手掌前腕冷却についての話
ごきげんいかがでしょうか、お嬢様修行中の私です。
暑い日が続く中、団扇であおいだり、冷たい飲料を飲んだり、クーラーの効いた室内でじっとしたりと、みなさまもそれぞれ暑熱対策を取って日々をお過ごしのことと思います。私もペットボトルの水を凍らせたものを持ち歩いて、首筋にあてたり中身を飲んだりしてしのいでおりますわ。
そんな中、「手掌前腕冷却」という耳慣れない暑熱対策を聞きました。こうして文字にすると一目瞭然で手のひらと前腕を冷やすのだとわかりますけども、音だけ聞くと嫌がるプライムミニスターキシダの腕をむりやりひっぱって冷却するのかと思ってフフってなりますわね。
やり方はかんたん、ある程度深い容器に張った10℃〜15℃くらいの冷水に腕を肘まで浸けるだけ。短時間でも効果がありますけど、10分も浸けていれば深部体温まで低下していくとのこと。
このやり方のカギは、手のひらにある特殊な血管「動静脈吻合」にございます。
動静脈吻合(Arteriovenous Anastomoses、以下AVA)とは、動脈から静脈へと直結している部位のこと。通常の血管が毛細血管を経由して体細胞に酸素と栄養を運んで静脈に合流する血管なのに対し、AVAは手のひらの他、足の裏や顔面など、胴体から離れた末端や、目鼻耳口など凹凸のある所に存在し、主に体温調節を担う血管です。毛細血管よりも径は太く、拡張して血流量を増やして放熱したり、完全に閉じて血流量を抑えることにより胴体の熱を逃さないようにするなど、体温の調整に欠くことのできないシステムを担っておりますわ。
いやいや、出先でそんな都合よく水を張ったタライや洗面所なんか無いよ、ですって?
いいえ!この手掌前腕冷却の肝は「手掌」というところにありますわ。
AVAは、手の甲側ではなく、手のひら側を通っているのです。つまり、冷たいものを握っているだけでも効果があるのです!
冷水だとすぐに温まってしまいますから、氷のほうが良いでしょう。ただし、10℃以下のものを握るとAVAは逆に体内の熱を守ろうとして《外部気温ノ急激ナ低下ヲ確認。AVA閉鎖ヲ開始》などという動作を起こしてしまいます。凍ったものを持つなら、タオルなどワンクッションを置くと良いでしょう。
私のやり方……凍らせたペットボトルの水を手で持って歩くというのは、期せずして理にかなっていたのですね!結露を防ぐためにタオルを巻いていたので過冷却の心配もありませんわ!
ただし、途中で飲んでしまうと、氷が中でカラカラして手に当たらなくなってしまうのが難点ですわね……なにかいい方法はないかしら。