
映画『美晴に傘を』共感した1シーン。
『美晴に傘を』を観て、とても共感したシーンがある。
お風呂上がりの美晴の髪を、母の透子が
ドライヤーで乾かしているシーンだ。
ただし、美晴は、自分の耳を両手で塞いでいる。
聴覚過敏のない方は、ふーん、とか、
結構大変なんだね、で終わるだろう。
しかし、聴覚過敏のある方は、
膝の皿が割れるほど打って共感するのではないか。
大きな音が苦手、更に、機械の音が苦手、
という方(私も含め)には、
ドライヤーを使っている時間が、これまた
地獄なのだ。
特に、耳元の髪を乾かす時は、覚悟がいる。
美晴はロングヘアだが、私はショートボブなので、常に耳元に風と音を感じる。
きちんと乾かさないと、頭皮が臭ったりするので、毎回、耳栓をして乾かしている。
機械の音が苦手なら、高い音も苦手で、
救急車のサイレン、パトカーのサイレンなども苦手だし、何より、普段の生活の中で、
苦手なものも多い。
そのひとつが、ドライヤーなのだ。
文明の利器も、苦手な人にとっては、
厄介者でしかない。
静音タイプを買ったのに、前と変わらない!ということもあった。
子供の頃、私はロングヘアだったが、
これはひとえに、美容室のドライヤーをかけている時間が長いと知っていたからだ。
髪を切りにいけば、必ずドライヤーが登場する。
母方の実家が理容室なので、そのへんの事情は分かっていた。
透子のように、子供の髪を乾かしてくれるような親ではない。
風力を弱にして乾かしていると、父から
「いつまでやってるんだ!」という声が飛ぶ。
そのため、嫌なのを我慢して、強で乾かしていた。
先に挙げた、あのシーンは、私の憧れでもある。
いや、この映画全編がそうかもしれない。
私の両親は、聴覚過敏に理解がなかった。
特に、統合失調症を発症した、27歳頃から、
より音に敏感になった。
窓の外で雨が降る音さえ、うるさいと感じる。
そんな時、透子なら、美晴の父が書いた絵本を読んで聞かせただろう。
何とも羨ましい。
ドライヤーがうるさい、と、母に言った時、
返ってきた返事は「はぁ?」だった。
そもそも、ドライヤーを使わなかった母に、あの音は分からないのだ。
美晴の家族は、彼女の特性をよく理解している。
そのため、美晴が嫌がる音は、出来るだけ排除する。
それが自宅以外でもだ。
私の両親に、そんな概念はない。
我慢しなさい。
これが、両親のスタンス。
だからこそ、愛おしそうに、娘の髪を乾かしている、透子が美しく見えたし、
美晴も安心して任せているように見えた。
このシーンから、周囲の理解があるのと
ないのでは、こんなに違うのか、と痛感したし、美晴が耳を塞いでいるのが、そうなのよ!と、かなりの共感を覚えた。
たかがドライヤー、されどドライヤー、
なのである。