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「知らない」を楽しめる音楽フェス-SUMMER SONIC 2024/ SONICMANIA

この3日間の思い出がとても良いものだったので、記憶が薄れないうちに。


当たり前が打ち崩されて

ソニマニ、サマソニと参加する自分を含め、今年のサマソニは多くの人にとって「参加できたこと」そのものがまず大きな財産のひとつだったと思う。
というのも、ソニマニ当日に歴代最強クラスの台風が直撃するのでは、ということでソニマニは開催自体が危ぶまれ、現にソニマニや続くサマソニのために地方から参加予定だった方は交通の影響で参加できなかった方も多かったからだ。
だからこそ、(開催前特に楽しみにしてた)ソニマニに参加できないのではないか、という不安を乗り越えた先にあったライブの盛り上がりはひとしおだった。
復活の祝詞を大いに打ち鳴らすサカナクション、かっこよすぎたパリ五輪閉会式でのパフォーマンスの流れで日本に凱旋しハピネスを撒き散らしたPhoenixのステージは、台風の中来られた喜びを噛みしめるように歓声を爆発させる観客とともに輝いていた。

ソニマニ一番の思い出はNia Archivesだ。
フェス開催目に少しだけ音源を聴いてみて「かっこいいかも!」と思い、見に行ってみたのだが本当に楽しすぎた。クールなトラックを笑顔で打ち鳴らすNiaと、それに合わせて思うままに踊る観客に囲まれて、自分も下手なりに自由に踊り狂っていたのがすこぶる気持ちよかった。楽しみすぎて恥ずかしながら前半30分くらいでバテてしまい、後半は後ろの方で楽しもうかと振り返ったら、気づくとパンパンの超満員になっていたパシフィックステージの光景も壮観だった。

皮肉にも台風のおかげで改めて気づけたことだけど、ライブやフェスを楽しめるのは当たり前のことじゃない。今回の台風のようなフェス開催自体が危ぶまれる例でなくても、体調のことや仕事の都合もあるだろう。あるいは、今は気ままに一人で生活する分自由にライブに行っているが、家庭がある方々なら特にフェスなんか無条件に何日も行くというのも難しいかもしれない。(私はいつか家族でフェスに行ってみたいなという夢はあるけれど、もちろん家族がみんな音楽に興味を持つとも限らない)
少し前のコロナ渦を経てライブやフェスを楽しめるありがたさを噛みしめていたはずなのに、もう慣れてしまっていてある意味怖いなって。

だからこそ、手前味噌だが見れるうちに楽しみ尽くすぞ!と思い直して迎えたサマソニでは、クールにパワフルな演奏を見せつけたYves Tumorがかっこよかったし、音楽って良いなあと思わずにはいられなかったOlivia Deanも素敵なライブだった。

その中でも、Bleachersは本当に心の底から楽しみ尽くし燃え尽きた最高のライブだった。
ずっと生で聴きたかった”Modern Girl”のイントロが鳴った瞬間から胸がときめきまくりで、肩車するように促してからの”Rollercoaster”あたりの会場の雰囲気のワクワク感といったら格別。(演奏一回止めてまで肩車やろうぜ!ってJackがめちゃ煽ってたので、次の来日公演のときには自分も安全に肩車できる屈強な身体を用意して、肩車させてくれるノリノリの友人も引き連れて行きたい)
熱気から徐々にライブが終盤に向かい、終わってしまう寂しさを感じ始めてきたタイミングで始まった”Tiny Moves”のイントロも綺麗だったなあ。近い内にまた来日公演して欲しい。 

「知らない」を楽しむ

今年のサマソニは自分にとって、「知らない」を楽しむフェスの醍醐味を過去イチで味わえたフェスだ。

今年唯一マリンステージで見たのが、2日目の締めくくりとなるBring Me The Horizonだった。遅れてアリーナに入ると意外とスペースが空いていてどうしてだろう?と思ったら、頻繁にモッシュが発生していたからだった。
自分は普段全く言っていいほどメタルを聴かず、モッシュとも縁遠い(シンプルにぶつかり合うのが怖かったのもあり)ライブ人生だ。
けれどBMTHの燃え上がるようなパフォーマンスと、それに呼応するように全身を使ってヘッドバンキングやモッシュを繰り返す観客たちがもうかっこいいったらないの。ラストの”Throne”のイントロが流れたところでのモッシュに気づいたら生まれて初めて参加していた!これがもうほんとに気持ちよかった…
(ちっちゃい頃なんか人との接触が苦手すぎて運動会のかけっこで競ってる相手にコースを譲ってたくらいなのに!)

時間を少し巻き戻して、直前に合流した友人に誘われてちょっと前の方で見たAJRは正直一曲も知らない状態だったのだが、これがもう全編踊りまくりで楽しすぎた。自分の隣でバスケのユニを着たイケイケの兄ちゃんがキレキレのダンスで友達と盛り上がっていて、正直普段暮らしている分には交わることがないような自分とは遠い位置にいるような方だった(もちろん一方的な偏見)のだが、ライブ途中曲を聴きながら目が合った瞬間「この時間この空間楽しすぎない?」っていうお互いの感情がテレパシーで伝わって、気づけば一緒にダンスユニットを組んで踊ってまくってた。踊り慣れてなくてぎこちない私の踊りにもうまく合わせてくれてありがとう、たった1分くらいのコラボレーションと曲が終わった後のハイタッチは今年のサマソニ一番の思い出かもしれない。

きっと普段は触れることのない「知らない」ものにもたくさん楽しいことが詰まっていて、音楽フェスには普段踏み出せない「知らない」ものへの一歩を後押してくれる魔法があるのだろう。

(ちょっとだけ真面目な話)インターネット・SNS時代の奇跡

音楽に限らず、ゲームでもスポーツでも、普段いろんな趣味を楽しんでいると、最近は以前ほど誰もが共通するものを一同に楽しむということが滅多になくなったと感じる。それはインターネットやSNSのおかげで前よりもいろんなものに出会えるようになって趣味嗜好は多様化したし、どんなジャンルのものも深掘りできるようになったからだろう。

自分は昔のライブ映像とかを見るのも好きで、1つのアーティストに5万人、10万人ものファンが集って一同に盛り上がる光景というものに憧れがあった。(例えば2003年のサマソニぎゅうぎゅうのマリンステージで、その場にいた誰もが知っていたであろう”Creep”のイントロが鳴った瞬間のどよめき)
だから何というか、ぴったり同じ趣味嗜好の人々が一同に会する、みたいな光景って今後もなかなか実現しないんだろうなとちょっと寂しさを覚えていた。

でも今年特に多くの瞬間自分自身が「知らない」ものを楽しむ側に立って思ったのは、今の時代のフェスは、より多種多様な個人が集まって各々自分なりに楽しみ、それが結果として大観衆の盛り上がりという姿を形作る、これまでになかったような光景が実現できる奇跡のような空間なんじゃないかということだ。
インターネットやSNSによる物事へアクセスがしやすくなったことは、何もシステム上だけのことでなく、私たちの精神的な部分でのハードルも引き下げてくれているのかもしれない。知らないものでもその場で気軽に楽しんで、「あっ良いかも」と思ったら気軽にSNSでつぶやいたり写真をポストしたりするし、後から名前を調べればすぐに曲を聴いたりライブ映像を探したりできる。

そんなことをフェス帰りの電車で、徐々に汗が乾き冷房で身体を冷やしながらくどくどと考えてたら、音楽フェスというものがより好きになったし、来年もまたいろいろ楽しみ尽くしたいなというお馴染みの感想で締めくくりたい。

最後に来年のラインナップ予想!

せっかくなので最後に個人的なヘッドライナー希望を!
SONICMANIA: Charli XCX, Fred Again…
SUMMER SONIC 2025: The Weeknd, Billie Eilish

もっと贅沢を言うなら来年もまた自分が「知らない」ものを来年もいっぱい楽しみたいな!
See you next year! 


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