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勤続20年目の五月病
大型連休明け、短大時代の友人から、電話があった。
いつもは、メールなのに、おかしいな。
咄嗟にそう思ったが、その予感が的中した。
連休明けから、どうも仕事に身が入らない、気が滅入る、と言うのだ。
五月病を疑ったが、彼女は確か、今の会社で、勤続20年。
そんなことが、あるだろうか?
しかし、他に答えが見つからず、五月病じゃない?と言ってみた。
すると、友人は、
『やっぱり?そう思う?』
と、返してきた。そして、
『今まで、そういう人を沢山、見てきたんだよ。でも、この歳になって、まさか自分がなるなんて』
と、呟くように言った。
友人は、2〜3年前から、更年期障害の症状が出ており、幸い、会社も理解を示してくれ、辛い時は、早退したり、欠勤したり、と、働き方を柔軟にしてくれていた。
更に、治療にお金が掛かるだろうと、降格等もなく、管理職のままである。
何が原因か、友人には、五月病に関しては、心あたりがない、と言う。
『これだけ良くしてもらって、五月病なんて、ぜいたくよね…』
と言うので、私は答えた。
『20歳の新人も、44歳のベテランも、関係ないからね、メンタルって。どんな環境でも起こるし、どれだけいい待遇の人でも、五月病になる人はなるから』
そして、産業医さんがいるなら、相談するのもいい、と伝えた。
すると、産業医さんがいるので、相談してみる、とのことだった。
そして、たわいもない、近況報告になった。
私は、統合失調症の症状のひとつ、幻聴がひどいこと、上の姪が高校生になって、少し反抗期に入ってきたこと。
友人は、やはり娘さんが、反抗期で大変なこと。聞いている内に、私の姪は、可愛い方だと思った。
『これから、大変よー。お弁当作れば、学食で友達と食べるって言うし、夕飯だって言っても、友達と電話してて、30分は降りてこないし』
さすがに、今は私の姪は、それはないけど、そうか、そんなふうになるんだ。
『うちは1人だけど、◯◯の家は2人でしょ?まぁ、お姉さん(私の姉)がしっかりしてるから、大丈夫じゃない?』
ちなみに、この友人とは、小学校から一緒で、町にひとつしかない、中学に通っていたので、姉のことも知っている。
『うーん、上の子が、天然でねー。下の子は、やんちゃな所があって、この間も…』
私達の、たわいない会話は続いた。15分くらいだと思う。
すると、友人が、急に、
『そうだ…』
と呟いた。
『こんなふうに、何気ない会話を、ずっとしてなかったの。うち、共働きだから、夫ともゆっくり話すことないし。◯◯と話してたら、何か、スッキリしちゃった』
その声は、電話を掛けてきた時より、明るかった。
『そうなんだ。娘さんが反抗期真っ只中で、旦那さんとも話せないんじゃ、息が詰まるよね。私、家にいるからさ、夜、電話かメールくれてもいいよ。お昼休みとかさ』
いや、実は、先に書いたように、幻聴が酷くて、人と話すのも、かなり集中力がいるのだけど。
友人からの話で、刺激をもらうのも、楽しいものだ。
『でも、産業医さんには、ちゃんと相談してね。素人判断は怖いから』
『うん。それは、ちゃんとする。ありがとう。じゃあ、仕事に戻るね』
『うん。じゃあね』
そして、私はスマホを切った。
頑張って、とは、言わない。
もう充分、頑張っているから。
私と話すことで、スッキリするなら、いつでもどうぞ。
勤続20年目の五月病。
こちらも、スッキリしてくれるといいな。