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しおり通り「書肆 久遠店」からお届け、2025年本屋大賞ノミネート5作品

しおり通りの夜は静かで、心地よい書の香りが漂っている。

「書肆 久遠店(くとうてん)」は、その通りにひっそりと佇む古書店だ。木製の扉を開けると、ほのかに漂う紅茶と紙の香りが訪れる者を迎え入れる。整然と並べられた本棚には、長い年月を経た古書が静かに眠り、店内の隅には小さな読書席が設けられている。窓際のテーブルには、ついさっき誰かが置いていったのか、紅茶のカップが一つ。

くろまる。は、カウンターの奥で静かに本を読んでいる。その瞳は書物の文字を追いながらも、訪れる客の足音を聞き分け、必要な一冊を即座に見極める。店の外では、しおり通りのランタンが柔らかな光を放ち、通りを歩く人々を温かく包んでいる。夜風が吹くたびに、古いページがわずかに揺れた。

今宵、書肆 久遠店の一角では、2025年本屋大賞のノミネート作品が並べられている。くろまる。が選び、読み込んだ作品の中から、まずは5冊を紹介しよう。


『アルプス席の母』 早見和真(小学館)

高校野球の名門校でプレーする息子を持つ母親が主人公。スタンドから見守る母の視点を通じて、親子の関係、成長、夢の重みが描かれる。母の葛藤と愛情、そして野球を通じた家族の物語が胸に響く。

くろまる。「ただのスポーツ小説ではなく、家族という最も身近な存在と向き合う物語。母親視点で進んでいく書き方が斬新で、読後には親子の絆について改めて考えさせられる作品です。」


『カフネ』 阿部暁子(講談社)

家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝う主人公。人と人の優しさの形を繊細に描き出し、日常の何気ない瞬間に込められた愛情を浮き彫りにする物語。登場人物たちの関係がゆっくりと深まりながら、そっと心を温めてくれる。

くろまる。「カフネ、という言葉が持つ響きに惹かれた。登場人物たちの心の触れ合いが美しく、読むたびに誰かを大切にしたくなる一冊!」


『禁忌の子』 山口未桜(東京創元社)

救急医の下に運ばれてきた身元不明の遺体は、自分と瓜二つだった。なぜ死んだのか、そして自分との関係は? 過去を辿るうちに次々と不可解な事件が起こる医療×本格ミステリの傑作。

くろまる。「息をのむ展開と巧妙な伏線に引き込まれる。医療とミステリが見事に融合し、読後に深い余韻が残る作品。これがデビュー作というのも驚きですね!」


『恋とか愛とかやさしさなら』 一穂ミチ(小学館)

プロポーズをされた翌日、恋人が盗撮で捕まった。恋とか愛とかやさしさがあればこの罪を許すことができるのだろうか?受け入れることができるのだろうか?そんな二人の物語。

くろまる。「物語の前半は女性の視点で進んでいき、男性の罪を許せるのか同課で進んでいくが、後半になるとこれが逆転し…」


『小説』 野崎まど(講談社)

タイトルが示す通り、これは「小説」そのものをテーマにした作品。好きな小説を好きなだけ読みたいとある屋敷に潜り込んだ主人公が、「小説」の意味を問い直す物語。

くろまる。「言なぜ人は小説を読むのか。小説とは何か。小説を愛して小説に裏切られる。読書が好きな方にはぜひ読んで欲しい一冊です!」



夜が更けるにつれ、書肆 久遠店の灯りが通りを優しく照らす。しおり通りを行き交う人々が、その明かりに誘われるように店へ足を踏み入れる。

さて、後半5冊の紹介は、総合庁舎のにゃるきが担当することになっている。次回は、彼の視点から残りの5冊をお届けしよう。


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