身のまわりのデザイン その①:ユニバーサルデザイン
街なかの公衆トイレってあまり使ったことないです。生理的に受けつけないとか衛生的にどうのこうのとかではなく、なんかこう……妖怪とかが出そうで怖いんですよね。
どうも、サントリー こだわり酒場のレモンサワーを愛する私です。
街角コンシェルジュ、ではなく観光案内コンシェルジュとして働きはじめてしばらくのこと。冷たい雨の中、いらっしゃったお客さんに「ユニバーサルシートのある公衆トイレは近くにありますか」と訊かれました。
初めて聞く単語だったので(は?ユニバーサルスタジオ?(空耳)???なんぞ?)と内心思っていたのですが、笑顔で「少々お待ちくださいませ」と言い、となりにいた地元民スタッフのお姉さんをチラ見すると、彼女は心得たものか、大人も使える介助用ベッドですね?と言うと、街の地図を片手に案内をはじめました。ぬぬ!ユニバーサルベッドとは大人も使える介助用ベッドのことか!おぼえた!
英語でユニバースって言えば、宇宙とか、世界とかいう意味ですよね。マーベルユニバースとか。でも、よく見ると、全人類って意味もありました。なるほど、だからユニバースの形容詞型であるユニバーサルには世界的な、宇宙的な、の他に普遍的な、万人向けの、という意味があるんですね。勉強になりました。
ユニバーサルなんとか、ってここのところよく聞く気がします。ユニバーサルベッドといったら、万人向けの──転じて大人も使える介助用ベッド、ということですけれど、そもそもユニバーサル(誰でも使える)な物品や環境を作ろうとした機運は、いつ頃から始まったものでしょうか?
■ユニバーサルデザインの定義
ユニバーサルデザイン(英: universal design、UD)とは、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いにかかわらず、出来るだけ多くの人が利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のことであり、またそれを実現するためのプロセス(過程)である。(wikipediaより引用)
この概念は1985年、アメリカはノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターにおいて、ロナルド・メイスという人によって提唱されました。メイスさんは自身も幼少のおりにポリオ(ポリオウイルスの中枢神経感染により生ずる四肢の急性弛緩性麻痺を典型的な症状とする疾患。かつては小児に多発したところから小児麻痺とも呼ばれていた)を患って以来、車椅子の生活となり、進学したノースカロライナ州立大学でも車椅子では行けない所があって苦労されたそうです。
ユニバーサルデザインの特徴のひとつに、ある特定の層に向けたデザインではない、ということが挙げられます。つまり、障害者や高齢者が使いやすいようにデザインされたバリアフリーデザインとは違う、ということです。身体的弱者のため、というイメージがあるのか、このふたつのデザインは混同されがちですが、そもそも根本理念からして違うものです。
■ユニバーサルデザインの7原則
・どんな人でも公平に使えること(Equitable use)
利用時における公平性です。階段とスロープ、引き戸と観音開き戸を比べて、どちらが万人に使えるものか比べるのがわかりやすいでしょう。
・使う上での柔軟性があること(Flexibility in use)
利用時における柔軟性、自由度です。エレベーター、エスカレーター、階段を選べることや、テーマパークにある高さの違う水飲み場などが該当します。
・使い方が簡単で自明であること(Simple and intuitive)
単純で直感的な利用ができることです。初めて見るものであっても何を目的としているかわかるような形、さわって区別ができる物品などがあてはまります。
・必要な情報がすぐにわかること(Perceptible information)
情報のわかりやすさです。文化圏の異なる人がみてもわかるような表示、子供が見ても理解できる説明、老人が見やすい大きさの文字などがそうですね。
・簡単なミスが危険につながらないこと/安全性(Tolerance for error/Safety)
うっかりミスや意図しない行動などが危険につながらないようにすることです。ふたをしなければ動作しないジューサーや、扉を開ければ即 停止する電子レンジのような家電製品がわかりやすいと思います。
・身体への負担の少なさ(Low physical effort)
無理な姿勢や強い力を必要とせず、楽に、効率的に使えることです。手を怪我してものが握れないときに、握って回す方式の蛇口やドアノブと、レバー式のそれとではどちらが使いやすいでしょうか?
・利用のための十分な大きさと空間が確保されていること(Size and space for approach and use)
狭い多目的トイレや、入り組んだ高低差のある道を進まなければならない歩道、小さすぎて押しづらいスイッチなどありえませんよね。日本の特に都市部では、大きな空間の確保が重要な命題となります。
■ユニバーサルデザインで未来をつくる
先にも述べましたように、ユニバーサルデザインとは特定の誰かのためを目指したものではなく、広く万人に──年齢、性別、人種、能力を問わず、誰にでも使いやすいようにという目標を目指してつくられた理念です。バリアフリーとの大きな違いはここにあります。バリアフリーは、ある特定の人の(高齢者、障害者など)障害=バリアとなるものを取り除いていく、いわば引き算の考え方です。それに対してユニバーサルデザインは、最初から誰にでも使いやすいようにデザインすることによって、より効率よく、より余裕を持たせた社会を目指すことが可能になります。
もしユニバーサルデザインの理念が無いままだと、例えば、古くからある木造家屋の密集する地区で、一軒のおうちにバリアフリー工事でエレベーターをつける場合、まずそこまで工事車両を入れることすら困難になるでしょうし、スロープをつけようとしたらひとりで利用できないほどの急角度になってしまったりすることが容易に想像できます。
また、お話の本筋からは逸れますが、文化財に指定されている建物なども、文化財保護法によって厳重に保護されていますので、スロープやエレベーターをつけるなどといった外観を損ねるようなバリアフリー工事などは基本的にできないと思ってよいでしょう。デザインの段階から考えることは、そういった面から見ても重要だと言えます。
■終わりに
ユニバーサルデザインとバリアフリーの違い、ユニバーサルデザインの7原則を知っているといないとでは、世界の見え方が変わってくるはずです。ふだん何気なく目にしているあれは、どんなデザインなのか。使いにくいなー、と思うこれは、どうすれば使いやすくなるのか。ひとつひとつの形に意味があり、作られた当時の考え方が反映されています。
それと同時に、実際にユニバーサルデザインの施設がどこにあるかを知っておくこと/知ってもらうことも大切です。今回の私のように「そういったものを知らない」「あることを知らない」というケースは、往々にして起こり得ることと思います。日々これ勉強、そして広報ですね。
さて!とりあえず私は近場のどの公衆トイレがユニバーサルベッドを備えているか、歩いて探し回ってきます!
のは非効率なので!区の部署にかけあって調べてきます!
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、ごきげんよう。
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