空を見ると心は晴れ晴れ。
私は、子供の頃から、空を眺めるのが好きだった。
空は、色々な表情を見せる。
毎日、その顔は違う。
季節、風などによって変わるし、その変化を感じることが大好きだ。
しかし、この私の空好きは、決して
周囲に受け入れられたものではなかった。
幼い頃は、縁側に座って、大きな窓ガラスに向かって、ただひたすら、空を眺めた。
すると、15分程で、母から、
「もういいでしょ!こっちに来なさい!」
と、怒鳴られてしまう。
更に、幼稚園に入ると、1日のスケジュールが決まっている、そんな生活を初めてしたものだから、頭が混乱し、落ち着くために空を眺めると、先生から、今は歌を歌う時間だの、絵を描く時間だのと注意されてしまう。
小学校では、窓辺で空を眺めていると、
同級生が「眩しいからカーテンしめるからどけよ」と言って、シャッとカーテンを閉めた。
中学校以降は、さすがに学習して、
教室の窓から眺めることはせず、
放課後の図書館で、家から持参した、
空の写真集を眺めた。
空が好きだからと言って、気象予報士になるとか、そういう考えはない。
私はただ、空を眺めるだけで、充分なのだ。
若い頃は、空が好きと言うと、必ず
気象予報士になれば?と、簡単に言う方がいたが、そうではない。
ただ、空を眺めることが好き。
それだけでは、いけないの?
ありがたいことに、今は自室を持ち、
窓から好きなだけ空を眺めている。
空に関しては、ひとつ、忘れられない思い出がある。
10代の頃、埼玉に住んでいた私は、
東京の病院で、ある手術を受けることになった。
術後の回復に、時間が掛かると聞いて、
私はお気に入りの、空の写真集を数冊、
持参した。
その上に、数日分の着替えや、洗面用具などをバッグに詰めると、結構な荷物になってしまった。
病室に案内され、カーテンが開かれた窓を見るなり、私はそこに駆け寄り、
「ねぇ、お母さん、やっぱり、東京と埼玉の空は違うよ」
と、同行した母に言った。
振り返ると、無表情の母と、
驚いた顔をした、看護師さんがいた。
「また空?いいから早く片付けなさい」
母に言われて、私はしゅんとして、
荷物を片付けた。
それを見た看護師さんは、苦笑い。
30年経った今でも、あの母の冷たい言い方が忘れられない。
私の空好きを、心から分かってくれる方は
いなかったけれど、それでいい。
私は、ただ、澄んだ青空を眺めているだけで、幸せだ。