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クリーニング屋に最近いつ行った?
人はクリーニングをするとき、大切な「何か」を思い出している。
ある人は大切な人にもらったコートを数十年ぶりにクリーニングに出し、亡き人を思い出す。
ある人は孫の成人式のために自分が当時着ていた着物を当時の思いを振り返りながらクリーニングに出す。
ある人は自分が若い頃働いてためたお金で買ったハイブランドのバッグをクリーニングに出し、自分が買ったのと同じ年頃に育った娘にプレゼントする。
人はクリーニングをするとき、大切な「何か」を思い出している。
同じ場所に72時間滞在して取材をし、一人一人の生き方にスポットライトを当てるという私の大好きな番組。
自分はコロナで昨年クリーニングをする頻度がめっきり減った。しかし世の中は動いていて、多くの人が何かしらの思いを持ってクリーニング屋を訪れていた。
そこに対照的な二人のお客。
一人は20代男性。キャバクラのボーイ。一週間一生懸命働いて、スーツに染み付いた臭いを消すためにクリーニングに来た。
以前は工場勤め。作業を繰り返す仕事の内容に「つまんね」と思い今の仕事に転職。仲良くなれるお客さんも気難しいお客さんもいて毎日様々な人と触れ合うこの仕事が、とても楽しいらしい。
ボーイは着て良いスーツやワイシャツの色が地位によって決められていて、地位が上がっていくと色に自由度が増していく仕組みになっている。
クリーニングに来るたびに、いつか違う色のスーツが着られるように、先輩に指導された「一流のホテルマンのように」スーツをかっこよく着こなし、接客する自分を夢見て、そして、いつかは自分の店が持てるように、思いを持って週に一回店に来る。
もう一方は、80代女性。
とは言っても、バリバリのキャリアウーマン。保険の営業を現職でしている。ハキハキとした口調で力強く生きている雰囲気。衰えなど微塵も感じない。
休みになる週末にカーペットをクリーニングに出す。気持ちの良いカーペットで、仕事後の毎日の疲れを癒すために週に一回店に来る。
その女性が番組の記者の「お仕事大変じゃないですか?(多分年齢と仕事内容を考えた時に出てきた質問)」という質問に対して
「大変じゃない仕事なんてないでしょ。でもまだまだ大丈夫よ。」
この二人は、大切な「何か」が違う
20代の彼にとって大事なのは、ビジョンとやりがい
80代の彼女にとって大事なのは、生き方・哲学
二人が同級生だったら
「しんどい仕事なんてやって意味あるの?もっと世界を広く見なよ。」
「つまらないから仕事をやめるなんて弱腰じゃやっていけないわよ。」
と居酒屋で論議が起こりそうなものだ。
私はそれを見ていて
二人の生き方をどちらも否定する気にはなれず
そしてこの対比を通して見る世界がとても美しく誇らしく見えた。
20代から80代の年の差の間に、
どこかで時代の転換期があって、きっとこれからもある。
でも世界は動き続けていて、同じ世界に違う時代を生きた人間同士が暮らしている現実。
このように世界を自分で「言語化」して「妄想」していたら
なんか
いとをかし
な気分になったとさ。