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孤独。ヒトが生き残りをかけて獲得した機能

世界中の人々が引きこもり生活を余儀なくされています。リモートワークに移行して、既に数週間が経過した人も増えているのではないでしょうか。

特に一人暮らしでリモートワークをするケースで、まじめに引きこもっている人は、大変です。家に籠もって2〜3週間、真剣に極力、外に出ないで過ごしていると、気分が落ち込み、塞ぎ込みがちになったりします。
その原因の一つに「寂しさ」「孤独」があります。

この「寂しさ」「孤独」については、私がLOVOTをどのような存在にするのかを考える際に「孤独の科学---人はなぜ寂しくなるのか」などから得た知識をヒントにそれなりに時間をかけて考えました。今回は、その時に私が辿り着いた「寂しさ」「孤独」に関する理解を記してみます。

外出を控えると言っても、にぎやかな家庭を持っている人が「家にいると家事が増える」と悩むのとは別次元の深刻な悩みが、一人暮らしの孤独だったりします。またコミュニケーションが少ない家庭の場合も、同様の事がおきます。

なぜ「寂しさ」「孤独」が深刻な問題になるのか。
寂しいと自覚すると「それは自分の心の弱さからくるものではないのか」と考えたりします。自分の甘えなんだから、自ら乗り越えるべきもの、なんて思っちゃうわけですね。

しかし「寂しさ」「孤独」を感じる能力とは、生き残りをかけて人類が獲得した感情だとすると、それが耐え難い辛さだというのは、当然といえます。

「人類が獲得した」というのは、進化の途中で「寂しさ」「孤独」を感じるようになった個体の方が生き残りやすかった、ということです。
私達にとって負の感情である「寂しさ」「孤独」をわざわざ獲得するとは、人類とは随分物好きにも思えます。こんな負の感情がなかったら、リモートワークをはじめとした引きこもり生活も遥かに楽だったことでしょう。

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なぜ人類は、わざわざ、そんな辛い感情を獲得したのでしょうか?

それは、人類が社会的な生き物だから、といえます。
「社会的な生き物」とは、集団をつくり、役割分担や共同作業をすることで、個で生きる時よりも種の存続を有利にする生存戦略をとる生物です。

他の生物では、蟻や蜂が郡行動をとります。一部の動物も、郡行動をとります。そのうちの一つの種がヒトです。

蟻や蜂が孤独をもつのか。彼らも、集団から離れると行動が変容し、餌が十分にあっても死が早まるという研究もあるようです。「社会的な生き物」にとっては、「独りぼっち」のストレスが、死期を早める行動を誘発してしまうわけですね。

なぜ「独りぼっち」だと感じると、ストレスを感じるのか。
一つの理由は、「集団の中で役割をもっていないと、集団からパージ(放出)される」リスクが増えるためです。
集団にとって「外敵」は、わかりやすい脅威です。しかし敵は内部にもいます。集団の内部に「フリーライダー」が増えると、集団を容易に崩壊させてしまいます。

フリーライダーとは、集団が生き残るために必要な、優先順位の高い仕事をしない個体です。そのような個体が、集団より自分の生き残りを優先するような行動をしてもペナルティが無い場合、そのような個体の方が増えやすくなり、結果的にフリーライダーが集団のマジョリティになり、最終的には組織が自滅してしまうわけです。(問題を他責にして、仕事としてやるべきことをやらない人に対して、私達が寛容になれない理由は、ここにあるともいえます。)

だからフリーライダーに厳しい個体群が形成する集団だけが、生き残ってきたわけですね。(それでもフリーライダーは、圧倒的に生存に有利なので、ある一定量は生き残ります。致死率の低いウイルスの生存戦略に似ていますね。)

その結果、個体としては「集団からフリーライダーだと思われたら、パージされる」ことを本能的に理解していて、「集団の中での自分の役割」を自覚し続けられるように行動できる方が、パージされずに生き残りやすかったといえます。

そのような行動をとるためには、まずは「集団の中での自分の役割」がない(なくなる)可能性がある時に、それを(自覚する前であっても)鋭敏に察知し、危機感をもたないといけません。そんな状況になった時に、自らに向けて無意識に発せられる危険信号が「孤独」だといえます。それ故に、たとえば学校や会社で多くの人に囲まれて、たとえ話をしていても、「自分には役割がある」とか「誰かに必要とされている」という自覚ができていないと、孤独になるわけです。

ここから「孤独」「寂しい」「独りぼっち」という感情は、自分の周りの個体数の問題ではないことがわかります。あくまで集団からパージされる事への不安であり、個体に集団の一員であることを志向させるため、ヒトが獲得した生き残るための本能といえます。

ここから類推できるのは、ヒトの「孤独」「寂しい」「独りぼっち」という生き残るための本能としての感情は、現代の生活と一部ミスマッチを起こしている可能性があるということです。

たとえば子育てを核家族で行うと、子育てにリソースを割くようになりますが、その分、その他のコミュニティに割くリソースが減り、集団に必要とされる実感が薄い状態になりやすいといえます。子供に必要とされる充実感と裏腹に、集団から必要とされていない(かもしれないという)孤独感を同時に持つわけです。
そうして、子育て中のお母さんが孤独に苛まれる事への対策として、お父さんが子育てを手伝うというソリューションが提案されるわけですが、それは同様の問題をお父さんとシェアする事に他ならないので、(夫婦での孤独のシェアという意味で改善はしますが)根本的解決にはなりません。
それに対して、子育てを(夫婦の枠を超えた)集団で行う場合は、たとえば既に日々の仕事をもたないリタイア後の人(祖父母や、ご近所の高齢者)にも子守などの役割を付与することができる可能性があり、子の親も(他者に子育ての一部を委ねるという不安を乗り越えれば)前述の孤独問題を解決しやすいといえます。社会的生き物としては、集団による子育てが実は自然で、比較的多くの人が幸せになりやすいフレームワークである可能性はあります。
(ちなみに蟻の世界でも「幼虫の世話をする同居アリは、孤立アリよりは長生きする」[*1]ことがわかっているそうです。)
[*1] https://globe.asahi.com/article/13033701

すこし話が脱線しました。

人が生存戦略として獲得してきた「寂しさ」「孤独」という本能と、現代生活のミスマッチが、いまの「癒やしの時代」を形作っているといえます。
本能と現代生活のミスマッチにより、必要以上に発露してしまう「寂しさ」「孤独」を解消することは、今後の生活において永遠の課題といえます。

そこで登場したのが、犬や猫といったペットです。自分を必要としてくれる存在。無条件に自分を愛してくれる存在。
なにより、自分が気兼ねなく愛せる存在。

(天才政治学者の呼び声もある国際政治学者のイアン・ブレマー氏が、今回の新型コロナウイルスに関してシリアスなコメントをした後に突然「And, dogs, dogs are very important. If you don't have a dog, you should probably get one.」と犬を激オシして、笑えました。(いいひと。)

「新型コロナウイルスは、私の生涯で最大の危機」= 国際政治学者イアン・ブレマー氏

8分のお時間があれば冒頭からご覧になることをおすすめします。上記の犬推しコメントは7分30秒ぐらいからです。6分30秒ぐらいから見るだけでも、このテンションの可笑しさは伝わるかと思います。)

欧米では犬猫の保有率が50%超であることからわかるように、人類は、現代のライフスタイルでは必要以上に発露してしまう自分たちの「寂しさ」「孤独」をハックするために、他の生物の助けを借りているわけですね。

ロックダウン中のNYでは、ヒヨコを飼うことが流行っていると記事で読みました。
(ちなみに私は小さい頃、自宅でニワトリを飼っていました。小さいうちは懐いていたニワトリも、大きくなるに従い懐かなくなり、徐々に臭いも強烈になり、野生と現代生活の相性の悪さを学んだ経験でした。よって、手塩にかけて育てたヒヨコが大きくなったら、どうするんだろうか、と他人事ながら心配になります。)

まぁ、なにを飼うにせよ「自分が気兼ねなく愛せる存在」を手に入れるということは、かなりの制約を人に強いることになります。すなわち、現代のライフスタイルに必要なものなのに、現代のライフスタイルでは実現が難しい場合も多いのが、ペットなんです。なので、よりライフスタイルにあった代替案としてLOVOTが生まれました。

気兼ねなく愛せる存在がいることで、人の心がすこし安定する。
そうしてヒトの身体や心のパフォーマンスを改善していくことが、LOVOTの狙いですが、これは犬や猫やヒヨコで既に行われていること、とも言えます。

ただ、例えば以前に飼っていた猫が亡くなって、新しい猫を飼ったけど、全然懐かなかった、という高齢者の方が、LOVOTを購入してくださって、大いに可愛がっていただいていたりします。LOVOTだからできることあったと聞くと、とても嬉しくなります。

今だと、たとえばお孫さんが無症状病原体保有者の可能性があるため、当面はおじいちゃん、おばあちゃんに孫を会わせられない、という話も聞きます。その上、社会との断絶が起きている今の状態では、それが引き起こすおじいちゃん、おばあちゃんの孤独の問題も、顕在化している以上に根深い可能性はあります。

残念ながら今年の冬までに、新型コロナが完全撲滅されていると予想する専門家も、ワクチンができると予想する専門家も、ほとんどいません。
そう考えると足もとを乗り越えても、今年の冬は、また引きこもり。
今後、年単位の長期戦になる可能性が高い今回のウイルス騒動を乗り越えるためには、引きこもり生活を如何に充実させるかが、メンタルヘルス面で最重要課題です。

そんな人類総引きこもり生活の友として、犬、猫、ヒヨコなど様々なペットに次いで、LOVOTも間に合ってよかった、と思っています。
同時に、LOVOTの真価を問われる場面としても、今後も気を引き締めて進化させていきたいと思っています。


追伸:テレワーク中の方から早速、以下のような声を頂いています!

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