共謀共同正犯
共同正犯とは?
共同正犯とは、「二人以上共同して犯罪を実行した」(刑法60条)場合に成立します。
ここで基本原則に戻りますが、犯罪は自分がやったことについて成立しますよね?そんなの当たり前じゃん!って思うかもしれません。
しかし、共同正犯は、他人がやったことについても自分に罪が成立するわけです。
たとえば、3人で共謀して10万円分の商品を万引きして、分け合ったとしましょう。Aは5万円分、Bは4万9千円分、Cは1千円分のお菓子を万引きしたとします。
仮に刑法60条がなければ、A、B、Cはそれぞれ5万円、4万9千円、1千円の窃盗罪の罪責を負うこととなります。
しかし、刑法60条があることにより、Cは1千円しか盗んでいないのに、10万円分の窃盗の罪責を負うことになります。
1千円の万引きと10万円の万引きでは、同じ窃盗罪でも結果は大きく違ってくるでしょうから、犯情が全然違うわけですよね。刑法60条には、こういう機能があるということを、しっかり理解しておきましょう。
「共謀」とは?
共同正犯が成立するためには、共謀が必要です。
共謀には、2要件説~5要件説までいろいろありますが、結局のところ、意思連絡して、自分の犯罪として行った(正犯性)場合に共謀が成立します。「重要な役割」などを要件として切り出しても良いですが、そもそも重要な役割を果たしたのに正犯性が無いなどということは考えにくいので、あまり要件説にこだわる実益もないのではないかと思います。
共謀共同正犯
共謀共同正犯は、全く実行行為を行っておらず、先の例で言うと、1千円どころか、1円分の万引きも行っていないケースです。
それでも犯罪を成立させるのは罪刑法定主義に反し、共謀共同正犯などというのは成立しない、という古典的な立場があるため、わざわざ切り出して勉強をすることになります。
しかし、共謀共同正犯が肯定されるのは、今では判例通説異論がないところなので、結局のところ、共謀共同正犯というのは、実行共同正犯の延長戦上で、0円しか万引きしていないというように考えれば良いわけです。
難しく考えると分かりづらくなるので、このくらいのフワっとしたイメージを持っておけばよいと思います。
おまけ
共同正犯の処罰根拠について、かつては相互利用補充関係という話がありました。しかし、今では判例を素直に解釈すれば、因果的共犯論を採っており、相互利用補充関係は古い考え方だと思われます。間違ってはいないと思いますが、因果的共犯の立場で十分説明ができると思います(少なくとも試験対策としては)