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童謡「いい声だいい声だ」の原曲を探してみた

思い返せば、小学校で初めて習った外国語の歌は、ドイツ語の「かえるの合唱」でした。

そう、私はドイツの小学校に行っていたのです…

というのはウソです。すみません。遡ること数十光年、東京から数百キロ郊外の某町立小学校で、なぜかドイツ語の「かえるの合唱」を音楽の授業で習った覚えがあります。

「かえるの合唱」は、元をたどればドイツのラインラント地方の民謡。昭和時代に、岡本敏明さんという玉川大学の先生が、スイスから来日したWerner Zimmerman博士に直接教わって、ドイツ語の歌詞を分かりやすい日本語に直し、教科書に採用されて日本中で愛唱されたそうです。そんな大ヒット曲だったので、田舎のちびっ子たちに原曲のドイツ語バージョンを教える、"ガチ勢"な先生もいたのでしょう。

※アイキャッチに可愛いカエルの合唱のイラストをお借りしました。ありがとうございます。




「いい声だいい声だ」のルーツはドイツ古曲?

さて、個人的に「かえるの合唱」に引けを取らないくらい懐かしい童謡が、「いい声だいい声だ」です。一度聞いたら二度と忘れられないユーモラスな歌詞(引用したいのはやまやまですが諸般の事情で控えます)で、どこか飄々としたメロディーとぴったり。

「いい声だいい声だ」はさすがに日本の歌だよね?と思って調べてみたら、意外なことにドイツ民謡でした。しかも、作詞は「かえるの合唱」の岡本敏明さん。

1957年(昭和32年)に出版された、岡本敏明編『輪唱のたのしみ』(音楽之友社)を見ると、確かに「岡本敏明作詞、17世紀ドイツ古曲」とあります。

17世紀ということは16XX年。そんなに古かったとは驚きです。もともとはどんな歌だったのでしょう?

グーグル先生に訊いてみましたが、詳しい情報を見つけることができなかったので、ドイツのWebサイトを探してみたところ、原曲らしきものがありました。


17世紀ドイツ民謡「Der Fink ist tot!」

『輪唱のたのしみ』に書かれていたとおり、この歌は17世紀の民謡でした。タイトルは「Der Fink ist tot!」(訳:フィンチが死んだ!)。ドイツの民謡アーカイブスに、楽譜や詳細な情報が掲載されています(↓)。

上のサイトによれば、作詞者・作曲者は不明。

楽譜は「いい声だいい声だ」とほぼ同じ。3声の輪唱で、低音の伴奏パートが付いているところも共通しています。

歌詞は以下のように書いてあります。ドイツ語は1ミリも分かりませんが、翻訳ツールを使ってミリシラなりに訳してみました。

Hei, Mutter, der Fink ist tot!
Hätt ihr dem Finken zu trinken gegeben, wäre der Finkege lieben am Leben.
Hei, Mutter, der Fink ist tot!

https://www.volksliederarchiv.de/hei-mutter-der-fink-ist-tot/

ねえ、お母さん、フィンチが死んだよ!
もしお母さんが水をあげていたら、生きていただろうな。
ねえ、お母さん、フィンチが死んだよ!

フィンチは小鳥で、日本で言うところの文鳥、カナリア、ジュウシマツなどが該当するらしく、ドイツ語のWikipediaには下のような画像が引用されていました。かわいい。

というわけで、「Der Fink ist tot!」は、かわいい小鳥に水をあげなかったから死んじゃったという趣旨の歌で、

「いい声だいい声だ」とは、

全く違う歌詞だった

ことが分かりました。

日本語の歌詞は、100パーセント混じりっけなしの日本オリジナルでした。

作詞者の岡本敏明さんは、『輪唱のたのしみ』の前書きで下のようにおっしゃっています。まさにここで言われているとおり、ドイツの古い童謡を、のびのびと楽しく歌える日本語の歌に作り替えて紹介されたのでしょう。

音楽教室はまず、楽しい歌声で満ち満ちていなければなりません。しかもその歌はとりすましたお上品なものではなく、魂のそこからのびのびと歌うことのできるものでありたいのです。

岡本敏明 編『輪唱のたのしみ』,音楽之友社,1957,P.2


まとめ

日本の童謡「いい声だいい声だ」は、17世紀ドイツ民謡「Der Fink ist tot!」(フィンチが死んだ!)のメロディーに、「かえるの合唱」を手掛けた岡本敏明さんがオリジナルの歌詞を付けたものだった。


以上です。


オランダ語版

ドイツ語で原曲を歌っている動画は見つからなかったのですが、オランダ語版がありました。
この歌が外国でも歌われてるって胸熱!