて、これまで深い考察が何度もされてきました。

私はうっかり興味を持ってしまったニワカなんですが、一応自分なりに調べてみたので結果を書いていこうと思います!

といっても、謎は、既にほとんど解かれています。

中でも「すいかの名産地」原曲に直接つながる重要な指摘が、水科化結さんによりされています。それによれば、1909年初出でその後何度かカバーされている「Down Where the Watermelons Grow」(作詞Ren Shields、作曲George "Honey Boy" Evans)という曲があり、ホーマー&ジェスロー(Homer & Jethro)による1957年カバー版が、「すいかの名産地」の原曲ではないか?ということです。

ホーマー&ジェスローによるカバー曲を聴いてみると、曲の構成は「すいかの名産地」そのものだし、歌詞も結婚というテーマが共通しています!

一方、メロディーは少し違っていました。その辺の詳しい事情が不明で、日本に持ち込む時に改変した可能性なども考察されていたのですが、先日偶然、歌詞は上記1909年初出の一連の作品群と似ていて、メロディーは「すいかの名産地」にそっくりなバージョンの「Down Where the Watermelons Grow」を見つけました。これは、アメリカの教会関連のレクリエーション歌集「Recreational Songs」(1949年出版)に収載されていたものなので、以下、便宜的に「1949年版」と呼ぶことにします。

歌集の詳細は以下。

タイトル:Recreational Songs
著者:The Church of Jesus Christ of Latter Day Saints, Under the direction of the General Music Committee
出版元:The Deseret News Press
出版年:1949

1949年版の楽譜はこちら(↓)。

1949年版の歌詞はこちら(↓)。

(1番)
Ah's got a gal in Caroline
Down where de watermelons grow.
Some sweet day she will be mine.
Down where de watermelons grow.
Down where de watermelons grow,
How ah love her nobody knows
Ah all us go to see'er
In mah Sunday meeting' clothes
Down where de watermelons grow.

(2番)
Ah went to see her one night in May
Down where de watermelons grow.
Ah's now gettin' ready for ma' weddin' day.
Down where de watermelons grow.
(以下1番と同じ)

「Recreational Songs」(The Church of Jesus Christ of Latter Day Saints, 1949)

1949年版は作詞者・作曲者不明とされていますが、内容から明らかに1909年初出曲のバリエーションではないかと思えます。ところが、どういうわけか作者の情報が落ちてしまっていて、まるでマザーグースのような扱い。なぜこうなったのでしょう、教会のレクリエーション用ということが関係しているのでしょうか。非営利とかなんとか。

また、この1949年版には3番がありません。この時点ではまだ書かれてなかったのかな?とも思ったのですが、YouTubeで聴ける1927年版(↓)には3番があるっぽいです。英語はふわっとしか分からないのでカンですが。

なので、当時は3番がまだ書かれていなかったというより、何らかの理由でもともとあった3番を落としてしまったのかもしれません。いずれにせよ、「すいかの名産地」には3番がありますから、3番がついてる別の歌集を上坂茂男さんが見て、高田三九三さんに訳詞を依頼したのではないかと思いました。

まとめ

「すいかの名産地」(高田三九三訳詞)原曲を私も探してみました。
既に関連が指摘されている1909年初出「Down Where the Watermelons Grow」のバリエーションの中に、1949年出版の歌集に掲載されたものがあり、歌詞は2番までしかなかったものの、メロディーはそっくりでした。「すいかの名産地」には直接の原曲が存在し、まだ見つかってない他のバリエーションの中におそらく原曲があるのではないか?と思われます。


*bxjpさん、水科化結さん、2度にわたり記事引用させていただき、ありがとうございました!

*アイキャッチにきれいなすいかの画像お借りしました。ありがとうございます!


追記 「Old MacDonald Had a Farm」との関連性について

「すいかの名産地」と、上記1949年版「Down Where the Watermelons Grow」は、冒頭のメロディーが「Old MacDonald Had a Farm」と似ています。

一方、1909年初出「Down Where the Watermelons Grow」のカバー曲として発表されている曲たちは、「Old MacDonald Had a Farm」とは似ていません。

この理由ですが、1909年初出「Down Where the Watermelons Grow」がヒットして、1927年にはカバーされるなどして、アメリカ各地で歌い継がれていく中で、教会や地方のコミュニティーで、有名な「Old MacDonald Had a Farm」とちょっぴり混ざってしまったのではないでしょうか? その結果、いわば合いの子の海賊版のようなバージョンができて、それがローカルな歌集に収載され、日本に渡ってきたのではないでしょうか。全部私の想像ですが、そういうことなら、日本で「すいかの名産地」と「ゆかいな牧場」が両方紹介されたのも自然に思えます。両者が同じ曲由来なら変な話ですが、たぶん、もともと別の曲だったのでしょう。